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ひらめき☆マンガ教室 第5期 課題3 ネーム感想 #ひらめきマンガ

課題3のネーム作品の感想を書きました。掲載順番は上から教室の名簿順です。感想へのご意見などはおたよりフォーム、もしくはツイッターまでお願いします。(いつでもコメント大歓迎です。)大塚

最終更新:2022/06/26

感想の基準

 今回ですが、基本的に、触れ合うことに向かっていく作品を評価するつもりで感想を書いています。触れ合うシーンが印象に残る作品はもちろんですが、実際には触れられなくとも触れ合うことの尊さみたいなものが伝わってくるものがよい、と思って読みました。とはいえ、あまり課題のことを考えながら読んだわけではなく、読んでて感覚的にいいなあ、と思った作品にいいなあって書いてます。たぶん、触れ合うことのよさって、関係性が変化していくことのよさなんでしょうね。

 

全20作品感想

nonakaさん「瞬き」

瞬き | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 細かな表現がネームの段階ではいまいちピンとこない部分があるが、雰囲気がよい作品で、作者の方の中で具体的な完成図があってのネームなんだろうと思って読んだ。しかしやはりというべきか、透明人間の設定がイメージしづらい。触れないのなら赤ん坊はどうやって女性の体から生まれてくるのだろう、など、設定の部分で疑問がいくつも生じている。加えて、最後の2pは説明的で、オチなのに緊張感がほどけていないような違和感があった。ひょっとすると14pの主人公が顔が見えるシーンで、主人公とヒロインの二人ともの顔が一度に映るシーンがあると流れが整理されるのかもしれない。

 

あさかたこれたろうさん「不動君は、うごかない」

不動くんは、うごかない。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 15pの主人公が泣いているシーンがよく、次の展開でちゃんと手をつないでいるところもよかった。これだけ描けていれば出来不出来について何かいうことはないという感じだが、一読者的に言うと、常にハイテンションな作品なので読んでいて疲れてしまった。特に本来緊張がほどけるはずのヒロインが涙を流すシーンでは、あえてだろうが、「好き」とは逆に「殴りたい」と言わせていて、緊張をほどけないようになっている。好みの問題だが、そっかあ、って感想だ。

 

俗人ちんさん「ラブコメ霊のレイちゃん」

ラブコメ霊のレイちゃん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 作品の方向性はよくわかる話だったが、もうちょっとレイちゃんのキャラクターにボリュームが欲しいと思った。これだと、みちこが豹変するだけの話になっている(レイちゃんが話の中心になっていない)ような印象だ。それと、せっかく主人公が幽霊を殴れる=触れる、って話なんだから、主人公とレイちゃんこそが触り合うべきでは。例えば、今まで主人公に触覚があると知らなかったレイちゃんがそのことに気づいた瞬間ベタベタ触っていたことをめちゃくちゃに恥ずかしがる話とか、ありだと思います。(よくある身勝手な感想のやつ)

 

降原さん「はい おあ ろう」

はい おあ ろう | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話って、実はいじめられていた主人公がその記憶を改ざんして思い起こしていた話でしたウオー、となるための作品だと思う。だけど、妄想の話に終始していて実際にあった嫌な出来事がどんな出来事かは描かれていないので、現実と妄想の落差みたいなものが受け取りづらかったところが惜しい。また別には、最後16pを見た感じ、この3人は普通に仲が良かったようにも見え、実は、現実になにかひどいことをされていたわけでもなかったのか?という感覚も頭をよぎる。とはいえ、女の子のキャラが3人ともかわいいところはグッド。ああ、この子たちが現実にいたらよかったのね、残念、と思える作品だった。

 

