玄関先の言葉置き場

主にひらめき☆マンガ教室の感想用。メッセージ等はおたよりフォームへいただければ、配信でお返事します。

ひらめき☆マンガ教室第6期 大塚陽也の一年間の感想のまとめ #ひらめきマンガ

 せっかくなので一年間の大塚の感想をまとめました。文章として十分な出来とは思えていないのですが、手直しはきりがなさそうなのでほぼ入れていません。
 大体10万字あるようで、作業をしながら一年間自分でもよくがんばったと思いました。もしかすると余計だったかもしれませんが、感想の意図がわかりやすいのではないかと思い作者の方ごとにソートしました。みなさん一年間お疲れ様でした。

形井中へいさん

課題1ネーム 形井中へいさん「風間さん」

風間さん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は風間さんのキャラクターのリアリティがあった。特に8pの「先生もわかってくれない」はこの女の子の持っている鬱屈した感情や年齢不相応の幼さ、つまり固有なものがなにか表現されているように感じる。ひょっとすると作者の方が現実で本当に言われたことのある言葉なのかもしれないとすら感じるくらい、なにか迫力を感じたセリフだった。
 というように基本的には好印象だったのだが、ただ、最後のページの話のオチの部分は主人公の言動をどう受け取ればよいのかがちょっとよくわからなかった。オチとしては情報が詰め込まれすぎている感じがある。とはいえ、トータルでいうと印象に残るのは風間さんのキャラクターそのものでこれはとても良いと思った。泣いて戸惑っている少女のキャラクターをみて”かわいい”というと問題なのかもしれないが、しかし、風間さんはかわいらしく、なんだか目が離せない。

課題2ネーム 形井中へいさん「胸センサー」

胸センサー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は女性と男性の描き方のバランスがとれていると思った。あくまで男性読者目線の意見ではあるが。男女間の亀裂を描いた上で無理のない落としどころに二人の関係がオチていると思う。また、個人的には課題1ネームの内容と比較して、幅のあるキャラクターを描ける方なのだと感心した。課題1のようにシリアスなものをシリアスに描くのもよいが、こうして、ある種のシリアスな話をコメディ調に描けるのは個人的にはたいへん好感を持った。画面的にもスッキリした作りで、個人的に今回の課題作で気に入った作品の一つ。完成稿が大変楽しみな作品だ。

課題2完成稿 形井中へいさん「胸センサー」

胸センサー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームのときの感想と似ていて、画面的にもスッキリしていて読みやすく内容的にもまとまっていてよかった。ただ、完成してから改めて読むと主人公の女性の感情がもう少し知りたいようにも感じる。能力のことを自分自身でどう感じているかがさらにわかるとさらに話に膨らみが出てくるように思う。とはいえ、このレベルの整った作品が描けるなら今後の作品も楽しみだ。

課題3ネーム 形井中へいさん「MP0の魔法使い」

MP0の魔法使い | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は画面的にはすっきりしていて読みやすかったのだが、内容としてはもうちょっと何かほしいとも思う内容だった。プロレス技をかけるところはキマっていると思うのだが、これはいったいなにがどうなった話なんだろう。発想はアホっぽくてよいと思うのだが。

課題4ネーム 形井中へいさん「サッカー部員志田ちゃんの自由なふるまい」

サッカー部員志田ちゃんの自由なふるまい

 この作品は、良くも悪くも男性が理想とする美少女的なものが描かれている作品だと感じた。画面の作りが丁寧で女の子のヒロインとしての魅力の押し出しがあるところがよいと思う。ただ、お色気的な部分があまり必然性が感じられないとも思った。特にわたしは気にしいなのだとは思うが、ストーリーと関係なく胸をはだけたり触られたりするように見えたが、そういう読み方であっていたのだろうか。ちょっと個人的には意図がわからずに深読みしてしまったところだったが、やりたいことができていたらそれでよいと思う。完成に向けてぜひがんばって欲しい。

課題4完成稿 形井中へいさん「サッカー部員志田ちゃんの自由なふるまい」

サッカー部員志田ちゃんの自由なふるまい

 この作品は女の子がきれいに描かれていて絵に納得感があった。ただ、どうしてこういうヒロインが描かれているかはよくわからなかった。特段、内容がわからないということでもなかったのだが、読者として共感できるキャラクターがあまりいなかったことが読み方がわからなくなった原因なのかもしれない。とはいえ、絵的には非常に丁寧に描かれていて、それだけでも読ませる力がある作品だと思う。

課題5ネーム 形井中へいさん「あの夏、いちばん愚かな海。」

あの夏、いちばん愚かな海。

 このお話は率直に、ああ、こういう出会い、イイ!と思った。オタクの心をくすぐるシュチュエーションが描かれていると思う。ただオチはちょっと急な感じもする。もう少しなにか、この二人がどうなるのかが知りたいように思うが、ギャグっぽく終わらせたかった感じだったのだろうか。よいネームだと思うのでぜひ完成稿がんばって欲しい。

課題5完成稿 形井中へいさん あの夏、いちばん愚かな海。

 この作品は改めて完成稿を読んで、現実の話をファンタジーの中に盛り込んだ部分が面白いと思った。マンガ的にもつくりが丁寧でわかりやすく、好ましい描き方がされていると思う。ただ、せっかく男女の出会いの話なのだが心身ともにあまり具体的な接近をしないのでそこが少し不満といえば不満な部分かもしれない。個人的にはせっかく男女の話なのでもう少しドキッとする展開を読んでみたいと思う。ただ、というのもマンガとしてはすでに十分よく出来ているがゆえの話で、それだけにお話として心をつかむ部分がほしくなる、という感想だ。

課題6ネーム 形井中へいさん「朝熊会長は絵が描けない

 このお話はよいと思う。特に少しエッチな展開を思わせるフリから最終的に脇にたどり着いたので、なるほどとなった。あまり真面目に言うのも変な気はするが、この描き方は具体的な嗜好がはっきり描かれているのがいい。ただ、冒頭の状況は初読のときにどういう状況かわからず少し戸惑った部分だった。ただ、これは完成するとほとんど気にならなくなる部分かもしれない。こういうちょっと下品なことをちゃんと下品に描いている話は好きで、このお話は完成図がぜひ読んでみたい。

課題6完成稿 形井中へいさん「朝熊会長は絵が描けない

 このマンガはヒロインがエロいマンガでそこがよかった。主人公だけにかまってくれるちょっと天然でなんだかエロっぽい先輩、という関係性は読み手が読みたいものだと思う。一方、個人的には主人公の印象が希薄でそこが気になった。もう少しなにかキャラクターがほしい。たとえば、ずっとスケベなことを考えているとか、サークルの活動だけじゃなくなんにでもネガティブだ(でもマンガは一生懸命だとか)など。上記は一例であって、具体的にこうするべき、ということでは決してない。ただ、普段どういう人間だからこそこのヒロインとの二人きりの状況に意味が生じているのか、というシュチュエーションのうまみがさらにほしいと思うお話だった。

課題7ネーム 形井中へいさん「ヤンキー、恋をする

 このお話はテーマになっている吃音がちゃんとセリフとして強調されていてよいと思った。 次になにを言うんだろうという期待が持てるように感じる。ストーリーはこのくらい軽いものも悪くないとは思ったが、印象に残るお話かというと微妙とも思う。(これは作画にもよると思う。)個人的にはなにかもう少しなにか芝居があってほしいだろうか。

課題8 形井中へいさん「朝熊会長は絵が描けない

 このマンガは以前に比べて主人公が気持ち悪くなっており、がんばって描いていると思う。一方、まだひとつのマンガとして硬い感じは残っているとも感じた。もともとのマンガの講評で主人公のリアクションの弱さへの指摘があったが、個人的にはこの改稿でもまだ主人公のリアクションは足りていないように感じる。ただ、硬さを抜くことはそう簡単ではないとは思うし苦労して描かれていることは伝わってくる。なにか、作者さんの中での方法が見つかるといいと思うが。

課題9(合同誌) 形井中へいさん「課金体質金子ちゃん」

 このマンガは試みはよいと思ったのだが、お話として結局なにがどうなったのかはあまりよくわからなかった。オチ付近に”フィクションのヒーローは現実を救ってくれない”、という趣旨のセリフも作中にあるのだが、さりとてこのお話もフィクションなわけだしね、と思ったり。ただ、お金を使うヒーローというアイデアはよく、1京円という馬鹿でかい単位を使うのはいいと思った。…しかし1京円ってめちゃくちゃ多いので物理的に食うのは難しいのではなかろうか、とも少しひっかかったりしている。とはいえマンガっぽくてよいなと思う。

課題10ネーム 形井中へいさん「スリットハンター トレイン編

 この作品は、実写部分もあり内容も少し性的に攻めた意欲的な作品で好感を持って読んだ。個人的にはオチの驚きもあって楽しめた内容だったが、お話としては主人公の観察に物語が終始しているのは気になる部分とは言えるかもしれない。ただ、トンチが利いていてアイデアも勇気もあるよいお話しだと思う。

課題10完成稿 形井中へいさん「スリットハンター トレイン編

 このマンガは作画が丁寧で内容に対して説得力があると思った。一方、これはこれで十分よくできていると思うが、個人的には主人公の観察でお話が終始しているところで評価が高止まりしている。主人公の下品な感じをさらに人とのかかわりの中で見てみたかった、というのが個人的な欲張った感想なのだと思う。とはいえ、逃げずに描くのだという意思を感じる作品だった。

最終課題ネーム 形井中へいさん「志摩先生とうるるちゃん」 

 女の子の表情をたっぷり表現していて、また主人公とヒロインの関係をめぐるストーリーもちゃんとまとまりがある、いい作品だと思った。ネームとしてケチがつくような部分もあまり見当たらない。すでに良い内容だと思う。ぜひ完成目指してがんばってほしい。

最終課題完成稿 形井中へいさん「志摩先生とうるるちゃん」 

 とても丁寧に作られている作品だと思う。うるるちゃんの表情の変化を読んでいくだけでも楽しい感じがする作品だった。一方、ストーリーやドラマの部分はけして悪い内容ではないのだが、冒頭から予想された展開がそのまま続いているように感じられ少し飽きてしまったというのも正直な感想だ。もしかすると迫力を出そうとするシュッとした演出とゆったりしたストーリーとのかみ合いが少し悪く映ったのかもしれない。とはいえ非常に丁寧で画面栄えを意識していることがわかる作品で、それだけにもうあと少し物語の部分にアイデアがあればと個人的には少し惜しい感じがしている作品だ。

 

明青りんごさん

課題1ネーム 明青りんごさん「Listening Test #1」

Listening Test #1 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、まず全体としてちゃんと話の流れがあって、とくにボウズの友達を脇役に置いているところが読者に対して親切なつくりだと思った。話を振り返った時にストレスになる部分があまり感じられない。そういう親切な作品が作れるということにまず好感を持つ。
 一方で、話の内容から察するに、主人公が自分の夢に気づくところに話の盛り上がるポイントを用意してる内容だと思ったのだが、その主人公が自分の夢に気が付く部分12p~15pの流れはもう少しなにか説得力が感じられるとうれしい部分だった。仮に主人公が自分で自分の夢を言葉にしてくれたりしたら、この主人公の気持ちに読み手としてもついていきやすいだろうと思う。あくまで素人の一意見なので、参考程度に思ってもらえたらうれしい。

課題2ネーム 明青りんご(あおりんご)さん「鬼山さんは厳しい。」

鬼山さんは厳しい。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は鬼山さんの魅力を感じる作品だった。部下と他の社員の間できっちり対応をわけるところなどに礼儀正しい女性の魅力があるキャラクターだと思う。反面、主人公から鬼山さんへの反応はもう少しなにか具体的な感情や応答が用意されているとよかったと思う。個人的にまだまだよくなりそうなネームだと思うので、完成稿が気になる作品だ。

課題2完成稿 明青りんご(あおりんご)さん「三人の鬼がいる!」

鬼山さんは厳しい。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、ネームから完成稿への修正がよく効いていて今回の課題作品の中でもとくに印象に残る作品だった。やはり先輩3人のキャラクターが面白い。主人公の内面に話が寄る部分も、このくらいのバランスで描かれているとくどくなくてちょうどよいと思う。あとは特に作品前半は画面として白くなっている部分なので、そういった画面的なつくりの部分をがんばってもらえたら言うことないと思う。これは面白い作品だった。

課題3ネーム 明青りんご(あおりんご)さん「言え、わたし!」

言え、わたし! | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は主人公の女の子がかわいかった。なにかに一生懸命だったり、勢いで想定外のことをしてしまったりするキャラクターはいいと思った。ただ、もう少し全体に整理がされると良い内容だとは思う。個人的には、告白しようとして言いよどむの場面にもう少し早く入ってほしい感じがする。とはい、話の筋としては全然おかしくないし普通に楽しめる内容だと思うので、ぜひがんばって整理して完成させてもらえるとうれしい。

