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ひらめき☆マンガ教室 第5期 課題2 ネーム感想 #ひらめきマンガ

課題2のネーム作品の感想を書きました。掲載順番は上から教室の受講生順です。感想へのご意見などはこちら、もしくはツイッターまでお願いします。(コメントはいつでも歓迎です。)大塚

最終更新:2022_05_26_8:49

全26作品感想

nonakaさん「私を忘れないで」

私を忘れないで | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはよかった。こういう重たくてズシンと来る話。この教室に一つくらいはあってほしい奴だった、と思った。メインストーリーはとくに矛盾やストレスは感じられず、よく整理されて作られていると思ったが、細かな部分は気になったので、あとはそこを修正していく方針で大丈夫だと思う。あとこれは言っておきたいのだが、わたしは(おそらく)男性が女性の性の問題を考えてみるマンガはあるべきだと思う。そのように思う読者がいて実際に読んでいるということは、一言伝えておきたくなる作品だった。

 

aokiさん「爆光自衛隊

爆光自衛隊 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 なんだかおもしろい世界の話が出てきたぞ、と思ったのだが、いまいち盛り上がりに欠けてしまって、ノリ切って読めなかった作品だった。巨人が倒されるところの前に、人類側の恐怖だとか苦悩(生きたまま食べられるとか目をそむけたくなる系の奴)だとか鬱屈の部分があると、巨人を倒すときに「うおおおおおお!」と盛り上がれる気がする。なんとなく予定調和的(サバイバルゲームRTA動画でも見ている感じ)に敵が倒されている感じがして、キレはあるけど物語の起伏が足らない、と感じただろうか。ただ、この作品は完成稿を見てまた感想を送ってみたい。絵がついて肉付けされるだけでインパクトが出てきそうな作品で、絵の部分での勝負を見ないとなんとも言えないところを感じている。

 

あさかたこれ太郎さん「異世界転生したらキンタマを蹴られに蹴られて奪われた件」

異世界転生したらキンタマを蹴られに蹴られて奪われた件 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 いったいなにを見せられているんだ…とあんぐりするマンガでよかった。ただ、主人公がいじめられすぎていて読んでいてちょっと疲れてしまったかな。たとえば、あげて落とすようなリズムがあればそう疲れないと思うのだが、この作品の場合、ずっと下げられ続けているところがしんどく感じてしまう。(マンガをめくってみるとほとんどどのページをめくっても主人公がいじめられていることがわかるはず。)これは例えば”いじめる”が仮に”褒める”でも”がんばる”だとしても同じことで、ずっと続けられるとそのことで疲れてしまう。登場人物をいじめるのはそれでよいのだが、この作品の場合は主人公の扱いが単調に感じられたところがおしかった。

 

俗人ちんさん「変態教天使のエロナ!!」

変態教天使のエロナ!! | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 いつも読ませてもらっている俗人ちん先生のむっつり主人公作品、という感じで楽しく読んだ。が、これだけハッキリとちょっとエッチなことが起こる以上、主人公にはもっとエッチなことが起こったことに対して反応してほしい。肝心の主人公がエッチなことに全然感動してくれないので、読んでいるこちらもテンションが下がってしまった。きっと、年頃の少年が好きでなくとも嫌いじゃない女性の肌に触れる機会があったら、一日に何度もそのことを反芻するし、それだけで一週間くらいハッピーじゃないかと思う。そういう等身大の青少年の反応、みたいなものが、今俗人ちんさんの作品からは一番読みたい。

 

降原さん「look at the sky」

Look at the Sky | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これはまとまっていてとてもいい話だと思った。個人的には15pで主人公が何も言えずにダラダラと泣いているところが、たった一つのコマですべてのことを表現しているようでよかった。(欲を言うと、16pでも泣き跡があると余韻があってうれしいのかもしれない。)アピールの「静寂な雰囲気/透明感/浮遊感などを表現したいと思い挑戦しました。」というところを見ると、どこかでソラを大きなコマで映したほうが効果的だったのではないかとも思う。せっかく美人なヒロインなので「俺だけが知っているこいつの横顔」みたいなものが見てみたい…と思うのはちょっと好みが寄った感想かもしれないが。

