玄関先の言葉置き場

主にひらめき☆マンガ教室の感想用。メッセージ等はおたよりフォームへいただければ、配信でお返事します。

おめでとう、そしてありがとうエヴァンゲリオン

 この作品を見てから映画館を出て最初に気づいたことは、かつて自ら置き去りにしてまった幸せが再び手の中に帰ってきたような気持ちになっている、ということだった。 

 今回のシンエヴァは、とにかくきっちりと全てにけりをつけた作品だった。作品の設定を説明し明確にし、各キャラクターを精神的な意味で自立させた。旧エヴァを知っていると、その内容というよりも作品制作の意気込みに対して、やっと地に着いたような感覚を受け取ることができたといえるのではないか。それだけ、大きな仕事をしている。
 またそういったいわば漠然とした手触りの受け取りがあっただけではなく、作品が示している内容も全く良かった。とくに黒波とゲンドウとミサトについては、あれ以上のものはないと思う。特に黒波とシンジの話は感動的で、人は環境が与えられさえすればそれぞれ成長したり立ち直ることができる、というエピソードになっており、さらに、成長し回復したシンジと黒波の二人が、最後は互いに関係をもって別れる、という感動的という以外にないエピソードになっている。

 ただ、これは変な感想なのだが、作品全体の感想については、普通によかったな、と思う。よいものに立ち会ってしまったという衝突の感じがまさっており、例えば、この作品を傑作だとか周りにあえて伝えよう、などという気持ちには至っていない。
 別の言い方では、自分がこの作品の良さを十分に理解できていないことの裏返しだとも思う。昨日のゲンロンの配信を見たのだが、そこでの東さん、さやわかさん、大井さん三者の話には、聞いていてもよくわからないところも多かった。
 たとえばマリの話題やアスカの解釈などは僕には全然ピンと来ていない。マリが外部というのがよくわかっておらず、単に二人は青春をするのかな、神木君だしつまりエンタメ的に明快に終わったということかな、と思っていたのだが、しかし単にそういうことでもないらしい。シンエヴァのアスカの処遇については僕はけっこう不服に思っている。あの、旧エヴァのアスカは果たして今回の作品で成仏できたのだろうか、とどうしてもなにか気になる。(アスカの解釈については時間がかかりそうだ。)

 そのようにわからないことがあるということを込みでの感想だが、映画を通じてなにか幸せなものを見させてもらったと思う。まだよくわからないところがある、とかはどうでもよく、大変幸福だった。だから、おめでとう、そしてありがとう。

2021/3/16 更新 加筆修正推敲