玄関先の言葉置き場

主にひらめき☆マンガ教室の感想用。メッセージ等はおたよりフォームへいただければ、配信でお返事します。

ひらめき☆マンガ教室第7期 課題1完成稿の感想 #ひらめきマンガ

 作品の感想を書きました。順番はひらめき☆マンガ教室の名簿順です。こちらの感想配信で内容の補足説明をしていますので、感想の詳細やニュアンスが知りたい方はそちらも参考にしてください。よろしくお願いします。大塚

全26作品感想

アサイーうめぇさん「脆弱な身体よ。強靭な魂に追いつけ。

 決して悪い内容ではないと思ったのだが、ちょっとうまく読み取れないところがあった。おそらく、オチの手を伸ばすところなどがピンとこず「これが伝えたいことなんだ」というはっきりした部分をうまくつかめなかったのだと思う。個人的には、たとえば薬の作用は物語の重要パーツだと思ったものの具体的にどういう作用副作用があるのかうまくついていけずぼんやりとした。ただ、なにか気にさせるところがあるお話だと思う。


佐原もやさん「なんでも

 主人公だけが自分の悪に気づいていない、というお話だと思ったが、女の子の説明がイマイチピンと来ず全体の印象がぼけている。ただ、個人的にはなにかキャラクターの感情に芯が通っているようなバリッとしたところは好き。このバリッとしたところの良さを今後も見せてもらえたらなと思う。

 

どんどこすすむさん「サムライと漫画家志望

 ペン入れとして期待以上のものを読ませてもらえた感があり満足したマンガだった。ただ、ネームでは最初に主人公が受けるストレスが強かった分キャラクターに厚みが感じられていたのが完成稿になってその部分は削られたので、ちょっとした変化のはずだが想像以上にアッサリしてしまったと思った。ネームの場合、主人公が持ち込んだマンガを笑顔でやんわり否定される、その指摘が正しいようにも思われるがしかし抵抗があって飛び込むことができない…という主人公の受け止めが、話全体を支える前フリになっていたのだと気づく。かといって、追加されたサムライの登場シーンもなかなかいいと思う。内容の取捨選択の結果だと思うが、なにを選ぶか考え方があるとよいと思う。

 

えぴのみすさん「板挟み社員

 ネームと比べて、話の終わりの部分がずいぶん整理されて主人公の感情のありどころに厚みを感じやすくなった。主人公が子どもに「しにそう?」と問いかけられる展開の落差が印象的で、だからこそ重たく響いてくるようなバランスがあるのがよいと思う。ただ、なんとなく読んでいると、これだけ魅力を持って登場する仲林さんに主人公が味方しないのはなぜなのか、とじわじわ気になってくる。ベテランパートの戸田さんが一方的に悪役に見えているが、そちらの意見にもなにか一理ある(もしくはほかの事情で反論が難しいなど)というところをチラッとでいいから知りたいかな、と個人的には思うところ。

 

新川帆立さん「恋ってなんだ?

 予想外だったのが、序盤5pで登場する「どうせ君も/離れていくんでしょう?」という主人公の独白。なるほど、これはごまかしのないお話だと思った。13pから続く主人公の夫との関係への疑問が、電車と町の風景の広がりとともに着地していくシーンは見事だと思った。ただ一点、7pの「ツワモノだったー」から続く夫の言動がなんだか単に調子のよいことを言っている人のようにも思え、若干乗りづらいようには感じた。個人的にとてもよくていろいろ感じた作品だったせいもあって、ちょっと厳しく読みすぎているのかもしれない。

 

f/kさん「最近の私

 淡々と人間が生きているところを読めるお話で個人的には好きなお話。ただペン入れが早かったこともあって、もう少し画面として楽しませてもらえるとうれしいとは思った。一読者的には、マンガに対する原動力みたいなもの、言ってしまえば苦労の軌跡みたいなものがマンガ作りから何か伺えるとうれしいはず。

 

こまだ ほろさん「おでん

 ネームを読んだとき、主人公の不安の提示や先輩の前のめりにフォローしてくれる感じにメリハリがあると思ったのだが、完成稿ではさらっとしている。ネームの印象に自分がひきづられている自覚はあるのだが、個人的には先輩の描き方はネームのほうが好きだったので残念だった。振り返ると、(完成稿ではなくなってしまったが)消しゴムからちくわぶの話題に入るところもストーリーのもっていき方として予想外で面白かったとも思う。
 と、否定的な意見が続いてしまったが、ペン入れから作者の方が描こうとしている世界観のようなものが伝わってくるように感じる。とくに10,11pで先輩のエプロン姿をしつこく描いてくれたところはうれしかった。

 

ドガネさん「オレのタルパ

 ずいぶんお話が整理され、特に第2のタルパに一人の人格を感じられたのがよかった。なんだか、寂しい感じがあったのがフォローされていてほっとした。また、よくなったからだと思うが、今度は女の子のタルパに厚みが欲しいと思うようになった。この女の子が主人公にとってなにか切実な存在たるしぐさや言動が本来この世界にはあるのではないか、と思わされる。こういう気の抜けた感じと切ない感じがない交ぜになっているお話はまた読んでみたい。