課題4ネーム 明青りんご(あおりんご)さん「夫のひとこと」

夫のひとこと

 この作品は、個人的に気が抜けてよかった作品だった。日々生活しているとこういう休憩みたいなマンガが読みたくなるときがあるもんだよな、と思った。一方、これはこれでよい気もするが、個人的には最後に触れられる主人公が「朝起きて外にも出た」ことは、作中の行動としてさらにディティールを持って描かれていると納得感が増すのではないかとも思って読んだ。いろんな読み方や考え方があると思うが、個人的には自分で「やるぞ」と意思を示したことが他人から認められたほうがうれしいのかなと思う。とはいえ、こういう100ではなく1を肯定するような描き方は個人的には好ましく思う。完成稿もぜひがんばって欲しい。

課題4完成稿 明青りんご(あおりんご)さん「夫のひとこと」

夫のひとこと

 このマンガは主人公がかわいくてよかった。この女性のふわっとした感じはよくできていると思う。内容については、個人的にはこの旦那さん奥さんに対して甘すぎなのでは、とも思うが、4pマンガならこのくらいがちょうどいいのではないかとも思う。このマンガは今回の課題作の中でも、はっきり良いと思うマンガの一つだった。

課題5ネーム 明青りんご(あおりんご)さん「Flower of Bubble」

Flower of Bubble

 このお話は切ない余韻があるお話だった。個人的に、今から死ぬとわかっている人の決断を描いているところが読み応えを感じる部分だ。また今回のお題への答え方として短いなかでよくまとまっていると思う。していうなら、2pの人魚姫が決断する部分はモノローグではなく動きで言動を見せてもらいたい部分ではないかと思う。どういうペン入れになるのか楽しみな作品の一つだ。

課題5完成稿 明青りんご(あおりんご)さん Flower of Bubble

 このお話は画面のつくりが丁寧で、特に紙だと映えそうな作品だと思った。お話としてもネームから変わらず切なくよいお話だと思う。ただ、完成して表情などがハッキリしたせいか、王子のキャラクターに少し違和感があるというか、この主人公の女の子が決死の覚悟を決める相手としてはすこしぼんやりしたキャラクターに映るようにも感じた。また、これだけ丁寧に描かれているだけに、要求が高くなってきているということだと思う。今後もぜひこの調子でがんばってもらえたらうれしい。

課題6ネーム 明青りんご(あおりんご)さん「夜の探し物

 このお話は夜の学校でヒロインと出会う、という設定が良いと思う。ただ、短い内容の中で主人公もヒロインも内心の声が出てくるので、それはどちらかに統一してもらえるとキャラクターが捕らえやすいと思った。このお話は状況設定で妄想が膨らみそうで、完成稿では楽しい感じやわくわくする感じを読ませてもらえるとうれしい。

課題6完成稿 明青りんご(あおりんご)さん「夜の探し物

 このお話はよくがんばって作ってある、という印象が強かった。話のオチの部分でヒロインの暗田さんの設定になんとか意味を与えようとしているところは、苦労のあとが伺えるという意味でも好感を持つ部分だ。ただ、とはいえ「なんでこんな時間に学校に」という主人公の疑問は解消されていないように思える。解決の仕方はなんでもよいと思うのだが、個人的には暗田さんが闇深そうなキャラクターなので、もっと序盤に出てきてフリを残してくれると面白そうだ。

課題9(合同誌) 明青りんごさん「プレゼント」

 説明が難しいが、これだけやさしい世界観で一貫している話は自分には思いつけない、と思うお話だった。そういう自分にない目線のものが読めると気づきがあってうれしい。作画も非常に丁寧で気合が感じられ、いろいろな点で好感を持つマンガだった。

課題10ネーム 明青りんご(あおりんご)さん「消える

 この作品は、個人的には今回の課題の中で一番感心させられた作品だった。11pから12pにかけての「あれは/消せるだろうか」「消したほうがいいだろうか」という主人公の微妙な思考の流れと戸惑いの表現がグッときた。一方オチ付近は流れがわかりづらい。結局この主人公は最終的にどうなったんだ、続きを読ませてくれ、と思っている。

最終課題ネーム 明青りんご(あおりんご)さん聖夜の女」 

 展開が練られていて、物語を成立させようとしていることが伝わってくる作品だと思った。個人的に、女性がナイフを持ち出してきて殺してやる、と意気込むところは、不穏な内容が来た!とテンションがあがったのだが、実際は平和な展開につながっていくので、予想が外れたというか、なるほどと納得してしまった。それとは別に、この男女二人の関係(もしくは主人公)にもう少し具体的な変化や固有な展開がほしいようには思う。決断して終わるのではなく、決断がどういう結果を呼ぶのかまで見せてもらえると印象に残っていくのかなと思う。ぜひ完成に向けてがんばってほしい。

最終課題完成稿 明青りんご(あおりんご)さん「聖夜の女」 

 人物の作画がこれだけ丁寧に描かれていることに驚いた。これだけ作画に注力できるのはすごいことで、なによりヒロインが魅力的だと思った。意味ありげな女性のリアリティみたいなものがよく表現されていると思う。一方細かい話をすれば、話の結びはわかりづらいと思った。個人的にはプレゼントが破壊されたことは恋愛への終止符に思え、だとしたら男がラストで「オレも」「向き合ってみる」というのは結論として分裂しているような印象を持った。とはいえ、この作品の場合お話としての整合性の良し悪しはさほどは気にならず、こういう惑わせる女の人やそういう異性に惑わされたい男の人の感情みたいなものがよく描かれていることが大事な作品ではないかと思う。最後の課題作品でこういった特色のはっきりある作品が読めて、一読者としては非常に満足した気持ちだ。

 

アキオさん

課題1ネーム アキオさん「薬が切れた」

薬が切れた | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはコマ割りとセリフに余裕があり、読んでいて雑念がない感じがあった。ところどころに出てくる率直なセリフや場面の使い方が気持ちよく、この作者の方の描く表現をもっと読んで見てみたいと思った。たとえば、5pの「小林君だ…/知らない女の人と歩いている」「空しい/自分は何を期待していたのだろう」のセリフの回し方などは、それ自体が率直でリズムの良い感じがあり、こういう表現はだれにでもできる表現ではないと思う。
 ただ、最後のオチは唐突な感じがあり、おそらく作者の方も作っていて少し困った部分ではないかと映った。なにか整理できるとよい部分だと思う。とはいえ、最初に作るネームとして悪いとは思わなかった。今後もぜひこの調子でマンガを作ってほしい。

課題2ネーム アキオさん「告白」

告白 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はそれぞれのキャラクターの話す内容が正直でよかった。キャラ同士のやりとりが端的な反応で続くことによさがあると思う。アピールにある「気になる点は、話の結末をどう受け止められるか、という点」については、個人的には”この作品はこういう作品なんだ”と思って読んだ。ここはわりと作者がどう思うか、どうしようと思うか次第のところのような気がするので、実際に作るときは気合がいる部分なのかもしれない。このネームはマンガとしてまとまりのある内容にちゃんとなっていると思う。普通に良い内容だと思うので、ぜひ自信を持ってほしい。

課題3ネーム アキオさん「衝突」

衝突 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 ベタな感想だが、この作品は人が事故を起こしてしまったときのどうしようもなさがよく描かれていると思った。それまで現実を受け入れられなかった女性が自分の罪を受け入れるところは心を打つ内容だった。個人的にはこの作者さんの今までの作品と比べても話としてよく練られていると思いつつ、ただ、キャラクターの動きは少し唐突だとも感じる。さらに重要な場面にページを割いたりと、もう少し場面に強調があると、ここを読んでほしいのだとわかりやすくなるのかもしれない。話の中身がある作品だと思うので、ぜひ完成を目指してほしいと思う。

課題4ネーム アキオさん「万引き少年と援交少女」

万引き少年と援交少女

 このお話は色々と考えされられる内容だった。予想が裏切られる展開的な心地よさもあり、作品を最後まで読まされた感じがあった。特に、8pの「前田くんって万引きとかする人だったんだ/ちょっと面白いね」や12pの「君を買いたい/君はいくらで買えるの?」などのセリフは予想外なセリフで読んでいてドキッとする。一方、後半に比べると前半がややわかりづらい箇所があり、4,5pの万引きで揉めるくだりはだれとだれの間にどういうことが起きているのかもう少しわかりやすいとよいのではないかと思った。とくに5pで「今日はこれで」といっている人物がだれなのかがわかりづらい。ただ、このお話は今回の課題作の中でもぜひ完成稿を読みたいと思った作品だ。こういう内容や情感がつまっている作品はとてもよいと思う。

課題5ネーム アキオさん「後悔」

後悔

 この作者さんの作品はキャラのやりとりがいつも良い。この作品も魔女が姫の優柔不断さにキレているところが自然なやりとりだと思った。ただ、お話としては動きが少ないお話になので、なにかエピソードが盛り込まれるとうれしい。個人的にはこういう頑固なところがあるキャラクターはなにかに巻き込まれると反応が面白そうだと思ったりする。

課題5完成稿 アキオさん 後悔

 このお話はネームに引き続き会話のテンポがよく、キャラクターの世界の捉え方みたいなものがどこか感じられる内容だと思った。また、完成して絵がハッキリしたことでお話の持っている楽しい空気感のようなものが生まれていると思う。一方で、内容的にはちょっと消化不良感もあり、なにかもう一工夫ドラマがあるとよいと思う内容ではあった。会話の様子が読んでいて楽しいマンガなので、そのよさをうまくつかったお話作りがされているとうれしい。ただ、この作品の場合は特に作品が出来上がったことの書き手自身のうれしさや楽しさが伝わってくる内容で、そこがいいと思った。これはこれでとても良いものだと思うので、今後も引き続き完成目指してがんばってもらえたらうれしい。

課題7ネーム アキオさん「卒業式から始まる

 このお話はよい雰囲気があるお話だと思う。間がある演出に情感が感じられていい。ただ、お話としてさらにまとまった感じが出てくるとよいのではないかとも思う。状況説明的なシーン(背景のある引きの絵)が入ってくるとよいように思える。

課題9(合同誌) アキオ さん「にたものどうし」

 この作品は、話の内容はあまりつかめなかったのだが、しかしこの作家さんのペン入れが見られてうれしかった、というのが感想になると思う。この少しポップな絵のタッチは、内容の重さに対してバランスが取れていると思った。唐突に話が始まったり、45度くらい予想外のところから女の子のリアクションが飛んでくるこの感じはなにかよいものだと思う。今後もマンガを続けてくれたらもっといい作品が読めるのではないかと思っている。

課題10ネーム アキオさん「別れ話

 このお話は、お話としてはもう少し起伏がほしいとは思うがこれはこれで雰囲気のある作風だと思った。個人的な好みとしては、この男の子の印象が変化したとされる前後の姿がさらに見てみたいところだ。

最終課題完成稿 アキオさん「私が家を燃やした」 

 深刻な話が友情としてさらっと回収される、その按配がよい話だった。自身の過去にとらわれている主人公に対し、女の子が”私にとっての物語”を伝えるだけに終始するシンプルな構図が、問題の繊細さをより感じさせるように思う。個人的に、終わり方がわかりやすくも着地した感じが出ておりそこがよかった。

 

阿山カンフーさん

課題1ネーム 阿山カンフーさん「ジョウンデー」

ジョウンデー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、内容はあまりわからなかったのだが、ただ、なんとなくページはめくれてしまう不思議な読み味があった。これはこれで旅行記的な読み物として面白いと思う。あえて言えば、もう少し、ここが読んでほしいポイントなんだ、というところがわかりやすくなるとうれしいだろうと思う。とはいえ、こういう淡々とした作風にこの作者の方の持ち味があるように思うので、この調子でドンドン作品作りにのぞんでもらえるとよいように思う。

課題2ネーム 阿山カンフーさん「にくのカンヅメ」

にくのカンヅメ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、ラストのひまわりの鉢植えにたいへんインパクトがある作品だった。この作品のことは自分にはよくわからないと思ったのだが、なにかこれはすごいことをしている作品だと思う。アピールにある「ほとんどの事故死は人体が『圧縮』されることによって引き起こされる現象と考えます。」という一文も、作品とあわせて読むとなにか感じさせるものがある。マンガ的にも普通に読める内容だが、美術などにあるだろう抽象的な出来事とある特定の主張や価値観を組み合わせて、作品を受け取らせるような表現形態に少し近いものを感じた作品だ。

課題3ネーム 阿山カンフーさん「粗忽病棟」

粗忽病棟 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は内容のよさがある作品だと思う。死ぬ間際に男性が男性の胸を触って笑いあって死ぬ、というところが絶妙な場面選びになっていて、ひとことでは言い表せない余韻がある作品だった。ただ一方、作者の方がアピールで書かれているように、マンガとしてはちょっと読みづらいとは思う。この作品をどうすると読みやすくなるのかなんともわからないが、完成形が気になる作品ではあるので、ぜひ最後までがんばってもらえたらうれしいと思う。