 

はねむらさん「ハム部」

ハム部 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 部長がかわいい。キャラクターが線の細い感じとよくかみ合っていると思った。(「ハヤテのごとく!」をちょっと思い出した。)それと5pのハム奈とハム香の紹介が結構好きで、もっとハムスターたちが活躍しているところを見てみたくなった。なんだか、このハムスターたちが強烈なキャラクターを持って主人公たちをこまらせてくれる気がする。(とはいえ、仮に現実に合わせるとすると、彼らは寿命が短い生き物なので、難しいことになってしまうかもしれない。)マンガとして整理されている印象を受け、たいへん好印象な作品だった。

 

葉野赤さん「サマーギャンブライブラリー」

サマーギャンブライブラリー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は惜しかった。やろうとしていることがあることは伝わってきたが、実際にどんなことを描きたかったのかがつかめなかった。特に、大人の女性の恋愛の話を年下の女性が簡単なアイデアで解決する、という筋に無理を感じる。教室の講義(課題1完成稿講評)でも話があったが、これがもっと子どもよりの絵柄だったらまだよいのだと思う。しかしこれだけオタク好みの絵柄だと、この場合の恋愛の問題は現実的にはサイコロでは決められないので「えー、こんな治め方ってないよ!!」とマンガのリアリティラインに対する反発を感じさせてしまうのではないだろうか。とはいえ、前回に引き続きこの作品からも葉野さんのキャラクターや作風については安定感を感じるので、ゆっくり、作品作りに取り組んでいってもらいたいと思う。

 

hiryuzuさん「むねん」

むねん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 「死にたくなる」あるいは「死にたくなった」/「もう死んでしまいたい」と思う機会はだれしも確率的にやってくると思う(そして同時にそんなことではいけないと思いさらに苦しむ人も多いはず)ので、それはそれで吐き出せばよいと思うけれど、とはいえやはり死ぬのはまずいので、hiryuzuさんのマンガを読みたくて待っている人がいますよ、とだけ伝えたいだろうか。それと内容はともかく、1pマンガでも、キャラがいてコマを割っているのでマンガとして成立しているのでは、とも実は思った。ともあれ、今後も作品を書いてくれたら勝手に感想を書くので、ぜひ頑張って描いてみてください。

 

御園ほけさん「キレイな爪」

キレイな爪 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 面白い作品だったのだが、なんとなく、リアリティをどこに持つといいのか困ってしまう印象を受けた作品だった。けして悪い作品ではないはずだが、作品全体を読んで受け取ってほしいたった一つこのこと、みたいなポイントがうまく見えないでいる。たとえば、手と手が触れ合うマンガなのに対して、8pで体からの拒絶反応が強く描かれないことは引っかかったポイントだった。ただ手がピクッと動く描写はあるので、ここにはなにか意図があるようにも思える。(個人的には現実だったら怖いとか気持ちが悪いとか思う場面のように思え、ここで拒絶反応がないこと自体になにか作品としてのリアクションが欲しいと思ったのだ。)ただ、”よくわからないけど良い作品だ”というには少し遠い感じがしていて、”よくわからないけど、もう少し作風を壊さずにわかりやすくできる部分がある作品なんじゃないか”と思えてしまった作品だった。

 

かわじろうさん「ドライブ2053」

ドライブ 2053 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これはとても深みがある作品だった。「他人からつけられたラベルが窮屈なら自分で名づけ直すのです」のセリフをフィクションに起こすために作られた作品だと直感的には思った。ただ、オチの新たにチームを作ったとあるところは、あまりオチているようには感じられなかった。このオチをみていると、この周辺だけ細かく直せばよいものではないように感じられ、どこかにこの作品には欠けているところがあるのかなという気がしてくる。細かなことだが、たとえばAIが運転を制御することが当たり前になっている世界で、なぜ主人公は暴走族という発想に至るようになったのだろう、などとは不思議に思った。もしかすると、世界観設定や細かいところで想定しなければいけないはずの細部の情報、つまり作品外の構想の部分で何か省略が起きているのかもしれない。

