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ひらめき☆マンガ教室の感想のヒント その3「手を動かして考える」 #ひらめきマンガ

 前回の「感想のヒント その2」では、感想が行き詰まりと作品との関係の悪化の予防についてとりあげました。その対策として、時間をかける作品とかけない作品を峻別すること、またテンプレート的な文章を用意することであまり内容的に凝らないようにすることを工夫として紹介しています。
 また、こういった手抜きをするためのひとつの指標として「塩感想」という考えを載せました。つまり、自分の中の興味のなさ・そっけなさを大事にしたほうがかえって安定して感想を続けられるのではないか、という考え方です。この発想があると、ネガティブな(「わからない」とか「あまりうまく読めていない」といった)意見が足がかりとなり感想のとっかかりが生まれるようになります。
 ところで、これまでの記事ではあまり「感想の中身をどうするか」について言及しませんでした。これには二つ理由があります。
 ひとつはそもそも僕が「感想があること」が重要なのであって感想の中身はあまり大事ではない、と考えているためです。感想の内容を考えるために外堀から考えたほうが話が早い、という理屈っぽい理由もあるのですが小難しい話になるのでここではひとまずおいておきます。
 もうひとつは感想をつけたり送ったりする理由がそもそも一人ひとり違っていて、その理由によって目指す内容が変わるためです。理由が違えばどんな文章をよいと思うのかも一人ひとり違ってきて、具体的な内容もケースごとに考えることがかわってきます。「なにをどう書くか」の前に「なぜ書くか」がある、といったところでしょうか。
 であれば、今までの記事では理屈っぽい内容が続いていたのでそろそろ具体例を取り上げよう、ということでこの記事では僕の過去の感想を添削してみようと思います。個人的には自分の感想を読み返すのはけっこうイヤーなところがある作業なのですが、がんばってやってみます。

 今回は一番自分が感想が下手だった時期の感想のほうが添削のしがいがあるだろう、ということで、この記事(ひらめき☆マンガ教室第4期第3課題 全28作品感想 アップロードしました! #ひらめきマンガ)から感想を引用します。ちょうど今ひらめき☆マンガ教室第7期の課題3ネームの締め切りが迫ってきているタイミングなので、そこにあわせて当時の会期中の同じ課題3ネームの感想から添削しようと思います。
 自分の文章の添削となるとどうしても言い方がきつくなりがちなのですが、そうすると客観的な意見としては見えづらくなってしまうと思うので、できるだけ他人の書いた文章だと思ってやさしめに添削を考えてみます。
 それと、こういうものは即興性も大事だと思うので、感想文はランダムにひっぱってきています。

 

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田山さん「ヨシノの黙示録」
実作
https://school.genron.co.jp/works/manga/2020/students/tayama222/19067/
配信
https://twitcasting.tv/tsuka_flamenco/movie/662056651

 この作品を読みながら考えて思ったことは、恋愛とか男女関係というのが、周りの空間と二人の空間がさっぱりわけられてしまってい、二人だけの空間が作られることが重要だということだ。読んでいて、世界が終わると謳われるこの作品世界で、周りと関係なく世界が終わると思っているヒロインに主人公が見初められる、という構図が美しいと思った。
 ただ、主人公がこの本当に終わってしまう世界のなかでヒロインが自分の中で世界が終わってしまうと思いこんでいることに対しての反応が薄いので、そこはなにか主人公の反応を持ってきてほしいと思った。たとえば、主人公はこの世界で鬱屈していたが、このヒロインが世界が終わることになにか意味を見出していることを知って感じ方が変化する、とか。それはあくまで一例だが、どんな形であれなにか主人公にヒロインの言動による受け取りが発生している所を描いてほしい。そうすると作品がより引き締まると思う。

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 自分で自分の文章にコメントするのは難しいですが、この感想はいくつか気になるところがある内容ですが大雑把には悪い内容ではないと思います。というのは「世界が終わると謳われるこの作品世界で、周りと関係なく世界が終わると思っているヒロインに主人公が見初められる、という構図が美しいと思った。」という一文に感想の内容があります。ほかに気になるところがあってもこの一文があるおかげで受け止めやすくなっているところがあるからです。逆に言うと、ストレスな部分が内容を隠してしまっているともいえるので、ストレスになる情報を削っていくといいと思います。
 削るとよさそうな部分を具体的に言うと、文章中で段落を分けた後半の文章が気になります。特に言葉尻に引っかかるポイントがあることが多いのでそのあたりを強調してみます。