課題4ネーム 阿山カンフーさん「ツチノコイヌ」

ツチノコイヌ

 この作品は言葉遣いやキャラクターたちの造詣がユーモラスで楽しい気持ちになる作品だった。おもちゃばこを覗いているようでたのしかった。ただ、肝心のツチノコイヌが卵から出てきたらわりとすぐにお話が終わってしまったことは個人的にはちょっと残念。てくてく後ろからついてくるところがなにかエピソード仕立てになっていたらうれしいのかなと思う。

課題4完成稿 阿山カンフーさん「ツチノコイヌ」

ツチノコイヌ

 このマンガは想像力があってキャッチーな描き方がされていて、楽しみがちゃんと用意されているマンガだった。画面的にところどころ白く感じる部分はあるが、全体として統一感が崩れておらずよくがんばって描かれていることを感じる。またこの作者さんの作品が読みたくなるような魅力を感じる作品だ。

課題5ネーム 阿山カンフーさん「もっこす人魚姫」

もっこす人魚姫

 このお話はタイトルにもなっている人魚姫のキャラクターが子どもっぽく生意気でかわいらしかった。魔女が姫の恋路の心配をしているところもほっこりする描かれ方だった。一方、個人的には、せっかく姫の恋愛の話なので、やはり意中の相手とのやりとりも見てみたい。ただ、これはこれで二人の会話を楽しむお話なのかなとも思う。

課題5完成稿 阿山カンフーさん もっこす人魚姫

 この作品は、ネームの時点であった人魚のかわいらしさが完成稿になってさらに際立っていると思った。特に6,7pの人魚姫の年相応の生意気さとそれを憂うおばあさんの魔女の描写がよい。一方、完成して思うようになったが、冒頭の1pは情報量が多く読み解くのがたいへんだった。最後まで読んでいるときちんとご褒美がある内容になっているので、そこを生かすためにもぜひ読みやすさを工夫してもらえたらよいと思う。

課題6ネーム 阿山カンフーさん「カイロガン

 このお話は基本的にスラスラと読めて楽しい感じもある良い作品だと思うのだが、オチはこれはちょっとわからないとは思った。個人的には突飛で面白いとも思えるのだが、たださすがにもうちょっとフリがあってほしいだろうか。もう少しイメージしているものが伝わってくるとうれしいように思う。

課題7ネーム 阿山カンフーさん「私はうるさい人

 このお話は、声というテーマからよいお話を引き出していると思う。個人的にはこれで十分なお話だと思ったが、あえていうなら声がうるさい部分に大文字を使った演出などの画面的な演出があるとより説得的になるのかもしれない。ただ、こういう話はわたしは好きだ。

課題9(合同誌) 阿山カンフーさん    「決戦の決算」

 このお話はよいと思った。怪獣対策部×年度末調整のアイデアが面白いと思う。ただ、この作品の独自ルールみたいなものがあってついていくのが大変なようにも思う。とはいえ、一つのアンソロジーの中でこういう作品があるとどこか安心するような、魅力ある作品だった。

課題10ネーム 阿山カンフーさん「大車輪

 このネームは、もうしわけないが自分にはちょっとよくわからなかった。勢いはあると思うのだが内容のつながりがよく見えていない。車椅子の主人公が元競輪選手が麻雀を打っていることになにか意味があったりするのだろうか。

 

赤い氷さん

課題1ネーム 赤い氷さん「彼女は妖性」

彼女は妖性 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はもうすでに完成されているというか、ぐいぐいと引き込まれるように読んだ。単に一読者として崇高なものを見てしまったという気持ち。個人的に感心したのは内容の荒唐無稽さに対してそれぞれのパーツの意味が分かるように作られている部分で、内容に対して読みづらさをあまり感じなかったことだった。この作者の方の作品はもっともっと読んでみたいと思う。
 あえて何か付け加えるとしたら、このお話しの内容が「愛を知る」内容なのだとすると、もう少し主人公が女の子とどういう関係へ至ったことになるのかは明言されているとよいのではないかと思う。単に互いに快感に目覚めるだけの内容ではないはずだと思うが、そうだとしてそれがどのあたりにあるのかはこの内容だけではあまりつかめなかった。ただこれは、単にわたしが読めていないだけなのかもしれない。

課題1完成稿 赤い氷さん「彼女は妖性」

彼女は妖性 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は完成稿になって作品の印象がすっきりした。ちゃんとWeb上で映える絵柄になっていて個人的に驚かされた。内容的にも、ネームの段階からわかりやすくなっていると思う。
 一方、これだけ派手な内容だったらもう少し大ゴマを使った演出があってもいいと思った。特に11pの心臓のシーンはもう少しインパクトがあってよいシーンだと思う。ほかにも、心臓をくっつけると気持ちがいい、というこの作品の世界観はちょっとよくわからなかったのでもう少し説明が必要ではないかとも思える。(もしかしたらこれは私がわかっていないだけ?異性と互いの胸をくっつけて興奮するみたいな経験が元になっていたりするのだろうか。)
 個人的に大変好きな作風で今後も楽しみ作家さんだ。ただ、崇高で不思議な世界観が面白いと思う一方、気をてらいすぎるとそれはそれで白けてしまうので、そのバランス感は読者としても今後注意して見ていたいポイントだ。

課題2ネーム 赤い氷さん「マンコーの叫び」

マンコーの叫び | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は評価がちょっと難しい作品だった。個人的には、怪獣が出てくる特撮っぽい内容に映っていて楽しく読んだが、まあ、簡単にいうと下品な内容なので人は選ぶと思う。とはいえ、たとえばこの内容を女性でも共感できるようにしよう、とか、そういうことではないと思うので、あまりへんな配慮などはたぶんしないほうがいいと思う。わからなくても楽しめるかみたいな、作品の説得力で勝負すべき内容ではないかと思う。ちなみに、一読者的には、この内容は普通に面白いと思ったのであまりネガティブなことを言うのも違う気もする。個人的に色んなキャラクターのビジュアルや細かな絵の表現を含め完成稿を読んでみたい作品なので、がんばってほしい。

課題3ネーム 赤い氷さん「人間」

人間 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は、個人的には嫌いではない話だった。見せ場の15pの死体を食べるコマがよくキマっていると思う。ただ、普通の感想になってしまうが、何の罪もない人間が主人公によって殺される内容なので、もう少しこの作品世界の倫理観に対する納得感や説明がほしいとも思う。スライムの形をしているのでなにかこの世界観特有の理屈が通っていると思うのだが、この内容だけではそこはうまく判断がつかなかった。とはいえ、個人的には捕食シーンが特に魅力的に映り、不足があるというとその辺りくらいしか思いつかない作品でもあった。

課題3完成稿 赤い氷さん「人間」

人間

 この作者さんの作品はいつも作風に驚かされるが、今回の作品も全く自分にはない発想で描かれていると感じた。スライム化する世界もビジュアルに驚くし、その世界の中での肉体のやり交換も全く思いつかなかった。一方で、この男女二人の関係が結局なにがどうなったのかはちょっとよくわからなかった。事象としては理解できるのだが、このことによって登場人物たちがなにを感じたのかにもっと説明が欲しいかなという感じだ。とはいえ、この作風は他人にはマネが出来ない武器だ思うので、ぜひ今後もがんばってほしい。

課題4ネーム 赤い氷さん「三竹さん好きです」

三竹さん 

 このお話はよくがんばって作ってあると思ったのだが、お話全体がモノローグで説明されているせいか、個人的にはあまり関心にひっかかる所なく読み終えてしまった。なにか女の子のキャラクターに意外性があったり、男の子がなにか判断をする状況が描かれたりするとよかったのかなと思う。描こうとしていることはなんとなくわかる感じがするので、なにかこの作品ならではの要素がある作品になるとよいと思う。

 

課題5ネーム 赤い氷さん「人魚姫と天卵丼」

人魚姫と天玉丼

 このお話はちょっとよくわからなかった。冒頭の王子からの誘いと後半の食事のエピソードが個人的にうまくつながらなかったのだが、もしかして食事つながりということだったのかもしれない。冒頭の人魚姫は非常にかわいらしく描けていると思うのだが。どういうつながりで全体のエピソードが考えられているのかわかると一読者的にはうれしいのだと思う。

課題9(合同誌) 赤い氷 さん「とにかくあなたが好きです」

 この作品はちょっと自分にはよくわからなかった。いい感じの世界観で絵もよいので、気になって読んでみようとはするのだが、どこに乗っかってストーリーを追うとよいのかがイマイチつかめない。たしかに光るものはあると思うのだが。独自の世界観を突っ走りつつ、読者にもそれを開く、ということが可能な方向があるとよいと思うのだが。

 

ばやし あきやさん

課題1ネーム ばやし あきやさん「はかせの一生」

はかせの一生 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は読んでいて安心して読める作品だった。おそらく、細かい部分でのアクションリアクションが丁寧に用意されていることが安心感を生むのだと思う。(例えば10pの人物の登場が12pのフリになっているところなどは演出として単純に面白い部分。)一方、個人的には隕石の話が最後にとくに触れられないあたりは話が途中で変わってしまったように感じた箇所だった。とはいえ、話全体のリズム感がよく、読ませる工夫をするぞ、という意思を感じるネームで、読んでいてなんだかマンガ的な高揚感のようなものをすでに感じる。作品を読む限り、この作者の方は自覚的に作品を描かれている方だと思うので、今後の作品がすでに楽しみでいる。

課題1完成稿 ばやし あきやさん「はかせの一生」

はかせの一生 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、完成稿になってぐっと世界観が出たように感じた。広いスケールの開放感がある作品だと思う。一方、ネームの段階から少し気になっていたのだが、石化を解かれた少女の主人公に対する反応は何らかの直接的な表現(泣くとか笑うとか)があると好ましいと思った。ページ数的に少女のリアクションに割く余白がもう少しほしい感じがする。とはいえ、この作品は作者の方自身にとっても実りの多そうなできばえに見える。今後もこの調子でドンドン作品を作って見せてもらえたら一読者としてはうれしい。

課題2ネーム ばやし あきやさん「布団は魔境」

布団は魔境 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、今回の課題作品がわりにシリアスな内容が多い中くだらない内容だったので、なんだかほっと一息つけるようでありがたいネームだった。個人的に特に前半の「あんた/布団と付き合ってる?」「反論よろしいでしょうか?」あたりのやりとりが楽しい。ただ、後半12pから終わりにかけての流れは話の内容がズレたようにも感じた。とはいえ、こういう馬鹿なことを一生懸命やっている作品はあるだけでうれしいので、ぜひがんばってほしいと思う。

課題2完成稿 ばやし あきやさん「布団は魔境」

布団は魔境 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 ネームのときの感想と似てしまうが、この作品は気が抜けている内容でいいと思う。ネームのときは気がつかなかったが、2度寝が友達に振られたことの不貞寝とオチとして重なっているように感じられ、話としてスッキリした感じがした。この作品はこれはこれでよいと思うが、欲を言うなら、もっと感情やキャラクターに動きがあるような作品も読んでみたいと思う。今後もがんばってほしい。

課題3ネーム ばやし あきやさん「僕はカノジョに触れられない」

僕はカノジョに触れられない | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は、おもしろそうな内容ではあったのだが、もう少しなにか出来事が起きてほしいと思う内容だった。超能力の設定は面白かったのだが、せっかく設定があるなら主人公が女の子と実際に手をつなげたときにどんなことが起こったのかが描かれていてもよいのではないか、などと思った。主人公が殴られながら告白を受け入れてもらえるところなど、アイデアとして面白い部分がある作品だと思うので、なにかこの内容を生かす形で完成まで持っていってもらえるとうれしい。

 

深田えいひれさん

課題1ネーム 深田えいひれさん「TOMORROW」

TOMORROW | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは読んでいて、画面に対するコマや文字のサイズ感がちょうどよくて読みやすかった。個人的には筆圧が高く、勢いで読まされる感じが気持ちいい。一方、内容的にはもうちょっとうまくお話としてまとまるとよいのだろうなとも思う。今回の課題のお題に苦戦したのかなと思って読んだ。ただ、個人的には自分が中高生ぐらいのときに読んでいたWebマンガ的な雰囲気を思い出しながら読んで、なんだかその当時のネットの匂いを久しぶりに思い出したマンガとして印象に残っている。

