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ひらめき☆マンガ教室第4期最終課題 全20作品感想(完成稿のみ) アップロードしました! #ひらめきマンガ

ひらめき☆マンガ教室第4期最終課題 全20作品感想(完成稿のみ)

前説

 どうも大塚です。ついにひらめき☆マンガ教室第4期も最終課題ということで、講評回の前にそれぞれの作品についての感想を書きました。この感想は最終講評回の前に書いたものなのですが、本当のところをいうと講評回の後に議論を踏まえての感想を書いてもいいんじゃないかとも迷っていました。そもそも、僕が感想を書き始めたのは過去のひらめき☆マンガ教室の最終講評回の映像を見て衝撃を受けたからです。「全員の作品を全部読んだうえで、最終講評回を見たらより刺激的に違いない」と思い、その上で感想を書き始めたのです。そのことを思い返し、最終講評回前日になって、感想をバーッと書いてしまいました。

 個人的にはずっと感想を書いてきて思い入れのある第4期メンバーでの教室の作品がもう見られなくなってしまうことが残念です。が、ここからさらにマンガを描いていく人たちの作品は今後きっと見られるに違いないと思っています。仮にそうでなくとも、教室が終わっても、この教室の教えを体験したそれぞれの人生が終わるわけではないわけです。まさに教室が終わっても”☆”は消えないので、一読者として、教室を通じてのそれぞれの作者の作品がもう読めないことをあまり残念がらないようにします。

 

雑感

 毎年、最終課題の作品を読んでいると、意外な人から意外な作品が出てきたりするのですが、今年もやっぱりそういう作品がありました。motokoさん「空の蟹に乗って」とくたくさん「UFO FOR YOU」がそれです。両作の作品の方向性は全く違いますが、ともに読んでいて作者の粘り強い書き方に驚かされます。くたくたさんの作品はたいへんパワフルな作品で、motokoさんの作品はおそらく客観的にみてもたいへん素晴らしい作品だと思います。(motokoさんの作品は大賞をとるのではないかと思っています。)
 他にもよかった作品を挙げればきりはないのですが、上記のほかに大賞候補に上がるだろうと思ったのが片橋真名さん「決断できないおんな」、こぐまあやさん「風鈴の人」でした。また、最終講評回に向けてきっちり仕上げてきたと思ったのがシバさん「リンたんなう!」、俗人ちんさん「お姉ちゃん奴隷のシャイナ!!」、のり漫さん「バイト戦線異常アリ!」。今までの傾向から予想外な読み応えがあってうれしかった作品は藤原白白さん「美容師探偵-ショートヘアの花嫁-」、コバヤシさん「思春期モンスター」、kuzikuziraさん「きっと親友になれるよ」でした。
 印象に残った作品を列挙しましたが、ここに挙げていない作品がダメだったというわけでは決してありません。どの作品もよく頑張って書いているし、やはりどの方も(最終講評回には残念ながら作品が提出されなかった方も)、初期と比べての成長がすさまじいです。本当なら一人ひとりにねぎらいの言葉をかけたいくらい、それぐらいどの方もよく頑張ったと思います。みなさん一年間お疲れさまでした。
 では、あまり長々してもいけないので、以下、各作品の感想をどうぞ。

 


全20作品感想

シバさん「リンたんなう!」

リンたんなう! | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 最後のシーンでりんたんがサトルとナオミを見送るシーンがさらっとしていてよかった。また、名前を付けたから人魂とナオミたちがコミュニケーションをとれるようになった、という理由づけも納得感があっていい。続きがあるならぜひ読んでみたいと思う内容。ただ、ナオミとサトルのキャラについては、この作品にとって主人公サイドが一人でなくの二人の人物を必要とする理由が弱いようにも思った。たとえば、ナオミとサトルがどんな関係性の兄妹なのかなどが描かれているとさらに世界観が広がりを持つように思う。

 

aheeさん「メンタルミスステップ」

メンタルミスステップ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 この作品はちょっとよくわからなかった。途中でイマジナリーフレンドが実は逆だったとわかるシーンは驚いたのだが、驚いただけになってしまった。個人的には、どちらがイマジナリーフレンドでもおかしくないように納得させる仕掛けが必要な以上、たかしだけでなくけいすけの葛藤をさらに詳細に表現する必要があったのではないかと思う。そのバランスへの意識が頭の隅にあって「実はイマジナリーフレンドなのは主人公のほうだった」という演出から感情を受け取りづらかったのだと思う。惜しいと思う作品だった。