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 ただ、主人公がこの本当に終わってしまう世界のなかでヒロインが自分の中で世界が終わってしまうと思いこんでいることに対しての反応が薄いので、そこはなにか主人公の反応を持ってきてほしいと思った。たとえば、主人公はこの世界で鬱屈していたが、このヒロインが世界が終わることになにか意味を見出していることを知って感じ方が変化する、とか。それはあくまで一例だが、どんな形であれなにか主人公にヒロインの言動による受け取りが発生している所を描いてほしい。そうすると作品がより引き締まると思う。

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 こうして強調すると連続で圧の強い言葉が続くことが圧迫感につながっていることがわかるのではないでしょうか。語尾の言い方で印象が変化するのはよくあることなのですが、特に気になるのは1文目の「反応が薄いので、~」の部分です。この文章ではその後の「~きてほしいと思った。」の意見につながっていますが、ここはたぶん言い方を「薄い」と断言するではなく自分の感じ方として「薄いように感じた」と説明を変え、「~反応が薄いように感じた。」と一度文章を区切るといいです。実際、この登場人物の「反応が薄い」のかどうかは読んだ人で感じ方に差があるはずなので、この断言は内容的にあまりよくありませんね。
 そのように文章を区切ると次の文への接続が少し悪くなりそうなので、文章も順番を入れ替えると途中までの文章はこんな感じなります。

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 ただ、この本当に終わってしまう世界のなかでヒロインが自分の中で世界が終わってしまうと思いこんでいることに対しての主人公の反応が薄いように感じた。たとえば、主人公はこの世界で鬱屈していたが、このヒロインが世界が終わることになにか意味を見出していることを知って感じ方が変化する、とか、あくまで一例だがなにか主人公の反応を持ってきてほしいと思った

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 こうすると「~に感じた」という感じ方パートと、「~してほしいと思った」の要望・意見パートに文を区切ることができます。だらだらと批判が続いていた感じが後半の要望・意見パートにギュっと詰まったようでスッキリしたように感じられないでしょうか。
 またそのあとに続く2文「それはあくまで一例だが、どんな形であれなにか主人公にヒロインの言動による受け取りが発生している所を描いてほしい。そうすると作品がより引き締まると思う。」ですが、文章の締めになっている2文目の「~引き締まると思う。」が余計な一言になっています。なぜそうであったほうが作品がよくなると思えるのかこの文章からはあまり理由が見当たりません。(これは1文目の個人的な要望パートと2文目の作品の良し悪しパートとを繋げて説明しようとしてしまっていることで理屈が悪くなっています。)1文目の「~所を描いてほしい。」のほうは少しぶっきらぼうな言い方ですがおかしな内容ではないので、最後の一文は削除してしまってよさそうです。
 最後に、冒頭の一文について。「この作品を読みながら考えて思ったことは、恋愛とか男女関係というのが、周りの空間と二人の空間がさっぱりわけられてしまってい、二人だけの空間が作られることが重要だということだ。」は、その後の「読んでいて、世界が終わると謳われるこの作品世界で、周りと関係なく世界が終わると思っているヒロインに主人公が見初められる、という構図が美しいと思った。」の一文と比べるとわかりづらい内容です。
 この1文目はなにか考えたいことがあったことはわかります。ここには感想を膨らませる余地があると思うのですが、実は内容としては主人公とヒロインの関係について言及する部分でその後の2文目と被っているところがあるので、今の僕なら一度まるっと削除するか、抽象的な感想なのでどこかに順番を入れ替えたりしてうまく差し込めないか検討すると思います。
 もしこういった読解に挑戦する場合、基本的にはどのページのなんというセリフや絵を見てそう思ったのか、具体的なポイントと絡めると意見としては整うことが多いです。それでも具体的な箇所から自分の感じ方を特定することが難しい場合は、自分の読み方よりも作品のほうが一枚上手だったということにしてしまって(実際に相手のほうが上手なのかどうかはこのとき気にしないようにします)、「自分にはよくわからなかったけど~ということかなと思った」などの言い方に置き換えて表現すると、意見がまとまることが多い印象です。この場合の具体的なフレーズは人によって違うと思いますが、読解をあきらめた旨を直接文章にしてしまうことが肝だと思います。
 たとえばすでにこの田山さんの「ヨシノの黙示録」への感想は当時と今とで感想が違っているはずですが、おふざけ的に今この1文目の部分を書き換えるならこんな感じでしょうか。