はねむらさん「つくも神の扇子さん」

つくも神の扇子さん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 普通に楽しんで読んだ作品だった。主人公のリアクションがそれぞれ丁寧で、特にキスしそうになって主人公がドキドキする(そして扇子は全然目線を外さない)ところの演出が大変いい。オチも前後の落差に勢いがあってよい。細かいことをいうと、8pで「彼女だってーー!?」に「そうじゃ」とあいづちを打つところは「驚きすぎじゃろ」くらいのほうがやり取り的に自然なのかもしれない(キャラ的にはどうかはともかく)。 個人的には、これ鶴の恩返し系の話だから、扇子がいつかいなくなるやつ、と思うとすでに切ない。

 

葉野赤さん「イットストーンドミー」

イットストーンドミー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 アイデアと物語がかみ合っており、さっぱりとした印象がある作品だった。ただし触れると石になる設定はひっかかる。というのも、一方が他方に触れていてもう一方は触れられていない、という行為は現実には存在しないはず(どちらかが触れたらどちらとも互いに触れているはず)だからだ。なのでこの石化のルールにはもう少し丁寧な説明がほしい。この手のちょっと不思議なお話しは、作品の中のルールの部分に疑問が生まれると台無しだ。ほかの読者がどう読んだかわからないが、自分は読んでいてその点でひっかかってしまったことが惜しかったなという感想だ。

 

御園ほけさん「君との夢」

君との夢 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は演出はよいのだが、一方では盛り上がりに欠けるのかなとという感想だ。うまくいえないが、それぞれのパーツがサイレントの演出のために用意されたように思え、それが透けて見えてしまい白けたのだと思う。(実際にそのように用意したかどうかはわからないのだが、気分の問題。)個人的には、この二人が分かち合っているものがどんなものかが明確になっていると、別れと再会に心が動かされるようになるのかなと思う。

 

かわじろうさん「吉野山の話」

吉野山の話 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は内容的には面白いと思うのだが、肝心の床山の話が作中作の時系列から作中の時系列まで帰ってこないのでもやもやする。”昔々あるところに…”的な話の導入なので、それに対応する”そして~になりましたとさ。”がほしい。加えて、吉野山は「現役時間が短かく」(原文ママ)「十両時代…恐れられていた」とあるが、それが床山の話の中で全く出てこなかったことにはズッコケた。全体的に内容云々ではなく、抑えるべきポイントの整理がさらに必要かなと思った作品だ。

 

泉ころろんさん「AIはプリンを食べない。」

AIはプリンを食べない。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は惜しい。「家→ファミレス→家」の場面の変化に対応した「問題発生→他者から影響を受ける→主人公が関係性の変化を望む」という物語の流れはたいへんきれい。だが肝心の「AIはプリンを食べないっ…!!」というオチのセリフの意図がわからない。それが惜しい。特にそのオチにつながっている10p以降はコマも多くなって読みづらくなっているので要修正かと思う。しかし先述の通り、物語の流れは非常にきれいで、個人的に評価が高い。もう一度、展開からコマ割りまで整理されたものを読ませてもらいたいと思った作品だ。

 

小林煌さん「鬼ごっこ

鬼ごっこ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 よくまとまった作品だとは思うが、読んでいて意外と楽しい気持ちにならないな、という感想が出てくる作品だった。自分でもなぜそう感じるかよくはわからないが、ヒロインのキャラクターが不十分なのかな。また、設定にところどころ疑問が生じてしまったこともうまく乗れなかった理由になっているように思う。(主に、鬼ごっこで匂いに対して目隠しをすることがよくわからないことと、触ると一瞬で鬼になるらしいことが具体的に描かれないこと)設定に引っかかって”この作品ではこういうことがやりたい”というポイントが作品から見えづらくなっている印象の作品だ。

 

森紗はるきさん「猫神さんはもふりたい」

猫神さんはもふりたい | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 初見で「なんだこれは?!」と驚いた作品だった。自分でもよくわからないが、なにか面白いことをやっていることを強く感じている。しかしその一方、単に説明不足がゆえに意味不明になっている作品だとも思っている。(意味不明さが面白い作品とも思うので、ここは難しいところだが。)少なくとも、この二人にとってネコ化の体験がなんの意味を持ったのか(あるいは特に意味をもっていなかったのか)は知りたい。オチのおさまりの悪さを見る限り、ネコ化の体験の意味付けが見えてないことが、この作品が悪い意味で意味不明になっていることの原因を作っているように思えるためだ。その他細かいことを言えば、6,7pでカネコと猫神のなれそめはモノローグではなく出来事として描いた方がよいのだろう。