課題1完成稿 深田えいひれさん「マンガ家志望者奮闘記」

TOMORROW | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はそれこそ内容の感想ではなくなってしまうが、がんばって描いていてえらいと思った。思ったとおりの感想がなかなかもらえないという中、読者が楽しめるような内容を踏ん張って完成させることはなかなかできることではないと思う。
 一方、内容的にはオチの付近で受け取り方がよくわからなくなった。8pの「目の前にいる最高のファンを/楽しませないわけにはいかないじゃない!」というコマがセリフと表情がマッチしていてとてもいいと思うのだが、その後のエロ本のくだりでそのよさが失われているように感じる。マンガ家の女の子が読者に応援されて奮起するふつうにいい話なので、その話としての良さが余韻として残る終わり方があるとよいと思うのだが。

課題2ネーム 深田えいひれさん「負け戦」

負け戦 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、ちょっとうまく乗れないようなでも面白いような、微妙な感じの読み味だった。内容の本題に入る前にもう少し前提に対する説明がほしいと思ったが、アピールで「Back Street Girls」が紹介されていることもあって目指している内容は理解できると思った。やろうとしていることは伝わってくるし面白いところがある作品だと思う。

課題2完成稿 深田えいひれさん「負け戦」

負け戦 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、よくがんばって仕上げていると思う。ネームの段階から細かく変更さえれていてえらい、と読んでいて思った。ただ一方で、話し全体のノリが勢いで押している感じもあり、少しついて行くのが大変だとも思った。話の中心としてここを読んでほしい、という部分をうまく教えてもらえると、読者としては読みやすくなるのだろう。とはいえがんばって描いていることは伝わってくるので、個人的に応援したくなる作品の一つだった。

課題3ネーム 深田えいひれさん「選ばれしもの」

選ばれしもの | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は面白かった。女神さまが口が悪くなるところがギャップがあって楽しい。内容的にも4pマンガとしてはちょうどよいくらいの軽さで、これはよい作品なのではないだろうか。しいて言えば、オチが「あの人のほうが適任」「魔王みたいな威圧感」「世界は救われた」と一コマの情報としてはちょっと情報が多いので、なにか軽くなるように整理されるとよいとは思う。普通に面白そうなので完成稿が楽しみな作品の一つだ。

課題4ネーム 深田えいひれさん「極限状態」

極限状態

 この作品は、よくでいているとは思ったものの、自分が筋トレとは全く無縁な人生を送っているせいか、そっか筋トレね、という感じであまりひっかかりなく読んでしまった。個人的には理性と本能の対比がピンとこなかった部分だったので、そこがもう少しわかるとうれしいのかもしれない。とはいえ4pマンガとしてはよくかけていると思う。

課題4完成稿 深田えいひれさん「極限状態」

極限状態

 このマンガはネームと比べてよくなっていると思った。3,4pのコマ割りの変更や女の子の表情の変化など、修正がうまく効いていると思う。4ページマンガとしてはこのくらいの内容がちょうどよいと思う一方、女の子が筋トレに励む理由があるとより内容に入りやすいのかもしれないとも思う。今後もぜひこの調子でがんばって欲しい。

課題5ネーム 深田えいひれさん「代償」

代償

 このお話は、これはこれで良いと思ったのだが、個人的には後もう少しなにか欲しいとも思う内容だった。個人的には出オチ感がしてしまっている。ギャグ的な構成としてはうまくできていると思うので、単純にわたしの好みからはずれていてうまく読めていないだけなのかもしれない。

課題5完成稿 深田えいひれさん 代償

 このお話はネームのときに比べてずいぶん印象がよくなったお話だった。特に1pで人魚が横たわっている図で「おっ」と引き込まれる感じがある。一方細かい話だが、ネットのスラングを使う部分はあまり良い手ではないと思った。個人的な好みとしてどうこうという話ではなく、こういうスラングを見てこのマンガを避けたり読むことをやめる読者が想像され、そのリスクがある割にこの表現をあえて使う旨みが少ない表現になっているのではないかと思うのが、どうだろうか。とはいえ、それ以外で特に気になる部分はなく、これはこれでよく出来ていると思う。今後もぜひがんばって欲しい。

課題6ネーム 深田えいひれさん「ラジオガール

 このお話はなんだかおもしろいと思った。なにがというと難しいが、おそらく作者自身の体験の部分と想像で書かれている部分の按配が心地よいのだと思う。キャラクターのちょっと頭が悪そうな感じもよくできていると思う。4コマで完成図があまりイメージできない部分もあるが、よさそうな内容なので、ぜひ完成させてもらえるとうれしい。

課題6完成稿 深田えいひれさん「ラジオガール
  このマンガは配信者エッセイマンガのようでおもしろかった。ありそうで意外とあまりみかけない組み合わせだと思う。主人公が自分の欲望に正直なところも、7p付近の動画投稿の達成感をうまく引き出していてよいと思う。一方、画面はかなり工夫していると思うのだが、主人公一人のお話なのでどうしても画面が単調に感じられるとは思った。ただ、個人的に今回のマンガは、ちょっとしたネタや4コマ的な自由さがうまくかみ合っているように思う。もしよければ今後も4コマでなにか読んでみたい。

課題7ネーム 深田えいひれさん「文字の神様

 このお話はなんだか面白そう、という感じと、微妙に乗り切れない、という感じと両方の感想をもったネームだった。絵が入ると印象が変わるかもしれないが、この話のように関係性が逆転する話なら、変化する前の関係にフリとしてなにか屈辱だったり理不尽な場面があってほしいように思う。ただ、文字のきれい汚いと性格のきれい汚いを重ねるアイデアは面白いと思う。はまっている感じがしているし、作者の方もそう感じているなら応援したい。

課題7完成稿 深田えいひれさん「文字の神様

 この作品は悪くないと思う。おもしろおかしくよみやすいマンガだと思った。あえて言うなら個人的には主人公と女神のどっちのキャラクターも狂人的でちょっと疲れるとは思った。だれか一人落ち着いたキャラクターがいると内容に入りやすいかもしれない。ただ、個人的にコメディやお色気などやりたいことが出ていて好きなタイプのマンガだった。

課題8 深田えいひれさん「[課題3改稿]選ばれし者:Re

 このマンガは話の流れはわかりづらかったのだが、なんだかおもしろげだと思った。主人公が女神との接触でちゃんとドキッとしてくれているところがいいのだと思う。一方、剣を抜いた主人公ではなく女神がむしろ剣を持って旅立ったというのはこの作品のアイデアの元ではあると思うのだが、4pでの表現だとどういう状況かがわかりづらいと思った。4pマンガとしては少し設定過多なのかもしれない。ただ、このマンガは気が抜けて個人的にはよいと思う。

課題9(合同誌) 深田えいひれさん「ホス狂いの夜」

 こういうくだらないマンガがこの本では読みたかった、と読んで思った。最初から「札束の殴り合い」とか言ってるし、コンサルが看護師の二倍近く年収があるとか変にリアリティがあって、とにかくくだらない。マンガと言って、現実をつかって人を楽しませる物語って、こういうくだらないものが一番いいよなと思う。もちろん、もう少しマンガとして精度がほしいな、などとは思うのだが、

課題10ネーム 深田えいひれさん「虚弱ジム

 このネームはよいと思う。ぶち抜きのコマ割りやとにかく女の子の胸や尻を何度も登場させているところなど構図やコマ割りに工夫を感じる。内容もしっかりくだらなく、面白いマンガだと思った。もしかすると、個人的に今回の課題作品のなかで一番よいと思ったネームだったかもしれない。この作品はぜひ完成したところが見てみたい。

課題10完成稿 深田えいひれさん「虚弱ジム

 くだらない内容のマンガなのだが、作りが丁寧なことを感じるいいマンガだった。細かな部分までコントロールが効いていて、内容はそう特別なことはおきていないのだが(というと失礼だが)しかし読んでいて飽きない。少し惜しいと思ったのは2ページ目でジムの様子が出てくる部分が筋トレのリアリティがほかと違って見え、もう少しやり方がありそうな部分だと思った。とはいえ、丁寧に作られていてノリもよくて面白いマンガだと思う。

最終課題完成稿 深田えいひれさん「可愛がり専用職員」 

 これはいいマンガだった。個人的に今回の課題作品の中でも評価が高い作品だ。女体がドンと登場する構図や、急に主人公が無双する展開もメリハリがあって普通に楽しく読んだ。個人的に、女幹部を倒したあとの14pの「ダメ人間なんかじゃない」が、特に脈絡はないが切なく熱いセリフで好きな表現の仕方だと思った。さらに作画の精度を上げるとよいのだとは思うが、16pの中で可能な限り工夫を凝らしているよい作品だと思う。

 

ぼんち。さん

課題1ネーム ぼんち。さん「お兄ちゃん、ごめんね。」

お兄ちゃん、ごめんね。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 まず一見して、情報にストレスがなくネームとして読みやすかった。内容的にも主人公の罪悪感に話を絞っているところで一貫性が取れていて好感を持つ。ただ内容については、主人公がここまで兄に対して罪悪感を覚えている理由はよくわからなかった。母親が倒れていたら通報するのは普通だし、通報したといっても実際には特に警察沙汰になったりはしなかったならそんなに(最終的に刺されても仕方ない)とまで思えないのでは…などと思った。ただこの作品の場合は、なにか本当は説明したいことがあってそのことがうまく読めていないパターンのような気がする。わたしがわかっていないだけで本当はなにか読み方みたいなものがある内容なのかもしれない。

課題1完成稿 ぼんち。さん「お兄ちゃん、ごめんね。」

お兄ちゃん、ごめんね。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは今回の課題作の中でも読めてうれしく思った作品だった。完成して情報がはっきりしたおかげか、内容の説得力のようなものを受け取った。個人的に、ネームの段階では個人の悩みのようなものを描いているかと思っていたのだが、完成稿を読んで不安な気分のようなものが描かれていることが大事な作品だと思った。個人的にはどうしてこういう内容を描くことになったのか、その内容のわかりづらさの原因も含めて共感が持てるところがある。
 ただ、マンガとしてはここからさらに整理ができそうだと思う。例えば1p上段の主人公とおばあさんはサイズに差をつけたほうがいいだろう、とか、3pでのお兄ちゃんの登場シーンはもっと大きい登場だとよさそうだなど、画面の使い方が少し気になった。ただ、これから先、この教室でマンガを描いていくには土台として十分深みのある内容ではないかと思う。こういった複雑なものを今後どうやって整理して伝えられるかが重要になってくるのではないかと読んでいて思った。

課題2ネーム ぼんち。さん「人の振り見てなんとやら。」

人の振り見てなんとやら。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは、最初に読んだときはよくわからなかったのだが、時間をとってじっくり読んでみると工夫が見えるお話だと思った。特に、最後に鏡を見るときの主人公の反応には、おそらく、自身への疑念とも安堵とも取れる繊細なニュアンスがあると思う。それまでのフリに対してあまり単純な感情に帰結しないところは内容を感じた。
 また一方、素人目線で完成の図が浮かびにくいと思ったのは、物語中盤4pから太文字で主人公の内心が語られている部分。ここはうまく効果的な演出になるとよいと思う。(4pから11pへと休みなく内心が漏れている部分は、個人的にどこかで一呼吸あるとありがたいと思った。)この作品は完成するとまたグッと内容を感じられそうな作品なので、完成稿をぜひ読ませてもらいたい。

課題2完成稿 ぼんち。さん「人のフリ見てなんとやら。」

人の振り見てなんとやら。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は複雑なものが複雑なものとして描かれているとてもいいと思った。一方を上げてもう一方を下げる形でバランスを取るのではなく両方とも下げる形でバランスを取るのは、実はマンガとして優れているやり方だと思う。おじさんもメイド嬢もどちらも愚かだ、というメッセージを感じる内容だと思う。
 また一方で気になった部分もいうと、もう少し主人公の女の子の感情の流れは落ち着いた形で伝わってくるとうれしいとも思った。終始太文字で強調されて感情が流れていて、これは面白い表現だとも思うのだが個人的にはもう少し変化もあるとうれしい。とはいえ、なにか絶妙なバランスの中で成立しているタイプの描き方だとも思うので、このバランス感は大切にしてほしいと思う。これからもこういった簡単には要約できない深みがある作品を読ませてもらえたらうれしい。

課題3ネーム ぼんち。さん「シちゃった。」

シちゃった。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、個人的に今回の課題作品の中でも楽しく読ませてもらった作品の一つだった。読んでいてその場にいるような感じがあり、主人公のドキドキ感やアイテムの解像度の高さにぐいぐい引き込まれる感じがあった。一方、特に冒頭の部分はどういう状況から始まっているのかはちょっとわかりづらかった。オチが結局男性と致さない内容になっているのもこれはこれでありだとは思うが、個人的には主人公と男性が元々どういう関係だったところが変化したのかもっと知りたいと思うオチだった。とはいえ、なにか読み手を牽引する力を感じさせる内容で、好感を持つ内容だった。