 

あまこうさん「丑三つ時」

丑三つ時 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 同人誌企画でも読ませてもらったが、改めて読むとよくできた作品だと思う。単純に面白い。ただ、最終講評回ではあまこうさんの新作が読めるかと思っていたので、その点は残念。

 

俗人ちんさん「お姉ちゃん奴隷のシャイナ!!」

お姉ちゃん奴隷のシャイナ!! | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 これはいい!テュール君がシャイナに淡々と主導権を握られていくテンポが大変気持ちいい。わたしの好みの問題も大きいが、今回の最終課題の中で最もマンガっぽさを感じた作品の一つ。ひらめきの作品でギャグラブコメが読めてうれしい。

 

藤原白白さん「美容師探偵-ショートヘアの花嫁-」

美容師探偵 ウソツキはナミカゼのハジマリ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 キャラクターも多くそれぞれキャラ立ちしており、推理パートの展開もゆっくりで丁寧に描かれていて、ともに好印象。贅沢なものを読ませてもらっているなと感じさせられる。推理パートで一つ気になったのは、なぜ元ストーカーが結婚式に出ることができたのか(そしてなぜ新郎新婦と一緒に写真をとれたのか)だが、そこにつっこむのは野暮かもしれない。女性向けのマンガを読みなれていないこともありいい言葉がうかばないが、とても良い作品だと思う。

 

こぐまあやさん「風鈴の人」

風鈴の人 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 これはすばらしい作品。同人誌企画のときから良い作品だったが、アップデートされてさらによくなっている。最後のページに「大人の恋は難しくて複雑でガキの俺にはまだよくわからない」とあってシュンとさせられるのだが、むしろ、恋愛の話を成功譚ではない形で終わらせることができる点が、この作品やこの作者の秀でた部分だと考えたほうがいいかもしれない。

 

コバヤシさん「思春期モンスター」

BLUE STAR | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 途中で主人公が反転したところで、女性を主人公にするだけで同じラブコメが全く違った印象を持つようになるのだと感心した。ただちょっとだけ注文をいうと、この話からユウとルリの関係は変わっていくはずなので、最後は「おわり」ではなく「つづく」であってほしいように思う。(実際にマンガとしてつづきを描くか否かということは置いておいて)

 

kuzikuziraさん「きっと親友になれるよ」

きっと親友になれるよ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 この作品はオチが良かった。今までの作風からの推測でてっきりダークサイド的なエンドになるのかと思っていたのだが、それを裏切る形のオチが用意されていて思いがけずうれしい。アピールに施川ユウキ阿部共実の名前があるが、この作品も単にエンタメの枠にとどまらずに人に考えさせる力がある作品だと思う。また逆に、考えさせるだけで息の詰まるような作品にも決してなっていない。そのバランスを発揮できる作家は貴重だと感じる。

 

盛平さん「気になるお店に初来店」

唐揚げたべたい。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 カラーということもあり一つ一つの画面のインパクトが強い作品だったのだが、それがかえってごちゃごちゃした感じに映ってしまいマンガとしては今一つだった。たとえば、作者の体験風の語りにしてしまうとかすると、わたしの場合はストーリーに移入しやすかったかもしれない。個人的には、盛平さんの書くマンガの良さはキャラクターのファイト(根性)にあると思っている。またいつか盛平さんの書くマンガを読ませてもらえたらうれしい。

 

motokoさん「空の蟹に乗って」

空の蟹に乗って | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 複雑なテーマ(家庭の事情に振り回されリストカットするしかない女子中学生と性同一性障害を持っている男子中学生のかかわり)をストーリー上に成立させている点がすばらしい。平易な感想だが、奏が一方的に主人公を救う存在で主人公は一方的に救われる存在、とは決してならないところが良かった。その点は奏が主人公と分かり合えないが分かり合おうとすることに価値を置くことともどこかでリンクしているようにも感じられる。

 