 

qjinさん「とこしえのきみへ」

とこしえのきみへ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 悪い作品ではないと思ったが、なにか物足りなさを感じる作品だった。主人公がアイドルと再会するのはどのようにしてなのか、例えば偶然なのか情報を知っていて会いに行ったのか等、具体的な会い方が作品からはうまく読み取れなかった。そこが知りたい。加えて個人的には、作品全体からダンディズムを感じることもストレスを感じるポイントだった。とはいえ、この作品の場合は作者の方のやろうとしていることが表現されていて、それはそれでよいのだろう。

 

中西ゆかりさん「夢はあきらめたけど」

夢はあきらめたけど | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は主役の二人のキャラクターが互いにズレた仕事観をもっているところがいい。評価は高い。ただ、文字数が多い。文字の大きさが小さいこともあって、最初にこのマンガを読んだときは途中で読むのをやめてしまった。大枠には問題を感じていないので、あとは読みやすくなったら言うことない作品だと思う。

 

鷹鯛ひさしさん「見たくない顔」

見たくない顔 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 よくまとまっている作品だと思ったが、作中で場面がほとんど動かないところが気になる。その場面の動きのなさに対応して、話もあまり動きがない印象だ。とはいえ、その範囲の中でのドラマがよく描けていると思う。細かいことだが(といいつつとても気になった箇所だが)人を殴って2年刑務所生活という設定は、前科もなく現実にそんなことがあるんだろうか。正直、話の規模からしたら2週間留置されたとかでも十分な気がする。この部分は登場人物たちの心の動きの根拠になっているので、もうちょっと詰めてあるとよいと思うんだけども。

 

谷なすびさん「成仏代行人」

成仏代行人 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 決してお話しの内容が悪いわけではないのだが、文字ベース(それもセリフでなくモノローグ)で話が進んでいくので読みづらい。単純に損をしていると思う。内容は悪くないので、もう一度、コマ/セリフ(モノローグではなく)/キャラクターの演技、の基本的な部分を整理したものを読んでみたい作品。

 

たにかわつかささん「照れさせてくる照島さん」

照れさせてくる照島さん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、う~ん、申し訳ないけれどあまり楽しめなかった。なんだかうまくノリに乗れないなという印象。タイトルのつけ方や掛け合いの無邪気さからは全年齢向けだと感じるのだが、その一方で胸がはだける箇所やお尻が強調されるところではR15くらいの印象を受けるので、そのバランスにうまくついていけなかった、のかな。マンガとしての基本の構成はできているように思うので、自分でも乗れない理由はよくわかならない。個人的には、エッチな展開ならそれはそれでもっと二人の間の性的な出来事をハッキリ見せてほしいし、そうでないならエッチなことをきっかけにもう少し二人の関係性が変化していく様子をハッキリ見せてほしいカナ、という感想。

 

千住ちはるさん「2人のマドンナ」

2人のマドンナ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 タイトル通りの内容で、それはよいのだけど、なんかいい感じの会話があって終わってしまったなという印象。もうちょっとヒロイン二人の人間らしい感情が出てくるエピソードが挿入されるとよいと思う。例えば、新井さんは嫉妬をあらわにして怒るとか、水の森さんが実は表裏があって裏でほくそ笑んでいるとか。わたしの場合そういった個々人の感情が生じるためのエピソードを考えるだろうか。あくまで妄想の一例だが。

 