課題3完成稿 ぼんち。さん「シちゃった。」

シちゃった。

 このマンガは個人的には好きなタイプのマンガだ。単にわたしには合っているだけかもしれないが、小物がちゃんと入っていることや導入のネームからの修正など、描き方に積極的な姿勢を感じた。ただ、これは色んな意見がありそうだが、個人的にはオチは急に終わっている感じがする。この件でたぶん二人の関係が変化すると思うのだが、その辺りをうまく描いてほしいと思った。ただ、もしかしたらわたしがうまく読めていないだけかもしれない。勢いだけでなく丁寧さが見える作品で、気合を感じるいい作品だと思う。

課題4ネーム ぼんち。さん「恋に落ちても。」

恋に落ちても。

 このお話は、なんだか楽しげなお話しだとは思ったのだが、不思議と内容的にはうまくのれなかった感じだった。こういう感想でいいかわからないが、主人公のおじさんにあまり共感がなかったかな、という感じだ。わたしがあまりちゃんと読めているとも思えておらず、ちょっとなんとも言いがたい。この作品でしたかった重要な一点、みたいなことがわかるとうれしい。この作家さんは個人的に応援しているのでぜひがんばって欲しい。

課題4完成稿 ぼんち。さん「恋に落ちても。」

恋に落ちても。

 この作品は主人公のおじさんからイケおじへの変更や、離婚の設定などよくがんばって作ってあると思った。毎度そうなのだが、今回の作品も読んでいて元気をもらえるように感じた。ただ、内容は駆け足ぎみで個人的には共感する前に読み終えてしまった感じだった。特に6,7p付近の離婚のいきさつが描かれるところはもう少しゆったり読ませても良い部分ではないかと思う。ネームと比較して読むとできるだけ読者視点の要望をかなえて修正しようという意気込みが見えると思う。今後もこの作者さんの作品は楽しみにしているのでぜひがんばって欲しい。

課題5ネーム ぼんち。さん「水の泡沫。」

水の泡沫。

 このお話は、個人的に姫がむしろ王子を海に引きずり込む、というアイデアに感心したお話だった。変に救いや慰めが描かれていないところが潔くていいと思う。個人的にはそれぞれのキャラクターのリアクションが、もう少し受け取りとその後の言動とがわけて描かれているとより情感が出てくるのではないかと思ったが、これは好みによるところが大きいのかもしれない。この作品は今回の課題の回答として個人的に感心したものの一つで、ぜひ完成稿を読みたい。

課題5完成稿 ぼんち。さん 水の泡沫。

 この作品は、完成しきらなかったということで、個人的に面白そうなお話だと思っていたこともあって残念だった。今回改めて書き込みされた部分やネームから修正された人魚姫の細かい表情の変化などを見ると、主人公の病んだところが個人的にはツボで、これはやっぱり読みたいなとなっている。この作品でということだけではなく、こういった明暗の反転があるオドロオドロしいお話はまたどこかで読ませてもらえたらうれしい。今後も楽しみにしている。

課題6ネーム ぼんち。さん「バレちゃう。

 このお話は、これはこれで成立しているお話だと思う。ただ、話の規模が少しこじんまりとしていると思った。どこかアイデアが煮詰まっている印象もうけたがどうだったのだろう。個人的には、序盤のセックスのフリと後半の膀胱炎のオチがちょっと話がズレているようにも思った。がおそらくそれは細かい話で、男性読者的には少し触れずらい内容だというのが正直な感想かもしれない。

課題6完成稿 ぼんち。さん「バレちゃう。

 このマンガはネームのときに比べてわかりやすく、話の起伏があって読みやすかった。ただ、本当に個人的な話としては、女性のセックスの話題から始まっているのでその点の入りづらさは感じる。とはいえそれはわたしが男性なので仕方ないと思う。一点気になったのはモノローグで基本的にリアクションが示されているところ。キャラクターの受け取りがモノローグで示されるとキャラクターの主観に付き合う形になって、どうしても次の展開を追うことが重くなっていくと思った。このマンガでも15pのやりとりなどがなっているように、キャラクター同士のやりとりによって心情が示されるとお話に共感できるマンガになっていくのではないかと思う。

課題7ネーム ぼんち。さん「君が。

 このお話は素朴なようで少し不穏なようで、というバランスが面白い作品だと思った。最初は単に田中がやさしい話かと思って読んでいたが、何度か読んでみて田中は本当に単にいいやつなのか…?と少し不安になってくるのが面白い。個人的にはここからさらにいい話か不穏な話かのどちらかに振り切ってもらえたらお話としてキャッチしやすいようにも思う。ただ、そう思うのはわたしがこの話の主題がうまく読めていないということなのかもしれない。

課題8 ぼんち。さん「シちゃった。改稿

 このマンガは改めて読んでこれはいいマンガだなと思った。主人公の女の子がかわいい。元のマンガと見比べると、絵がやわらかくなっていて主人公の女の子の感情に自然に入っていけるように感じる。また個人的に、構図やコマ割りだけでなく一つ一つの絵の力や説得力がマンガにとって大事なんだと思わされた。それだけよい絵になっていると思う。この方向性で問題ない変更の加え方だと思うので、今後もこの調子でがんばってほしい。

課題9(合同誌) ぼんち。 さん「片目、凝らして、歪。」

 この作品は父親から虐待されている女の子が男の子に暴力的な関係性を迫られるという、暴力を暴力で上書きするような内容になっている。なのだが、この作品では暴力の結果が匂わせや含みで話が終わっていて、男の子から暴力を受ける結果女の子がどこへ至るのかがあまりわからないと思った。暴力の上書きの構図が持っている魅力みたいなものがもう少し具体的に伝えられるとうれしいように思う。こういう感想は過激なのかもしれないが。

課題10ネーム ぼんち。さん「忘れねぇからな。

 この作品は感想が難しい。内容に対してベタに「きっとつらかったんだな」という感想を持つ一方、「(事情を知らない読者として)本当にそう安直に共感していい内容なのだろうか」と、受け取りが安定しない印象を受けた。内容的に踏み込んで考えてみようと思ったのだが、それが難しいような感想を持っている。赤の他人があまり立ち入ってはいけないことがなにか描かれていると感じたのかもしれない。

課題10完成稿 ぼんち。さん「忘れねぇからな。

 短いながら読み応えを感じるマンガだった。ネームの段階ではどのくらい客観的に描かれるのか想像がつかなかったのだが、完成したものを読むと思っていたよりも客観的な描き方で読みやすい。個人的に秤が1階と2階で結果が変わってしまうことに意味不明な理屈をつけられるエピソードが印象的。実際にこういわれたら自分もあきれてしまうと思いつつ、ただ1階では正確に測れるという上司の認識自体はおかしくないようにも思え、人間関係の亀裂は難しいなあ、などと内容についてあれこれ考えてしまった。ただ一応留意しておくと、そもそもこういうお話が作られているということは、背景にはもっとなにかここでは描けないようなエピソードがあったのだろうとも思う。単純化されている内容なはずだが、それでも固有のエピソードは見ていていろいろなことを想像させられるのだと、奥深さを感じた作品だった。

最終課題ネーム ぼんち。さん「男にしたげる。」 

 企画として面白い作品で、女の子が実は…という部分は読んでいてびっくりした。ただ、もっと早くその情報に出てきてほしいとは感じた。まだこのネームだと設定の開示で終わっているように思えるが、この二人のすれ違いエピソードを読んでみたい。個人的には手直しがあるともっと面白くなりそうな内容だと思う。ぜひがんばってほしい。

最終課題完成稿 ぼんち。さん「めるとDT(ダウンタイム)」 

 企画がちゃんとしているお話で、この短話に限らずさらにいろいろなエピソードが想像できるお話だった。このように構想が練られていて説明が丁寧なら、それだけでも十分読み応えがあるのだなと感心しながら読んだ。ただ、このお話単体で読むと設定の説明に終始していて、ひとつのお話としてのうまみみたいなものは感じづらいとも思った。個人的には、「整形してまで元カレに再開するってどういうヤツ?」と読みながら突飛な設定を理解することで体力を使ってしまった感じだった。だが、よくかけている内容なので人によって感じ方が違うと思う。ぜひうまくいって、連載でまた続きが読めるのを楽しみにしている。

 

ひむかさん

課題1ネーム ひむかさん「はじめの第一歩」

はじめの第一歩 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは、アスミが都合がよすぎるキャラクターになっていないところに好感を持つ内容だった。アスミがかわいいことが主人公のキャラクターを引き立たせてくれているように思える。ただ、主人公が新しいことに挑戦するこのお話しに対して、主人公が余命いくばくかであるという設定はどう必要だったのか、と不思議にも思う。一見して設定と話の内容に落差があるように感じた。ただ、これは単に私がわかっていないだけかもしれない。ひょっとするとここはなにか特別な思いなどがあったのだろうか。

課題1完成稿 ひむかさん「はじめの第一歩」

はじめの第一歩 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これは爽やかな作品だった。全体としてまとまりがあった。特に7pでアスミが年老いた主人公の手を導く図像が感動的だ。おもわず”読んでよかったなあ”という感想が漏れる良作だと思う。個人的に、冒頭の屋上のシーンが意外とシリアスではなくコミカルに描かれているところも好感を持つポイントだった。

課題2ネーム ひむかさん「くるっと回ってまた一緒」

くるっと回ってまた一緒 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話は、「おそろい」がテーマなことがはっきりしていて内容的についていきやすかった。また10代の話としてtiktokやインスタなどの小物を登場させているところがいい。ただ一方、この話が誰と誰の話が中心になっている話なのかはもう少しわかりやすいといいのだろうと思った。一見したところ、主人公の美香と志穂のケンカを中心に進んでいるストーリーだと思ったのだが、そのニュアンスは少しわかりづらいように思う。(もしかしたらネームの段階だからそう感じただけとか、そもそもそういうケンカが主な内容ではない、ということだったりするのかもしれない。)個人的に、描かれていることはよいと思ったので、どういう完成形を想像して描かれた話なのかが知りたいという意味でも、完成稿が読んでみたい作品だと思う。

課題3ネーム ひむかさん「not princess but hero」

not princess but hero | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話は王道な展開を踏んでいる話でよかった。ただ、これは自分が男性読者だからかもしれないが、8pでウルスラが”おうじさまじゃない”と気づく場面付近は、相手が結局はかっこよく描かれるためか場面の意味がよくわからなかった。最終的におじ様に連れ去られてしまうのも、姉妹たちへの別れは必要ないのだろうかなどと、ちょっとうまく入っていけない感じが個人的にはある。ただ、たぶんこれは自分が読めていないだけだと思う。きれいな雰囲気のお話で、こういう読者のして欲しいことをしてくれるお話はよいと思う。今後もがんばって欲しい。

課題4ネーム ひむかさん「体温の形」

体温の形

 この作品は話としての構図がきれいで読みやすい作品だった。特にフリの「対象を好きになること」がオチの「一番簡単な上達法は」にかかっていて、ここはうまい。一方、レベルの高い作品だと思うからこそ感じることだが、ヒロインの先輩のキャラクターは脚本の都合に従いすぎているようにも感じた。なにかキャラクターとしての軸が一本感じられるとよいかと思った。ただ、念を押して言うとこの作品は非常にきれいでよい作品だと思う。十分楽しめるものにはなっていると思うので、ぜひ完成に向けてがんばって欲しい。

課題4完成稿 ひむかさん「体温の形」

体温の形

 この作品は内容も作画もきれいでうまくかみ合っていて大変よく出来ていると思う。12,13p付近のネームから新しく追加されたシーンもマンガらしい勢いを感じさせる演出だと思った。一方、よくできているからこそ気になると思ったのはオチ付近の14pで先輩が抱きしめる部分で、先輩が(おそらく)主人公を特別に思う理由がこの内容だけだとよくわからなかった。脚本にキャラクターの動きが従ってしまっている場面のようにも見えたが、わたしがなにか作品を読み取れていない部分があるのかもしれない。これだけ整った作品が作れていたら言うことないと思う。今後もぜひがんばって欲しい。

課題5ネーム ひむかさん「ハッピーエンドの向こう側」

ハッピーエンドの向こう側

 このお話は美しい話でなんとなくやろうとしていることは伝わってくると思った。ただ、詳細な話の流れが少しわかりづらかった。特に魔女を殺したのち人魚となった王子と再会する9pから11pの部分の流れが、短いページの中では情報量が多い感じがしただろうか。とはいえ、今までの作品に引き続き話にも絵柄にも華がある作風で個人的には楽しく読ませてもらっている。ぜひ完成稿がんばって欲しい。

課題6ネーム ひむかさん「夏の夜の夢

 このお話はそれぞれの人のフェチのようなところに投げかけるタイプのお話ではないかと思って読んだ。個人的にはきれいだと思ったものの、もうワンアイデア展開が欲しい感じがしただろうか。ただ、この手の作品は読者によって当たり外れが激しいと思うので、あまり気にしないで欲しい。信じている内容をしっかり表現してもらえたらそれが良いと思う。