 

柿谷孟さん「目覚まし」

目覚まし | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 しっとりとしていて、よい作品なのではないだろうか。「他者性」「ラッシャッセー(タッシャッセー)」でダジャレかい!となるところも、気が抜けていてうまくできている。ただ、一つだけ気になったところをいうと、シオアジがうまくやっているところを見て安心したフクイもまたうまく大学生になっていく、というオチがうまくいきすぎているように感じられた。フクイは高校では勉強もできず友達もいなかったので、大学にいきルームメイトと映画を見られる理由が理屈的には用意されていないといけないはずなのだが、そこは作品の中で省略されている。とてもいい作品だと思ったが、勉強ができなかったフクイはどうやって大学に行ったのか。そこはどうしてもひっかかってしまう。

 

泉ころろんさん「妖術師ヒカル」

妖術師ヒカル | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これは面白くて楽しい話だった。六郎がヒカルに振り回され、助けられ、最後は二人の協力で退治に成功する。踏んでいてほしい展開をきっちり回収しており、読んでいて楽しかった。あとは、コマ割りや、めくりなど、マンガ的な技術の部分をどんどん詰めていく方向でよいのではないだろうか。(たとえば、コマを枠で囲わないでよいかとか、1ページ目の情報量が多いのではないかとか、ちょっとづつ気になる部分はあった。)とはいえ、そこからの修正こそが大変なのだと思うが。

 

小林煌さん「無限残機0(ゼロ)の勇者」

無限残機0(ゼロ)の勇者 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 近頃の王道をやっているような作品で、課題1の作品にひきつづき読んでいる人を楽しませようとする作風があって、好感を持つネームだった。ただ、主人公と勇者の関係性がもっと描かれていないと個人的には不満足だ。せっかく物語の起伏がうまくできているように思うのに、この二人の物語としてオチていない感じがする。読んでいると主人公がなにか決断する物語のように思うのだが、なにを決断しているのかは具体的に書かれていないように読める。そこがないと惜しい、と思わせる作品だ。

 

森紗はるきさん「いちれいチャンネル」

いちれいチャンネル | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は何度か読み返してみたのだが、最初はちょっとだけ演出が物足りない作品のようにも思ったが、結論から言うと、とてもいい作品じゃないかと思い至っている。というのも、最初に読んでみて、大人の自分が読むと告白の盛り上がりを含めた話の起伏が物足りないと感じ、感想もそのように書こうと思った。だが読んでいるうち、7pの「フルーツの味がします!!」という女の子のセリフがよいと感じるようになった。そこからこれは等身大の中学生を描いているのだと思うようになり、これはなにか自分が知らないだけで何等かのコミュニケーションをまじめに描こうとした結果このような形になった作品のような気がしてきた。というわけで、何度か読み返してみて、全体を通して等身大の中学生を描いている作品のように思うようになったので、よい作品じゃないかと思って読んでいる。しかしあまりその読みに自信がなく安定した感覚でもないため、ひょっとすると、今後の細かな変化でいい方向にも悪い方向にも、感想が変わる作品なのかもしれない。

 

qjinさん「にほんのあじ

にほんのあじ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これはいったいどういう世界観の作品だったのだろう。おそらくファンタジーだとは思うが、ラストの「こんなことがおきるなんて……」「こちら国産でなく/海外産です」というのが余計に謎を呼ぶ。人体を使った植物?が普通に流通している世界なんだろうか。…というように、世界観がよくわからないという感想が先行するが、しかし6p~9pあたりの演出は寓話的で、ある意味童話っぽいとすら思った。(読んでいて「魔人探偵脳噛ネウロ」の麻薬入り料理の話を思い出す。)こういうとがったキャラを惜しみなく出してくれるところは読んでいて痛快だ。というわけで、もうちょっと世界観をわかりやすく描いてくれたらよかったな、というのが一番の感想だ。