よこうたださん「空想 Brothers」

空想 Brothers | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話はいいなと思った。世界観がダイレクトに伝わってくる感じだ。ただ、どんな状況で会話がされているのかいまいちよくわからないので、それはさらに説明が必要だと思う。(例えば3pの会話が、学校の中のどこで話していて時間帯はいつなのか。4,5pで時間が飛ぶときにどの程度期間があいていて、家の中のどこで会話しているのか、など。)個人的にはよこうたださんがちゃんとしたマンガを描いてきた!と喜んだ作品だった。ここからが重要なので、頑張って細かな修正部分を修正していってほしい。

 

KenTaさん「ハッピィ・ホーム」

ハッピィ・ホーム | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 なるほど!このマンガには、ほっこりできたのでこれはこれでよかった、という気持ちと、2pマンガとしては場面が唐突に感じられちょっと惜しい、という二つの気持ちがある。これで完成といわれると、そうかなるほど、とも思うのだが、個人的にはもう少し情報が欲しい。今だと、これって2pマンガとしてよんでいい?大丈夫?とおっかなびっくりで読んでいる状態だ。

 

晃てるおさん「恋の挑戦、その極意とは」

恋の挑戦、その極意とは | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はとてもよかった。場面の転換が複数あり、そのたびに主人公が考えたり決心したり行動したりするところが純粋に面白い。細かいことをいうと、1pで女学生のどちらが竹本さんかパッとわからないところと、同じく1pの場所が学校なのかどこなのかはっきりしないところはもっと整理できそうだ。とはいえ、読んでいてなにかストレスを感じたところはほとんどないネームだった。ただ、特に背景の空白が多いので、実際に完成してみると細かい描写や背景など、読んで物足りない部分が出てくる作品なのかもしれない。

 

全体を振り返って

 今回課題3の作品は、正直読みづらい作品が多く、内容云々以前にマンガとして入ってくるかどうかの部分で引っかかってしまう作品が多かった印象です。僕なんかは、実をいうと、読みづらくても作品から受け取るもの一つあれば十分だと思って読んでいる口なんですけどね。
 しかし、今回の課題はある意味で、作家性を気にしないマンガを作ることで、そういったマンガでは読みづらさが全面に出てきてしまうことを自覚するための課題だったようにも思います。課題1,2が「この作品を描いているあなた」を意識させる課題だったと思いますが、課題3はそういったいわゆる作家性と関係ない部分のマンガの基礎力を問う課題だったように思えたからです。
 僕の考えでは、課題1,2のようなテーマに正面から答えられる能力、言い換えれば渾身の一作が書ける能力はめちゃくちゃ大事なんですが、それと同じくらい、一定の出力で作品が作り続けられることが重要だと思います。課題3は”一定の出力”を問う課題だったと思いますが、今後も、同じことが合同誌と最終課題以外のすべての課題でずっと問われていくのだと思います。
 一見すると”渾身の一作”を書くことと”一定の出力”で書くことは別々のことのようにも思えますが、この二つは演劇などの舞台で言えば役者の役割と裏方の役割にそれぞれ例えられるように思います。つまり、舞台は役者(=注目を引く物)がいなければもちろん始まりませんが、役者だけでなく裏方(=注目されないが必要なもの)もいなければ成立しないはずなのです。そして、マンガの場合にはどっちかというとこの裏方の仕事に粘り強く取り組む能力こそが想像以上に求められるように個人的には想像します。
 つまり何が言いたいかというと、今回の課題がたまたま”一定の出力”を鍛えることを要求しているのではないだろうと考えているということです。今後の課題の取り組みも同じ裏方の能力を地道に鍛えるところから始まるのかなと、そう考えています。(蛇足的にいうなら、師走の翁先生が課題3の後にすぐにネーム模写をするかどうかが大事とわざわざツイートしていたのは、その裏方作業を早く鍛え始めてほしいという意味なんでしょうね。)

 

更新履歴

2022/6/12 13名分の感想を追加/感想の基準追加
2022/6/13 2名分の感想を追加
2022/6/16 5名分の感想を追加/いくつかの感想の添削推敲
2022/6/16 添削推敲/全体を振り返って追加
2022/6/22 全体を振り返って添削推敲
2022/6/26 感想添削推敲/全体を振り返って添削推敲