課題7ネーム ひむかさん「ずっと前から

 この話は、決別の居心地の悪さみたいなものが表現されているお話だと思った。なにを選択してもうまくいかない後味の悪い感じに共感を覚えた。こういう暗いものを暗いままに表現するやり方は正直な感じがしていいと思う。画面がはっきりするとまた印象が良い方向に変わりそうに思え、この作品はまた完成したものを読んで考えてみたい。

課題9(合同誌) ひむか さん「レンズとまたたき」

 個人的に好き、という作品。好きのパワーで最後までめくっている節があってあまりちゃんと読めている自信がないが、途中で離れ離れになった二人が最後はくっつくところがぐっとくるポイントだと思う。(あと、家での男が髪を下ろしてやたら色っぽいのもなにかのツボを抑えている感じがする。)ハッピーエンドをしっかり演出してくれるとやはりうれしい。
 ただ実をいうと、会社で出会った二人が最後は家で再開するところは「あれ、なんでこの女、男の家がわかったんだ、こわっ」と思った。そしてメガネについても考えると「これは果たしてメガネである必要はあったのだろうか」という気も少ししてくる。うーん、しかし好きなタイプのお話で、あまり深く考えないほうが精神衛生上よろしい感じがする。

課題10ネーム ひむかさん「はろー!わーるど

 この作品はびっくりした。最初は少しだけ実写を取り入れただけかと思ったのだが、実際にはほぼ全ページに実写があってこの徹底ぶりはすごい。実写部分の構図がよくリズム感があるマンガだと思う。この作者さんの能力が単なるマンガ以上になにか発揮されている作品に思える。ただ、個人的にオチは投げっぱなしに感じる。そこは惜しい。

最終課題ネーム ひむかさん「プリンセスを探して」 

 女性にとっての女性のやっかいさを描くテーマが意欲的だと思った。あまり内容はちゃんと読めているとは思えていないのだがなんだか気になる。ただ一方、主人公の問題解決が自己解決しているせいか、話の内容は入ってきづらい。いいテーマだと思うのだが、取り扱いが難しいテーマなのだろうと思った。冒頭が3人キャラクターが登場してわかりづらかったりするので、なんらか組み立ての部分に手をつけたほうがいいのだとは思う。こういう内容は個人的に応援したい。ぜひがんばって完成してほしい。

最終課題完成稿 ひむかさん「プリンセスを探して」 

 実はこの作品は、個人的にはネームと完成稿でかなり印象が変わった作品で、端的に言うととてもよかった。ネームの段階では、周りに気をとられて自分で判断ができない状況の主人公がそのまま終わってしまっていると感じていたのだが、完成稿で変更されたお話の終わりの主人公の考えたファッションショーのシーンがすこぶるよくて印象がガラッと変わった。お話のまとめ方しだいでこんなにも内容が違って見えるのだと驚いている。
 このファッションショーの無言の演出は、白雪を説得するには言葉では無理だろうと思わせる前半のフリと、かぐやの本当の思いが他人への否定ではなく自分の解放にあったことにうまくかみ合っている。個人的には、なるほど、この二人は直接の言い合いではないコミュニケーションであれば和解が可能だったのだ、というように結論を読めた内容で、回答のしかたに感心した。作画的な良さと内容の説得力がマッチしている内容で非常に気持ちのよいところがある。ぜひ多くの人に読まれてほしい。

 

きぬばりさん

課題2完成稿 きぬばりさん「電車で足を開く人」

電車で足を開く人 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト 

 この作品は最初読んだときはよくわかっていなかったのだが、改めてちゃんと読むと説得的な内容になっていてよく出来ている話だと思った。こういうバランスのよい作品はいいと思う。とはいえ、おそらくこれで完成というものではないと思うので、どうしてもネームとしてはよいというニュアンスになってしまうのだが。ベタに内容的にも、なるほど頭の中がいっぱいになったときはちょっと冷静になるとよいんだな、とちょっと考えに整理をもらえたように感じる内容だった。

課題3ネーム きぬばりさん「本草狂!久佐の煎じ薬」

本草狂!久佐の煎じ薬 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は本格的な題材ですごかった。ただ、ちょっとお話としては詰め込んである印象も受ける。たとえば15pのキスシーンは画面としてはよいのだが、ストーリー的な必然性がもう少し欲しいかなと思う。とはいえ、こういうはっきりした専門分野がある作品はそれだけで読んでみようと思えてこれはよかった。今後もぜひがんばって欲しい。

課題3完成稿 きぬばりさん「本草狂!久佐の煎じ薬」

本草狂!久佐の煎じ薬

 この作品はネームに比べるとこちらのほうがすっきりしていてよくなっていると思う。ただ、スッキリして話の内容がクリアになったためか、冒頭で担ぎこまれるコロリの患者が特に手当てされないことはより気になってしまった。これはこうならなくてはいけない事情がなにかあったのかどうだったのだろう。とはいえ、最初の完成稿でこれだけ絵的にもしっかりしているのはたいへんすばらしいと思う。本草学を使ったこの本格的な内容は普通に気になるので、今後もぜひ読ませてもらいたい。

課題4ネーム きぬばりさん「好きは上から、降ってくる」

好きは上から、降ってくる

 このお話はキャラクターがよく描けていて、やりとりの小気味よさもあってよかった。ただ、お話としては導入的で、この内容ならもう少し先のエピソードもページ数を増やして読みたいと思った。ただこれだけ描けていれば一読者としては安心感がある。非常によい作風だと思うのでぜひ完成目指してがんばって欲しい。

課題4完成稿 きぬばりさん「好きは突然に」

好きは突然に。

 このマンガは面白かった。ネームとは打って変わってBLを絡めた勘違いのくだらない話になっていて、ネームのものもよかったが、個人的にはこちらのほうが面白くてよかった。一方読みづらいところもあり、ダスティに話しかける蟹沢と主人公に話しかける友達とは最初同じ人物だと思ってしまった。こういうキャラクターが複数登場する場面はわかりづらくなりがちなので気をつけると良いかもしれない。とはいえ、このマンガはちゃんと読み手を楽しませてくれる魅力のあるマンガだった。

課題5ネーム きぬばりさん「人見知り人魚」

人見知り人魚

 このネームは1pでクスッとできる内容でよくまとまっていると思う。コメディ寄りの内容なので、もしかしたらさらにそちらに振ると面白いのかもしれない。絵柄と内容とのギャップがあるところがうまく出来ていると思う。

課題6ネーム きぬばりさん「ナイトパック

 このお話はなんだか展開が気になって読まされてしまった。ゾンビものだとは予想外だったが、ネカフェの人たちがゾンビという設定は、なんとなく想像力としてわかるような気がする。個人的にはお茶の効能に気がつくオチはなにかほかの別の形があるように思ったのだが、どちらかというとテクニック的な話だと思うのでそんなに重要なことではないように思う。このお話は魅力があると思うので、ぜひ完成稿が読みたい。

課題7ネーム きぬばりさん「ひとに会うためのバッテリー」 

 このお話は世界観の作り方がうまいお話だと思った。8pで猫の姿になった主人公が普通に喜んでいるところが爽快感があるいいシーンだと思う。動物の作画のカロリーは高そうだが、完成稿をぜひ読みたい作品だ。

課題8 はやしなおとさん人見知り人魚

 この作品は内容もちょうどよいくらいのもので、絵もとくに2pの目に力があってよかった。なんだか読みやすいというか、ここを読めばいいんだな、とわかる表現だと思う。ただ細かい話だとは思うが、画面が白いこともあいまって1pと2pで線が違っていることはどういう意図だろうかとは気になった。これはまだ未完という感じなのだろうか。とはいえ、これはこれでよいマンガだと思う。

課題9(合同誌) はやしなおと さん「マリとハンナの外回り」

 このお話は、メガネ周りの流れにうまくついていけなかったかな、という印象が先立っている。ドラえもんをもじった作中作が出てくるが、メガネにまつわるリアリティラインと作中作とのそれがあまりかみ合わないように感じてしまった。お話の出だしがSFで始まっているところはなかなか期待が膨らむと思ったのだが。こういう設定のかみ合いのよしあしは最初のアイデアのキレで決まってしまうところがあるので、当たり外れがはっきり出てしまうんだなと思った。

課題10ネーム はやしなおとさん(タイトルなし)

 このネームは疾走感があると思った。おもちゃにしてしまう超能力が色々想像が膨らんでなかなかよいと思った。ただ、終わりきっていないようなので、全体としてどういうものなのかはよくわからない。なにがどうなるお話だったのだろう。

最終課題ネーム はやしなおとさん日本とドイツのモノレール乗り比べてみた」 

 おしゃれな内容だと思った。あまり自分では思いつきそうにないテーマだ。ただ、ちょっと駆け足だとは思った。4,5ページは主人公の言っていることが半分も理解できていない。それでお話が終わってしまうのでもったいないなと。知識欲を満たす内容だと思うので、少し重くなってもいいから教訓パートをじっくり読んでみたいかなと思う。

最終課題完成稿 はやしなおとさん日本とドイツのモノレール乗り比べてみた」 

 作画がラフになってしまったのは残念だったが、内容的にはネームのときに比べてまとまっていて読み応えがあった。流れのキレのよさがあって、特に姉妹鉄道なことに疑問を持ってからたった3コマでドイツまで行く流れはやはり読んでいて気持ちがいい。この教室の作品ではあまり完成したものが読むことができなかったが、この作品に限らず、どこかでまた完成したものが読めたらうれしい。

 

ほりい泉さん

課題1ネーム ほりい泉さん「あなたの押し売ります」

あなたの推し売ります | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは、14pの「あなたの一番の推しはあなたなのですから」というセリフが想像以上にグッとくる内容だと思った。個人的に、普段は”推し”という言葉に対する警戒感があって自分では使わないようにしているのだが、この作品の場合の「推し」の使い方だったらなんだかノれる感じがした。その意味で発見がある内容だった。とはいえ、ちょっと話があちこちに行っているところは追うのが大変で、その意味ではもう少し要素を絞ってもらえると嬉しいとも思う。(このガチャガチャした感じがよいともおもうのだが。)面白くよませてもらった作品なので今後もこの作者の方の作品を読ませてもらいたい。

課題2ネーム ほりい泉さん「捨て」

捨て | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 個人的にこの作品は内容が深い思った作品だった。けっこう感動してしまっているのでバランスのとれた感想を書くのが難しいが、自分を捨てた母親を擬似的に捨てることを通じて、捨てようと思っても捨てられないものの存在に主人公が気づき受け入れる内容になっていて、これは奥行きがあるお話だ思う。描き方については、特に「~で」でつながるところは、これはこれで成立していると思ったが、マンガ的にはありなのだろうか。媒体によったりするのかもしれない。文章の書き方では、基本的に「~で」でつながる文は「だ」「である」で区切ったほうが読み手に親切だとされるが、このマンガの場合は全体をワンカットで見せる演出として機能している、という言い方ができる気がする。この内容が可能になる描き方を見つけている、という意味でこの描き方でよいと個人的に思うのだが、どうなのだろう。

課題2完成稿 ほりい泉さん「捨て」

捨て | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はたいへんよかった。完成稿を読んで、ネームの段階では自分が読み飛ばしていたことに気づいたポイントもいくつかあり(家族の写真を最初は丸めただけで捨てていなかったことや、最後の場面で主人公が泣いているところなど)、絵的な説得力が加えられて内容がわかりやすくなっていると思った。
 特に、家族との思い出がある川だからこそ母親を捨てるのは川となっているところと、物語の最後に焦点が当たる花は母親との思い出が花をめぐるものだったことに対応しているところがとてもきれいで、こういうきれいな構図はなかなか見られないと思う。欲を言うなら、きれいな構図があってもあまり説明はされないので、なにか強調されても良い部分ではないかとも思った。とはいえ、人生初完成稿とのことで、最初の作品としては大変すばらしい作品だと思う。

課題4ネーム ほりい泉さん「Your words are」

Your words are

 この話は、絵柄もきれいで途中で展開が二転三転していて、よくいえば読んでいて飽きない話だと思った。途中からヒロインの茉莉花のキャラクターが崩れていって、最終的に立場が逆転するところが面白い。ただ、ネガティブにいうと展開がどんどん変わっていくので読んでいて着いていくのが少し大変だった。このお話は最終的に二人の様子にホッとできる三人称的なオチになっているところがよいと思うが、3pまでのフリは一人称的で、オチとフリの人称があまり対応していないところが個人的にはわかりづらく感じる。内容的には面白いと思うので、組み換えや整理で読みやすくなるタイプの作品ではないかと思うが、どうだろう。

課題5ネーム ほりい泉さん「GAME」

GAME

 この話は面白く読んだ。「人魚姫」と「ハンターハンター」の二重のパロディのように思ったが、クライマックスの解決の部分はオリジナティがあって普通に良い話だった。特にこの15pの主人公の語り部分は一読者的に達成感を感じる部分だった。一方、全編通して文字情報が多いところは少し気になる。メリハリがついていればいいと思うのだが、特に最後の16pはセリフが少ないと余韻が残って良いのではないかと思うがどうだろう。