 

中西ゆかりさん「子うさぎから逃げられない」

子うさぎから逃げられない | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、作品を通してやろうとしていることはよくわかり、内容も面白いと思ったのだが、全体を通すとセリフのぎこちなさが際立って見えてしまうマンガだった。素人目にも、ところどころ、ストーリーを進行させるための適したセリフがまだありそうに思える。また、アピールからだが、読むと主人公が男へ復讐する劇が中心に感じられ、「冴えない男性が完全無欠の美少女と出会うことでドタバタとトラブルに巻き込まれていく」話には感じられなかった。正直、読む側としては中西さんが巻き込まれていく話でなくとも別段問題ないのだが、もしそのような話として読ませたいなら、脇役としての中西さんのキャラクターにもっと主張が必要になっていくのではないだろうか。

 

滑川王手さん「低級霊 羽衣びわゆきの恋」

低級霊 羽衣びわゆきの恋 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これはかなり面白い話だった。課題1に引き続き、やはり会話がいい。ただ、個人的には、二人だけの会話が続く展開にすこし窮屈な印象ももった。せっかくなら好きになったという相手の地縛霊を、兄弟二人でこっそり見に行くシーンなんかを読めたらなどと思う。バディものの場合、その二人をずっと見たいというより、その二人が何かの目的に向けて行動しているところを見たいということかもしれない。あとは細かいことだが、2pでは相手の地縛霊の姿が見たいというのと、オチではもう一つギャグを挟んで終わるとおさまりがよい感じはする。

 

鷹鯛ひさしさん「姉の帰省」

姉の帰省 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 こういうマンガがあるとうれしいというマンガの一つだった。出来事をただ描くことに徹していて、作中の出来事の善悪の判断をしすぎていないところがいい。これは描写が不十分という指摘としていうわけではないが、個人的には14pで主人公が姉の手をつかむところでこの主人公がどんな感情で手をつかんだんだろうと気になっている。うまく言えないが、例えばこの話が「主人公が帰省した姉とのやりとりを経て、感情があふれるに至った」話なのだとすると、そのあふれた感情そのものが気になるのではなく、そのあふれた感情の源がどこにあるかをもっと知りたい、ということなのだと思う。

 

いとしろたかやさん「紺野君は閉じ込めたい」

紺野くんは閉じ込めたい | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 主人公の内心の描かれ方が痛快で、読んでいて気が抜けたのだが、話の導入部分、主人公が監禁されたがむしろご褒美だった的な部分で、いやそうはならないのでは、と思わずストップがかかった作品だった。倫理的にダメということでは全くなくて、この状況を何として受け止めるといいのか判断に困ってしまったということ。関連したことかわからないが、読んでいるときに「この部分が重要なんだ」というポイントがうまく掴めなかったように感じている。読解力不足というか、作品の読者として想定外ということもあるとは思うが、とはいえ、何か一つこのポイントだけ読んでほしい、みたいなことがわかると安心して読めるのかなと思う。

 

谷なすびさん「絶望にグッドラック」

絶望にグッドラック | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは最初に想像した以上にスケールの広さが感じられ、おおっと思って読んだ。登場人物が全員死亡することのせつなさなのか、恋愛のそれなのかわからないが、とにかく、せつない話だった。気になったのは、なぜこんなに主人公が気持ち悪るがられているのか特に理由が説明されない点と、8pでメールがうまく機能していないらしいことが描写されるがその謎も特に説明がない点。おそらくどちらも意図的に説明を省略していると思うが、謎が一つだけならたぶんよいのだが、二つもあると読んでいて重いだろうか。