なないつさん「球」

ネーミングライツ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 作品の広いスケールに対してテンポがモタモタしておらず読みやすい作品だった。また、元の課題作から引き続き、現実の話(御神渡り)とまったく虚構の話(球)が同じ世界観の中で違和感なく溶け合っている点が好印象。ところで物語についてだが、二度目の球現象では一度目の球現象によって失われた10万人の命は帰ってきたのだろうか。新聞の見出しにある「大阪一夜にして復元」がどの意味まで指しているのか、人の命の復元が含まれているのかが気になる。(咲山の妹の安否という意味でも)

 

のり漫さん「バイト戦線異常あり!」

バイト戦線異常あり! | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 内山さんが最初から最後まで微妙に何を考えているのかわからない感じが、非常にリアルでいい。この件で関係が改善されたかのように見えるが、冷静になってみると、意外と話はそう簡単ではないようにも思えてくる。内山さんの表情を見れば見るほど、内山さんが本当のところ、どんな内心でいるのかが気になってくる。

 

つまようじさん「孤高のバイオリニスト」

孤高のバイオリニスト | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 なにか惜しい作品だった。話のパーツごとには問題がないように思うのだが、全体として読んでみると突き抜けた感じがしない。もしかすると、主人公がただラッキーな目に合いつづける展開に映り短調に感じられるのかもしれない。たとえばオチはむしろ全然うまくひけなかったという展開のほうが納得感が出たように思う。

 

片橋真名さん「決断できないおんな」

決断できないおんな | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 たいへんよくできた作品だった。ただ、これはともすると難癖になってしまうことに注意しなくてはいけないが、ヒロインの枝野さんが主人公にとって都合のよいキャラクターになりすぎてしまっているように感じられたことが不満。別の言い方をすれば作品が主人公の主観に頼りすぎているように感じたということ。たとえば主人公が枝野さんや他の人間から見たときにどんな人物として映っているのかが少しでも描写されていれば、二人の関係がより対等に映るはずなので、こういった「なんかキャラの扱いが不満」みたいなやっかいな指摘は防げるはずだと思う。ただ、わたしはこの作品の想定読者からは外れていると思うので、この指摘自体がまったく外れた指摘をしているかもしれない。想定読者に応じた描き方がされていれば全く問題ないと思う。念のため言っておけば、このまま雑誌に掲載されてもおかしくないくらいによく描けている作品だと思っている。

 

くたくさん「UFO FOR YOU」

UFO FOR YOU | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 それまでの話の展開が丁寧かつ厚みがある内容だったにもかかわらず、40Pから43Pまでの突然のSF展開でさらに目を奪われてしまった。マンガを読んで元気をもらったと感じたのは久しぶりだ。各キャラクター、主人公、職場のおじさん、三雲さん、美波ともに、とてもよいキャラ立ちをしている。個人的には、この作品でどんな描かれ方がされようと、最終的なヒロインとしては三雲さんではなく美波が立っていてほしい。また論理的に考えると、もう少し性的に下品な描写があるほうが、主人公の生命力の象徴という意味で筋の通りがいいのかもしれない。

 

田山さん「走馬灯の日々」

彼方からの眺め | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 美しい作品だと思ったが、それ以上、勘所がわからなかった。例えば主人公は飛び降りから奇跡的に助かり、それはよかったのだが、しかし助かったからといってこの後の人生がハッピーになるわけではないだろうしそれはどう考えたらいいんだ、などとわたしなどは考えてしまう(この感想自体、ギャグとして受け取ってほしいのだが)。とはいえ、作品に不備があるということではない。この感想はわたしの読解力不足のためなのだろう。

 

桃井桃子さん「青と念力」

青と念力 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 好きな相手への気持ちに応じて増す超能力という設定が筋が通っていて好きなのだが、作品としてはちょっと消化不良な感じがした。主人公が最終的に「私はまだしばらくこのままでいたい」と閉じた気持ちになってしまうためスッキリできないのだと思う。主人公が最後に開いた気持ちになってくれたらな、と一読者的には思ってしまうのだが、無茶な注文かもしれない。

 

高井焼肉さん「アタシ、キレイ。」

アタシ、キレイ。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト


 絵柄に展開に沿ったメリハリがあり、テンポ良く読めた作品だった。過去の課題でもネームで読んでいたのだが、完全とはいえないが清書されていてうれしい。後半で口裂け女がちゃんと美人になっているのが(ギャグではあるのだけど)気分がいい。あとは全体に清書ができていれば。