課題5完成稿 ほりい泉さん GAME

 このマンガは力強い作品だと思った。絵の書き込みの力強さに驚いたのだが、仮に同じ内容で同じ完成図を想定していたとしても、これだけ一つ一つのキャラクターの表情にこだわったものは中々作れないのではないだろうか。一方、改めて冷静に読んでみて少し気になったのは冒頭2,3pの情報の出し方で、なんとなく読んでいるとこのお話のルールの具体的な内容をスルーしてしまうように思った。特に2p2コマ目は少し意味が弱いコマになっていると思う。後半になるにつれてよいところがわかってくるお話だと思うが、後半が丁寧に描かれているだけに出だしがわかりづらいことはもったいないように感じた。
 ただ、とはいったものの個人的には細かい部分はあまり気になっておらず、なにかすごくエネルギーを使って描かれているぞ、という感覚にひきつけられて実際には読んだ。なかなか出会うことのないマンガを読ませてもらってうれしい気持ちが大きい。

課題7ネーム ほりい泉さん「レンズのむこう

 このお話はうさぎくんの病気によって、主人公もうさぎくんもより人間らしくなっていくところが切ないお話だと思った。人の優しさとつらさが関係していることを感じさせる内容だと思う。一方、個人的には、メガネの受け渡しはもう少しなにかエピソード仕立てになっていてもいいと思った。たとえば、死ぬ間際に最後のうさぎくんの優しさとしてメガネがプレゼントされる、とかくらい優しい(ある種あざとい)落とし方でもこの話の場合、持ち味や内容のよさが崩れることはないと思う。なにか人のあり様について感じさせる力のある内容だと思うので、ぜひまた完成稿を読んでみたい。

課題7完成稿 ほりい泉さん「レンズのむこう

 このマンガは一読してネコヤくんとウサミくんのデザインに気合が入っていておっと思った。かちっとした絵が話の重さに説得力を持たせているように感じる。一方、よくかけているので気になったが、ウサミくんが死んだことで主人公が具体的にどんな変化へと至ったかは少しわかりづらかった。読む限り、ウサミくんを見取る中で主人公は夢や前向きさをもらったのだとは思うのだが、13pでウサミくんが亡くなった悲しみからオチで主人公が夢を目指すに至るようになるプロセスは省略されているので、そこは説明があってもよい部分ではないかと思った。ただ、描き方的にあの行間を汲み取ってほしい部分として描かれているとは思うので、単にわかりやすくすればよいというわけではないとも。全体としてはキャラクターにどんなことをさせたいのかが見える描き方で気合も入っていてとてもよいと思う。今後もまたこの作者のマンガは読ませてもらいたい。

課題9(合同誌) ほりい泉さん「GAME」

 このお話も再録でコメントが難しいが、よい作品だと思うのだけど改めて読むとちょっと忙しい感じはすると思った。だけど、なにか気持ちが乗っている感じのするいい作品だと思う。(もしかしたら前もこんなコメントをしたのかもしれない。)ただ、個人的には、短くてもいいからほりいさんの新作を読みたかった気持ちが強いかな。

課題10ネーム ほりい泉さん「ループする異世界

 この作品は普通のマンガとは違うと思うので感想が難しい。悪いものではないと思うが、今までにないものがきてうまく反応できていない、というのが率直な感想かもしれない。うーん感想。ひとまず自分にはゲーム自体は難しくてクリアできなかったが、でも楽しかった。「主人公はあなたです」的な表現(メタ的な表現)はちょっと食傷気味だと思ったが手厳し過ぎるだろうか。

 

chiゲ鍋さん

課題1ネーム chiゲ鍋さん「嘘のつき方」

嘘のつき方 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは設定の仰々しさに反して主人公が意外と抜けていて、そこが気が抜けて面白かった。例えば”学生生活で一番うれしかったこと”に”回答を用意していない”部分など、準備してたんじゃなかったのかい、とツッコんでしまった。作風的には、なんだか毒がありそうな描き方でもあり、しかし、ちょっと天然的な笑いがあるような内容でもあり、微妙なバランス感で作られているように映った。一方、オチはもう少しなにかあるとよいのかなと思う。個人的にはどういうものとして読んでほしいのかちょっとよくわからなくなったオチだった。

 

あい乙いなびこさん

課題1ネーム あい乙いなびこさん「図に乗る息子」

図に乗る息子 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、この作品を描いた人が普段どういう目線で物事を見ているのかが感じられる作品だった。おそらく、現実の作者の子供時代のことを当時のお母さんの目線を借りて(現実とフィクションを交えながら)描いている内容だと思うのだが、こういう客観的な距離を持って描いてある作品は、読んでよかったという気持ちになる。一方、内容はこれで全く問題ないと思うが、例えば3pと4pでの息子の顔がけっこう変化しているところなどは読みづらく、読むときに頑張って読んでしまったところなので、こういうところを丁寧にできるとよいのではないかと思った。このネームはよい内容だと思うので、ぜひ完成稿を読ませてもらいたい。

課題1完成稿 あい乙いなびこさん「図に乗る息子」

図に乗る息子 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームの引き続き内容のよさを感じた。やはりお母さんの視点で子どもの幼さが描かれているところがよかった。ただストーリー全体については、こういう筋の通っていないことを息子がしたら「今日も息子は図に乗っています」とか言っていないで、母親として注意するべきなのではないか、というような普通の感想も持った(単にわたしが厳しすぎるだけかも?)。とはいえそれもほとんど冗談みたいな感想で、服足くんと主人公の勘違いのやりとりがそのままスルーされるところなど等身大の子どもが描かれている感じがあり、読んでいてなんだかくすっとなるいい作品だった。

課題2ネーム あい乙いなびこさん「ポルノ映画の初野(ういの)くん」

ポルノ映画の初野(ういの)くん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、素朴なことをちゃんと描こうとしている良い作品だと思った。特に、現場の監督や女優が急に変に意地悪なことをいったりしはじめず、普通にコミュニケーションをとるところが個人的には好感を持った。また一方、ポルノ映画の製作に関わることが割りと無前提に否定的なこととして話が進行している感じがあり、そこはもう少しなにか理由付けやバランスをとる反対側の意見みたいなものが登場するとよいかと思った。たとえば経験が豊富であろう監督の意見はどうなのだろう、みたいなことは読んでいて気になった。もう少しそこに納得感がある描き方になるとグッとよい内容になるのではないかと思う。

課題2完成稿 あい乙いなびこさん「ポルノ映画の乙女くん」

ポルノ映画の初野(ういの)くん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、ネームの段階から絵的にグッとレベルが上がっていてびっくりした作品だった。内容のよさが引き立つ気合の入った描き方だと思う。ただ一部、わかりづらいところもあり、特に12pから13pへの内容は主人公がyoutubeを始める動機が唐突でよくわからなかった部分だった。ほかにも、なにか微妙に伝わってきていないようにも感じる部分がある。ただ、これはわたしがうまく読めていないだけだとも思う。がんばって描いてあることは伝わってくるので今後も応援したいと思う作品だった。

課題3ネーム あい乙いなびこさん「お酢

お酢 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はよくわからなかった。せめて前提としての二人の関係が明示されているとか、この二人に最終的にどういう変化があってほしい内容なのかなどがわかるとよいと思うのだが。なんとなくシュールなことがしたいのかとも思うがそれもちょっとわからない。

課題3完成稿 あい乙いなびこさん「お酢

お酢

 このマンガはいいんじゃないかと思う。間や演出で楽しませるタイプのマンガなので、この内容ならもう少し画力が求められるのではないかとは思うが、夫婦の微妙な距離感への味わいがあって面白かった。個人的にはネームの段階では全然内容がわからなかったので、あそこからこれだけわかるものになるということにも驚いた。
 一方、個人的にどちらが主人公かがわかりづらいことは少し気になった。気にしすぎなのかもしれないが、パッと画面を見ると常にコマの右手にいて左を向いているのが奥さんなので奥さんを主人公においていると思えるのだが、人物の描き方的には奥さんをミステリアスな人として描いて男性を普通の人として置いているので、これはどちらかというと男性から見る視点で描かれていると思う。そこが少しぶつかっていてわかりづらく感じたのではないか、と思っている。
 ただそのことが気になるのも、十分わかるように面白く描けているからこそだと思う。今までのこの作者さんのマンガの中で一番違和感なく楽しめたマンガだった。この調子でがんばってもらえたらいいと思う。

課題4ネーム あい乙いなびこさん「公園であの子と」

公園であの子と

 この作品は、お話の設定やマンガ的なつくりとしてはよく出来ていると思った。構図の工夫やコマわりが堂に入っている感じがする。ただ一方、細かい描写で少しづつわかりづらかったり気になる部分があった。たとえば1p2pの流れで主人公が少女に声をかけた理由がよくわからなかった。また、犬伏くんが目つきが悪いだけでヤンキー扱いされていてそれ以上説明がないのはいかがなものか、などとも思う。とはいえ、前の作品と比べても画面的にだんだんマンガっぽいものに近づいていることを感じ、そこがに感心した。完成を目指せる内容だと思うので、ぜひがんばって欲しい。

課題4完成稿 あい乙いなびこさん「公園であの子と」

公園であの子と

 この作品は話の設定や演出はよくできていると思う。ただ、個人的に話の主題が少しわかりづらく感じた話だった。友達を作ることが目標とされている割に主人公が受け身なところがわかりづらさにつながっているように思う。特にこういった主人公の葛藤を題材にするストーリーの場合、もう少し主人公が自分の身を切るというか、なにかベットするような場面があると納得感が増すのではないかと個人的には思う。がんばって作っていることは伝わってくるので、次回もぜひがんばって欲しい。

課題5ネーム あい乙いなびこさん「ナナ、人間を好きになる」

ナナ、人間を好きになる

 この作品は、申し訳ないがよくわからなかった。どういう感じを伝えたい内容だったのだろう。描かれるものが一般的に見ておかしな内容で全然良いのだが(だから人魚が子どもにおしっこをかけられて好きになる、でも全然よいのだが)、ただ、そのためにはその内容がどのようにキャッチされるものなのかの説明が必要になると思う。アピール文に「子供がはしゃぐ空間なら、僕でも楽しめるだろう」という一文があって、そこから理解の補助線は引けるが、その部分をマンガの中でうまく描いて欲しいと思う。

課題5完成稿 あい乙いなびこさん ナナ、人間を好きになる

 このお話は、ネームと比べて情報がわかりやすく、内容的にもほほえましい内容で和やかに読んだ。ただ、ネームから引き続き内容のわからなさはあり、やはりおしっこをかけられてよかったねとはならないというか、そうなる場合もあるとは思うが、なにか説明が必要なことのように思う。とはいえ、完成を優先された結果の形のようなので仕方なかったのかな、と言う感想だ。

課題6ネーム あい乙いなびこさん「城の中の浦島太郎

 このお話は全編通して読むと何を表現しようとしているのかはわかる内容だと思う。浦島太郎の解釈のようなことをしようとしていることは個人的に理解できると思った。ただ、特に最初の7p付近までの流れはほとんど初読では意味内容がわからなかった。そのせいか全体の印象がぼんやりしており、現時点であまりこの作品でやろうとしていることがつかめていない、といった感想だ。

課題7ネーム あい乙いなびこさん「背徳感

 このマンガは悪くないと思った。ひとつのマンガとして主張がある内容だと思う。短い分絵が大切だと思うのでぜひがんばってほしい。またあわよくば、ここからさらに4コマがいくつか続くとストーリー性が生まれて楽しめるかなと思う。たとえば、この主人公の周りにどんな人がいるのかとか、学生なのか社会人なのかなど、なにか情報が入ってくるとまた楽しみ方が生まれるように思う。

課題7完成稿 あい乙いなびこさん「背徳感

 このマンガはこれはこれでよいとは思う。内容的には悪くない内容だと思った。ただ個人的には、もう少し太い線だと印象に残りやすいのではないかと思った。マンガは絵なのでぜひそこはがんばってほしい。応援している。

課題9(合同誌) あい乙いなびこさん「一万円札」

 この4コマは豆知識コーナーみたいになっていて悪くないと思った。ただ、ちょっとこの本の中でどういう位置づけなのかわかりにくいかも?一冊の本の中の小休止みたいに何個か挟まるとクセになってくるのかもしれない。

課題10ネーム あい乙いなびこさん「悪魔

 この4コマ漫画は、前回の課題作品と同じ感想になってしまうが、これはこれでいいと思うがこれだけだとあまり意図が汲み取れなかった。なにか表現したい内容があることは感じるのだが具体的にどういうものなのかはあまりわかっていない。