(後記:とひとまず感想を書き、感想配信でもそのままお話ししたのですが、「なぜこんなに主人公が気持ち悪るがられているのか特に理由が説明されない点」は実際には作中で描かれていて単に僕の読み落としだったようです。放送でもいろいろくどくど言ってしまったのですが、ストーカー×タイムリープの発想といい世界観といい、短い中でスケール感をうまく出していて面白い作品だった、という感想です。)

 

とみたさん「約束と尊厳」

約束と尊厳 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 ページを開きながら安定感があって面白い作品だと思ったが、読み終わってみると、果たしてエヴァンとエディのどっちに感情移入するとよいのだろうと、ちょっと混乱が生じてしまった作品だった。だが、これは自分がこの手の作品を読みなれていないせいが多分にあるように思う。個人的に気になったのは「ぼくはまちがっていない」という形のオチにも対応する9pの「間違っているけど間違ってない」というセリフ。これって、エヴァンは実際どっちだと思っているんだろうか。なんだか、そこのセリフの流れで感情の混乱が起きているように感じている。

 

たにかわつかささん「冒険家 ライン・アイリード」

冒険家 ライン・アイリード | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 読んでいて、王道でよいな、と思ったのが最初の感想。それに、ワカナと主人公との関係にストレスを感じなかったところがよかった。あとはワカナのビジュアルがネームの段階ではよくわからないので、どんなデザインか気になったことと、11pでワカナが本心を吐露するところはもう少しタメがあったほうが演出としてよい感じがする、ということが気になった。加えて、これをどこに掲載するつもりかによるだろうが、敵や世界観がどんなものなのかは構想の段階で注意深く想定する必要があるように思う。細かいことを言うと15pで「抑制剤も街で手に入れ」られる世界だとわかり、重要そうなアイテムがそのへんで買える?と、なんだか勝手に想定とずれた感じがあった。どんなポイントを読まれたいかによって作りこむ部分はかわってくるはずなので、設定を改めて考える場合には、どの読者に読まれたい作品なのかを改めて練る必要があるのかもしれない。

 

千住ちはるさん「ねむり姫と古の地図」

ねむり姫と古の地図 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は雰囲気がよい作品なのだけど、いまいちどこを中心に読めばいいのかわからず、雰囲気がよいなあ、で感想が止まってしまった作品だった。要素過多というか、各要素(1000年のコールドスリープ、アドミン、地図、システムへの介入の4つ)のまとまりがうまくつかめなかったためだと思う。加えて、もっとも盛り上がるべき部分で特に説明のない魔法の杖的なものが登場し、その顛末にも特に説明がないというのがもったいない感じがした。世界観、キャラともに素材としては十分そろっているように思えるので、この一点だけは読んでいて伝わってくる、みたいなポイントをうまく用意してもらえたらうれしいと思う。

 

よこうたださん「MITORIYA」

MITORIYA | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 「看取り屋」というフィクション上の職業、これはよいアイデアだと思った。このワンフレーズだけでいろいろなことを連想させられる。個人的には、タイトルから最初、映画「おくりびと」のような生と死を考える作品かと連想したのだが、名前から想像するよりずっと現実的な仕事で、主人公が不慣れな様子なところが意外だった。(おまけに”看取り屋”なのにだれも死なないのもちょっと面白い。)というように、印象はよい作品だったが、ただ、空白の部分はよいとして、2pからのコマの割り方はなにかほかに適切なものがあるようにも思う。いっそ4コマという手もあるのかもしれない。せっかく良い設定の作品だと思うので、ぜひまとまった形で再度読んでみたい。

 

KenTaさん「マゾの卓球部員」

マゾの卓球部員 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 主人公がかわいく、ほっこりする作品でよかった。ただ、中学生から大学生になった主人公が「僕はヨシドナーにはなれないかもしれないけど/なんかいいような気がしてきたかも」と感じ方が変化する部分は、もう少しその理由が欲しいように思う。たしかに、主人公が友達に言われ感じ方が変化することはわかるのだが、そのことだけなら中学生のままでも成立するように思えるからだ。それと個人的には、主人公の卓球技術の成長が描かれてほしかった。人間的な成長だけでなく、卓球技術の成長も大きな進展はないけど全く無ではない、という部分があるとより救いを感じられるというか、温かい気持ちになれるように思える。