 

久留米さん「HAPPY BIRTHDAY 自分

 自分にはうまく説明できないがこの作品は何かとてもいいと思った。たぶん、なんでもないこととしてこのお話が描かれているところがよいのだと思う。自分は非常にまじめに、家族が当たり前に家族をしていることを描いてくれていることのありがたさといったらないな、と読みながら思った。
 個人的には、7pのお父さんの「当たり前に~覚えているんだよな」というセリフは、もう少しお父さんのキャラクターが気になることを言ってくれていると満足かもしれないと思った。なにか広がりというか、この話がどういうエピソードであるか作者の考えを伝えてくれるようななにかをお父さんが言っていたらいい感じがする。満足した作品のひとつで、ぜひ今後も作品を読ませて欲しい。

 

くじくじらさん「チンかも

 バランスがよくて読みやすかった。変なディティールみたいなものがうまくなじんでいるマンガだと思う。個人的には、7p主人公の「いい匂いがする」というセリフが状況がよくわかって良かった。このページ数的には十分な内容だと思うが、欲を言えば主人公がこの友達に翻弄されたり正気に戻ったり、という展開をしつこく読んでみたかったようにも思う。特に8pの女装をしている友達のほうが股間のアレが大きいという所はちょっとシュールで面白く、そのあたりをほんの少し広げて見せてくれるとうれしいような気がした。

 

midoriさん「女風SNACKへ行こう!

 随所に笑わせてくれたり楽しませてくれる仕掛けがあることがうれしく、たいへん好感を持った。ネームからの修正として特に話の切り出しが速くなって読み味がよくなったことに感心。今後の作品が非常に楽しみに思った。気になったのは、主人公のデザインがほかの登場人物とリアリティが違っているように思ったこと。これはどのくらい意図的か分からないが、そのせいでとくに2pの衣装の紹介が分かりづらくなっていると思った。

 

夢叶羽どどどちゃんさん「前を向いて歩こう

 レベルの高い作品でなかなかうまいこと感想が出てこないが、これだけスッキリと描けているのがすごい。主人公が走って大声を上げたり、路地裏に移動したり動きがあるのがいいと思った。また、ネームのときにも感じたが、結局これがどういう話なのかは少しわかりづらいところがあるようにも個人的には思った。自分の解像度が足りていないのだとは思うのだが、裸をみせてもらえたはずなのにどこか不満足感があるというか。でも、これは普通の成人向けマンガでは読めないマンガで、だれにどうエロを届けるかの作戦があることが見えていいマンガだと思う。

 

もろいさん「藁を編む

 このマンガは予想外に爽やで読み味がよかった。小説家とのエピソードの裏で仕事が円滑になっていく、という物語に骨格のよさを感じる。また、8,9pの「溺れるときに掴む藁のような小説」というところが画面とともに重みが感じられたこともよかった。しいて言うと、12pから14pにかけて吉由は一方的に語りかけているだけなので、辛らつにあたられた主人公が吉由に向かってどんな表情をとったのかは読みたかったように思う。ただそれもどちらかという細かい話だと思う。今後も楽しみな作家さんだと思った。

 

福本眞久さん「ED社長!!

 ネームから大きく変わっていて、コメディになったのは悪くないと思った。男が勃たたない理由がはっきりしており、ネームから議論が少し前に進んでいるように感じた。ただ、9pの「いつも頑張ってるあなたを少しでも支えたいの」という女の子のセリフはもっとたっぷり見せてほしいようには思う。コメディだからこそ、いい話の部分とのメリハリを楽しませてもらえるような仕掛けがあるとうれしかったように思う。

 

太田ユータローさん「時は乱世

 ネームと比べるとコマ割りが大きくなり読みやすくなった。主人公の動きがすっきりした印象だ。ただ作中での”戦”がなんだかぼんやりした印象だった。リアリティラインがよくわからなかったのだと思う。こまごましたところの精度が上がっていくと話全体の納得感が増していくのではないか、と個人的には思った。

 

さとりさん「ミニマリストの買い物

 ネームと比べて読んだのだが、ほとんどすべてのコマの絵が変わっていて驚いた。これだけ実際に手を加えられるのはすごい。内容もよくなっていると思ったが、たぶん整理された結果だと思うが、見開きをぱっと見たときにキャラクターが小さいように感じた。詳しいことはわからないが、特に旦那さんについてアップになるコマがあるとよかったかなと思う。内容的なよさを感じるマンガで、今後が楽しみに思う。

 

新森フクモさん「大切なものを決めて

 個人的に、産休を先にとった先輩に主人公が単純に応援できないような感情になる、というところがよかった。それでも応援する態度をはっきりと口にする主人公を、読んでいるこちらが応援したくなった。マンガとしてはまだ読みやすくできるところはあると思う。特に終わりで子どもと3人で食卓を囲むシーンが作中の現実なのか主人公の願望なのか疑問に思いながら読んだ。とはいえ、ぱっと見て内容のよさもあり絵柄に安定感があって読みやすい。今後の作品も楽しみだ。

 

しのののさん合わない友達

 ネームから整理されてよくなったと思う。こういう二人がただただくっちゃべっているだけの話がよいと思った。どうしてもまだ画面の充実感がほしくなるが、これは絵の問題というより構図やコマの使い方によると思う。背景ゴマ・セリフのないコマなどが入ってくるとまた印象が変わってくるかなと思う。今後も頑張ってほしい。

 

シンシンさん「ひし餅はお好き?