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 個人的にはこの二人の関係の描き方がよくわかっているとは言えないのだが、世界の終わりという大きな出来事が二人だけの秘密のように閉じ込められる描き方にはなにか気持ちいいところがある。読んでいて、世界が終わると謳われるこの作品世界で、周りと関係なく世界が終わると思っているヒロインに主人公が見初められる、という構図が美しいと思った。

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 といったところです。でも、これは今の僕に冷静に見えるから書けるだけで、当時こうできたとは思えないのでやはりおふざけですね。
 ここまでの話を踏まえて、削ったり順番を入れ替えたりすると今回の文章はこんな感じになります。

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田山さん「ヨシノの黙示録」
実作
https://school.genron.co.jp/works/manga/2020/students/tayama222/19067/
配信
https://twitcasting.tv/tsuka_flamenco/movie/662056651

 読んでいて、世界が終わると謳われるこの作品世界で、周りと関係なく世界が終わると思っているヒロインに主人公が見初められる、という構図が美しいと思った。
 
ただ、この本当に終わってしまう世界のなかでヒロインが自分の中で世界が終わってしまうと思いこんでいることに対しての主人公の反応が薄いように感じた。たとえば、主人公はこの世界で鬱屈していたが、このヒロインが世界が終わることになにか意味を見出していることを知って感じ方が変化する、とか、あくまで一例だがなにか主人公の反応を持ってきてほしいと思った。なにか主人公にヒロインの言動による受け取りが発生している所を描いてほしい。

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 まだ少し表現の硬いところはあると思いますが元に比べると落ち着いた感じの文章になったと思います。元々が自分の文章なのでなんともコメントしづらいですが、ここまで一度削ってみてひとまず感想としては完了ということにしておいて、あとで見返して内容の不足を感じたら削った部分などについてもう一度内容をさしはさむ余地がないか考えてみる、といったところでしょうか。

 これで今回の内容は終わりですが、最後に今回の内容にあわせてヒント的なことを載せるとこういうことは言えるかなと思います。
 実は、今回のような少し余計なことを書いてしまっている文章の場合に実践的に考えてほしいのは、ほかの作品と比べてこのひとつの作品にそこまで時間を使いたいのか少し手を止めて冷静に考えてみてほしいという話です。前回出てきた作品の優先順位の話です。
 実際の当時の僕個人の話として、(こう書くと申し訳ないのですが)この田山さんのマンガにそこまで強い関心があったのかというとそうではなかったように思えます。実際には、この作品に限らず、興味が弱い作品にかち合った場合にどんなスタンスをとればいいのかわからずそのつど困りながら感想を書いていたのだと記憶しています。そういう場合は観想の内容の問題を感想にかける時間の問題に置き換えて考えてしまい、興味が薄いものにはあまり時間をかけない、意図的にそっけなくする、という方法をとると感想の目標や目安が見えるようになり、状況がわかりやすくなると思います。あえてかける短くするというより、ほかとの中で時間をかけるものとそうでないものに差をつけてやることが大事かなと思います。(もちろん、その与えられた時間の中でちゃんとやる、ということなのですが。)
 ひら☆マンの感想は一度に相手にする作品が多く、全体に対するバランスの中で一つ一つの作品の感想を考えないと続けづらくなってしまうところがあります。それは前回までの記事で説明したとおりです。
 たぶん、今回取り上げた作品の感想はそれなりにうーんと考えて粘って感想を書いているのですが、その粘りで疲れてしまって言い方の雑なところをそのままにしてしまっているところがあるように思えます。でも、そもそもそういう追い込まれる状況を自分で作ってしまう前に、作品全体の中でその作品がうーんと粘って考えたい作品だったのかはどこかで考えておいたほうがよかったかもしれないのですね。
 それに関心が薄いと思ったらその関心の薄さから感想を考える、という考え方もあります。好きな作品に関心の熱さを示す感想もいいものですが、興味の薄い作品への関心のなさを表現する感想もまたいいものだというのが、今回僕が声を大にして言いたいことです。