 

晃てるおさん「期待してしまうんです」

期待してしまうんです | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これはいい話だった。セックスの匂いがちゃんとしていて大人のマンガという感じ。作中に居酒屋のような人が集まるお店が二つ出てくるというところもちょっと面白く、好きになった子どものいる女性に彼氏もいるとい設定も、現実とはそうなのだという感じがあっていい。描き方の部分で分かりづらくなっている箇所は多々あるとは思うのだが、それはマンガ力を鍛えれば済む部分だと思うので、内容の満足感があってよい作品だった、とここでは言いたい。

 

吉田屋敷さん「BOSS THE KJ -「CALL ME」【Official Video】」

BOSS THE KJ -「CALL ME」【Official Video】 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、今回の課題作の中でもっとも印象に残る作品だった。よい作品なのでなにを付け加えるということもないと思っているのだが、あえて言うなら、この作品のような「人を救うとはこういうことだ」を地で行くようなマンガこそ、本当にピンチに陥っている人の手に渡り、読まれてほしいマンガだと思った。

 

最後に

 今回の課題2の感想は書くのに苦戦してエネルギーを使いました。なぜかというと、感想の土台になるはずのポイント(このセリフ/このコマ/このシーン等)が、はっきりしない作品が多く、感想の土台探しに手間取ったからです。おそらく今回の課題作は、傾向として、やりたいことをやることが優先されている分読みやすさが犠牲になった作品が多かったのだと思います。ただ、この課題2はそういう意図の課題、つまり「一回、自分がやりたいことをやってみてください。その過程で自分のやりたいことと向き合ってみてね。」という課題だと思うので、結果的にそういう未熟な作品がたくさん出てくるのは健全なことだと思っています。個人的にも、今回の感想は特に「描いた人のやりたいことが見える作品を評価する」つもりで書きました。なので、細かい不備は差し引いて(おまけして)見ています。

 今回の課題について一つ考えを言うと、これはマンガに限らずもっと広く表現の話として考えていますが、「やりたいことをやる」の中には「やりたいようにやる」と「やりたいことが伝わる」の二つが混在していると思います。言い換えるなら「自分さえ気持ちよければいい」と「自分も読者も両方気持ちよくならなきゃダメ」の二つが「やりたいことをやる」の中にあるということです。
 このように分けると、賢明な方ならすでにわかっている通り、当然後者「やりたいことが伝わる」が大切です。前者から後者へ、創作の方向性やモチベーションをうまく持っていければよいわけですが、それ以前にまず大切なことは、この二つの異なった方向性が創作行為や表現行為の中に内蔵されていることに気が付くことのように思います。

 ただ、実はこれはどうでもよい話で、今回の課題の狙いは実のところ「自分のやりたいことが読者に届く快感」を知ってほしい、あるいは渇望してほしい、というところにあったのではないかと思っています。
 これもマンガに限らず表現一般に思うことですが、人に何かを伝えることは大変です。でもなぜ人々がそんな大変なことをするかというと、伝わったと思えた時の他には代えがたい快感が表現にはあるからですよね。そうでなければ、人はこんなに表現に一生懸命にはなれないように思います。今回の課題はその気持ちを思い出してもらうための課題だったんではないでしょうか。
 ただ、先述で「渇望してほしい」と遠巻きに言っているのは、課題の中で必ずしも「やりたいことが伝わる」とは限らないから……というか、おそらく表現が上手な人でも、狙って達成することは難しいことだからです。しかし、達成困難だからと言って表現への渇望をすっかり手放してしまっては本末転倒です。創作のサイクルを自分の中で形成するための一つの道具として、自分の原点を折に触れて思い出すことが大切、という意味も今回の課題は含んでいるように思います。