 今回一番よかったマンガかもしれない。といってあまりほかと比べるのもどうかと思うが、予想以上に面白おかしい話で、なにか自分が読みたいものが満たされた感じがした。最後、ひし餅が「やけどするほど熱くやわらかかった」という一文はなにか意味深で、みくる先輩への主人公の感情と重なっているようにも思える。フィクションなのだがフィクションとしらけさせないようなところがあり、この世界の一員に自分がなったように思わず感じられるマンガだと思った。

 

えすけいさん「カーテンコールは終わった

 画面の充実があって、自分はそんなに内容がわかっているほうではないと思うのだが、ひとまずイヤミなく読めた。13pのタイチの表情などグッとくるところがあると思う。欲を言えば、主人公の葛藤を描くドラマの部分は自分にはさほどピンときておらず、そこがピンと来たらうれしいと思った。なにかきれいに描かずに一生懸命説得しようとしているところが見えると、気になって読むようになるのかなと思う。でもこれは自分の関心の幅の問題でもあるのであまり気にしないでほしい。ぜひ今後も読ませてもらえたらと思う。

 

かきもとUさん「二十歳の煙(生存確認・改)

 悪くないと思う。タバコに焦点が当たったことでなぜだか内容に入りやすくなったように感じた。ただ、自分の思い込みかもしれないが、若干描き方が硬いような気もした。とくに最後のコマは、感動的にさせようと感情を強く演技させているように感じるのだが、むしろここは、なんでもない表情をしていたほうが読者が勝手にあれやこれや読み解いて情感が出てくるところなのではないだろうか。ただ、というのもこの作品がかなりよくできているから気になるのだと思う。今後もこの調子で頑張ってほしい。

 

二兎たまむさん「こうして痩せましたニャ

 なんだか、画面のつくりがスッキリしてキャラクターもかわいくスラスラ読める一方、ネットスラング的なノリなどの内輪感にはあまり好感を持たず、アンバランスに写ったマンガだった。主人公が猫キャラになっていて全体が軽い感じになったところはよかったと思う。絵柄からは好感を持つだけに、ノリがどの程度制御できているのかが心配に感じた。

 

夢野ボムさん「全然平気!

 うーん、これは不満足だった。ネームの印象が個人的にかなりよく、シリアスにならないところがよいと思っていただけに、完成したものが全体に重たくなっていて残念。とくに、イヤホンの声が悪い意味で啓蒙的になっているところがストレスだった。申し訳ない感想だとは思うのだが。

 

夕波とんぼさん「パラボラ

 これはよかった。8pから12pにかけて主人公が幼少期を思い出して奮起していく展開が(ネームを見ていたせいもあって余計)予想外だった。こういう書き手の思い入れが強い題材が出てくると雰囲気で終わってしまう話が多い中、このお話はサッカーの題材でなくてはならない理由がちゃんと感じられてよかった(あまり比べて言うのもどうかとは思うが)。
 気になってしまったのは、最後のページでモノローグが3段重ねで入っているところで、ここはモノローグで読み方に蓋がされてしまっていあまりいい方法ではないように感じた。まあ、とはいえ最初の課題作でこれだけちゃんとできていることがえらいと思うので、細かい話かなと思う。

 

yxudonさん「おかえり十五歳

 ひとこと感想で話したこととあまり違いはないが、ペン入れが入りきらなかったことは残念だった。特に、線の雰囲気がよさそうな作家さんなので最終的な絵を見てみないとなんともコメントがしづらい。お話として、最後に追加された不思議な時空間のようなもののシーンは、ちかごろ商業でもあまりこういう表現を見ていなかったこともあってなかなかいいと思った。次回ぜひ、ペン入れを見させてもらいたい。

 

zinbeiさん「元・人間一回目の比較的スムーズな旅

 画面のつくりや絵の書き込みが緻密でレベルが高いと思ったのだが、ネームから整理されたぶん、なんだかわかりづらいところもはっきりしたように感じた。おそらく、背景ゴマがないことがわかりづらさにつながっているのだと思う。とくに場所の移動が多い作品なので、場所や背景を主役として見せるようなコマががあるとうれしかったかなと思う。本当はもうちょっといろいろな感想があってもいいマンガだとは思うのだが。

 

作者の皆さんお疲れ様でした!特にネームからの修正を頑張ったことが伝わる方が多く、「マンガをやるぞ!」という意気込みが見えるようでした。