課題10完成稿 あい乙いなびこさん「悪魔

 これはこれでいいのではないかと思うが、これだけ短いならもっと絵としての精度がほしいとも思う。(たとえば、最後のコマのキャラクターが最初のコマのどの人物なのかは構図で理解できるが、キャラの描き分けでも説明がほしいと思った。)ただ、4コママンガの形式自体はよみやすいのでこの調子で作ってもらえたらと思う。

最終課題ネーム あい乙いなびこさん怪物」 

 勢いがある内容で面白いと思った。ただ、前作もそうだったが、世界観はよくわからない。悪魔だとか地獄だとかに設定的なもの以上の意味がもう少しほしいだろうか。短い中でまとめるのは大変だとは思うが。

最終課題完成稿 あい乙いなびこさん「怪物」 

 このお話は怪物のデザインがいいと思った、というのが一番の感想だ。書き込みが増えてディティールが加わった結果、世界観のようなものが想像できるようになったと思う。個人的には、このお話は壮大に何も起こらないお話だが、本当はなにか起こってくれたほうがうれしいな、とも思う。とはいえ1ページマンガとしてはこれはこれでいいのではないだろうか。

 

かわじろうさん

課題3ネーム かわじろうさん「ロボ」

ロボ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話はうまいやり方をしているとは思ったし、個人的にもこの作者さんの作品が読めてうれしいとは思ったのだが、ただ、ちょっと内容が中途半端な印象を受けてしまった。おじさんが「人間の気持ちがわかるようにしてやろうか?」と声をかけているのに実際にはそれはまやかしだった、という話になっていてそのあたりがうまく飲み込めていない。個人的には魔法は魔法のまま種明かしをしないでいてほしかったと思ったのだが、それも好みの問題なのかもしれない。良し悪しは置いておくとしても、どうしてこういう種明かしをして終わる形のオチになったのだろうと気になる作品だった。

 

やながわけんじさん

課題1ネーム やながわけんじさん「土日のふーん」

土日のふーん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これはいい作品だった。女の子とのやりとりがおもいのほか少ないところに主人公の想像力が働くつくりになっていて、間の演出がいい。一応、少し気になったところを言えば最初に「ふーん」と話しかけられるところで、自分だったらこの女の子に声をかけられただけでうれしいのでは?とは思った。なにか主人公の気がささくれていたとか、そういう事情を読ませる描写だったりするのだろうか。
 この作品はネームではわからない細かいニュアンスや小物・背景の入れ方が重要なように思う。単に作品がよさそうなので楽しみだというのもあるが、実際のペン入れが気になる作品で、今回の課題で完成したものを読んでみたい作品の一つだ。

課題1完成稿 やながわけんじさん「土日のふーん」

土日のふーん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話は普通に楽しかった。女の子との関係に最終的に話が向かうところが話の筋の通りがよいと思った。またネームの段階では、最初の「ふーん」のところで主人公が関係が「壊れた」とまで思う理由がいまいちピンと来ていなかったのだが、この完成稿の描写ではっきりわかってこれなら納得だと思った。(しかも、この方が女の子も魅力的に見えるから不思議だ。)個人的に、アピール分にある「この物語にとって重要なことは、変化した主人公の表情を描くことで、そこに自分で気づけていませんでした。」という一文がすばらしいと思った。この作品はマンガ作りにおける修正の見本になるような優れた作品だと思う。

課題2ネーム やながわけんじさん「トイレの片岡さん」

トイレの片岡さん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話は片岡さんの描き方がとてもよかった。片岡さんのガラガラの理由を追うミステリーのようなつくりになっていて納得感もある。個人的にもう十分面白い作品だと思うが、さらになにか工夫の余地があるとすれば、主人公が片岡さんに関わろうとする12pから14pの展開での主人公の気持ちがもっとわかるようになると、二人の関係性の変化が見えやすくなるのではないかと思った。ネームでは片岡さんに声をかけようと思った理由はわかるが、主人公が具体的になにを伝えようと思ったのかはちょっとわかりづらくなっているように思う。もしなにかさらに、というならそのあたりの工夫ができるのかなと思った。
 とはいえアピールに「トイレットペーパーを引っ張り出す理由が、他人に見せたくない悔し涙を拭くためだったらちょっと許せるかなと思ってストーリーを作りました。」とあるあたり話しの膨らませ方もうまく、演出もキャラクターもよくできている作品だと思う。

課題2完成稿 やながわけんじさん「トイレの片岡さん」

トイレの片岡さん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは読みやすく、マンガ的な描き方を感じる作品で読んでいて充実感がある作品だった。ただ、個人的にあまり読み取れていないところがあるように感じていて、とくにオチで主人公も泣いているところはどういう意味なのかがちょっとよくわからなかった。ただ、これはわたしがうまく読み取れていないのだと思う。主人公からの歩み寄りがある内容なので、片岡さんからもなにか主人公への返答があってもよいのではないか、とも思ったのだが、あまりそういう二人の関係を描く内容でもなかったりするのだろうか。

課題3ネーム やながわけんじさん「私立は友達じゃない」

私立は友達じゃない | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は悪くないと思うのだが、お話としてはもうちょっと女の子によりそった話にして欲しかった。14pの指をなめるシーンが画面的には映えるのだが、一方でヒロインがエロい必然性が弱いというか、わりと内容が良い話でかつ低年齢的な感性を使った内容なので、エロ要素を盛り上げに使うのはこの場合あまり合っていないような、と個人的には思った。ただ、ここはマンガが説得してくれればそれでよいとも思うので、完成してみないとなんともわからないのかもしれない。個人的にはこの二人にどういう関係に落ち着いて欲しいのか、もう少しわかる内容になるとよいのだと思う。

課題3完成稿 やながわけんじさん「私立は友達じゃない」

私立は友達じゃない

 このマンガはとてもよかった。等身大の中学生の生活の雰囲気みたいなものを感じさせる内容だと思う。特にネームから修正のあった14pの指をなめるシーンが、どういう意味かわかるシーンでよかった。こういう、ある意味で普通の場面を切り取った話を物語として読ませてもらえることが贅沢だと感じるマンガだった。

課題4ネーム やながわけんじさん「カレー牛乳」

カレー牛乳

 この作品は、なんだか読んでいて泣けてくるようだった。少し抜けている少女の不安な部分が見え隠れする中で物語が進行するからだと思うが、お父さんとの関係や学校での生活の安堵感にずしっと心が暖かくなっている。断続的に味わいがあるつくりで、今回の課題作品としてはこれ以上のものはないのではないだろうか。

課題5ネーム やながわけんじさん「リンゴ」

リンゴ

 このお話は、何もしゃべらない主人公が切なくて非常に良かった。今回の人魚姫の課題の回答として、こういった元々のキャラクターをうまく切り出してアイデアを膨らませるやり方はとても良い回答だと思った。10pや12pの姫の表情がどうなるのか楽しみで、完成稿でまた改めて読ませてもらいたい。

課題5完成稿 やながわけんじさん リンゴ

 このお話は今回完成稿を読めてうれしかった作品の一つだった。ネームの段階から切ない話だと思っていたが、完成したものを再び読んでなんて切ない話だと、(わたしにしては珍しく)内容に引き込まれるように読んだ。このマンガは特に5pまでの設定の出し方(主人公が声をだせないことと、そのせいで王子からも世界からも置いてけぼりを食らっていること)がうまいというか、絵的にも心地よく読めて非常に気持ちがよかった。今回の課題作品の中でもっとも集中して読むことだできたお話の一つだった。

課題6ネーム やながわけんじさん「煩悩

 このお話はくだらない内容で気が抜けた。こういうくだらないお話はたいへんよいと思う。一方、だからこそ主人公の性欲はもっとはっきり描いて欲しいとは思った。最後のシーンはたぶんヒロインのしぐさに勃起してトイレに自慰に向かったということだと思うが、これはわかりにくく、ここははっきりしてほしい、と個人的には思う。こういうわざとらしいくらいのマンガは面白いと思うので、完成稿が非常に楽しみだ。

課題7ネーム やながわけんじさん「たまご焼き

 この話は非常によかった。単にお話としてよいことを超えて、真に迫るところがあると思った。「死にたいって言うな!!」というセリフが、そこにいたる過程や着地の仕方を含めて絶妙だと思う。この主人公にとってお母さんにこういう死に方をされたことはある種の暴力を受け取らざるを得なかったという性格を孕んでいると思うのだが、川田さんへの「死にたいって言うな!!」という言葉を経由して暴力がなんらかの許しや慰めを得る、という内容だと思った。うまくいえないが、なぞや疑問そのものは解決しないまま、そうせざるを得ない人の様子として許されていくところに気持ちのよさや説得力があるお話ではないかと思う。

課題9(合同誌) やながわけんじさん「たまご焼き」

 このマンガは、ネームと比べて意外と印象が変わっているお話だと思ったが、改めて読んでも力作だと思う。いろいろなことを考える作品で簡単に要約したコメントが難しい。個人的に、もう少しいい話として描かれてもよいのではないかとも思ったのだが、むしろそうなっていないのはなぜだろう、ということを読んでいる側が考えさせられるお話だと思う。

最終課題ネーム やながわけんじさんオタクに優しいギャルの兄ちゃん」 

 これだけキャラクターをちゃんと描いている作品は珍しいと思った。いろんな部分でこの兄の気持ち悪い部分が登場していて関心しながら読んだ。一点、タイトルの「オタクに優しいギャル」要素は弱いと思ったが、細かい話なのだと思う。この作品は完成が今から楽しみだ。

最終課題完成稿 やながわけんじさん「オタクに優しいギャルの兄ちゃん」 

 このマンガは非常によくできているのだが、個人的にはこのふざけたような内容でこれだけ暗いしっとりとした雰囲気になったのが意外だった。これはこれでいいとは思うのだが、もう少しからっとした終わり方があったのではないか、というような勝手な感想も持っている。ネームの段階ではコメディ色が強い内容を想定していて予想が外れていることもあり、やや混乱中だ。
 とはいえその混乱を差し引いていうと、このマンガは演出が光っているマンガだと思う。自分が読む限りこのお話は、妹に異常な愛情を向けている兄が気持ち悪いだけかと思いきや、実は妹のほうも負けず劣らず異質な感情を兄に持っていて、そのことも含めて「キモい」と最後につぶやく、という内容だと思う。それを読者に知らせる演出が繊細でうまいと思った。個人的に、19pの鏡に映る妹の線が人間ならざるもののように見えるのが絶妙なバランスで、ホラーのようでもあり異界を見ているようでもあり、なかなかこういった表現は読めないと思った。
 ただ、混乱と上に書いたように、個人的に主人公の実存みたいなところに少し近づくしっとりした部分が個人的には読みのストレスになっていることは感じる。感想としてうまくまとまりきらない作品で、もう少し自分のコリをほぐしてから、もう一度改めて読んでみたい作品だ。

 

桐山さん

課題1ネーム 桐山さん「深夜徘徊」

深夜徘徊 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 個人的に、自分が学生時代にコロナのある生活を経験していないのでマスク生活をしている中高生の心理みたいなものが気になっていて、その意味で興味が少し近いように思えて、勝手にうれしかった作品だった。一個気になったところを言えば、個人的には12pの倉本さんの笑顔は8pからのマスクを外したシーンの続きで読みたいと思った。間にある10p11pの主人公の描写は自分が読むときは読み飛ばしてしまっていて、だったら女の子の図がポンポンとあったらうれしいなと。とはいえ個人的には好感を持った作品で、ジャンルがキャラものではっきりしているためか「自分の知ってる”マンガ”だ」と親近感をもった作品だった。

課題1完成稿 桐山さん「深夜徘徊」

深夜徘徊 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はぱっと見ていい作品だと思った。画面の良さやシュチュエーションの良さがあり、マンガっぽくて大変よい作品だと思う。またネームから継続して、コロナとマスクのことを高校生の生活の問題の一部として描いているところが個人的にはとてもよい。描き方が軽く、あまりシリアスにならないところがバランスが取れていてよいと思った。この作品は短い中でいろんな魅力が詰まっていて、読めば読むほど良いと感じる作品だった。

課題2ネーム 桐山さん「君とセックスしたい」

君とセックスがしたい | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話は、最初に読んだときはよくわからなかったのだが、時間をかけて読むとなかなか熱い話だと思うようになった。「上辺=きれいで気持ち悪くない」、「本当=きれいではないし気持ちが悪い」という図式をハッキリ提示した上で、気持ち悪くても”上辺”ではなく”本当”が良いという内容になっているところが熱い。そう思うと女の子の最後の「キモッ」というセリフも、気持ちが悪いという本音を伝えているように思えグッとくる。
 というように内容がよく練られていていい内容だと思ったのだが、本来的にはもう少しボリュームがある中で読みたい内容だとは思った。最初に読んだときによくわからない感じがあったのだが、たぶん、それぞれの場面で主人公が考えていることや起こっている現象がもう少しわかりやすくなっていればもっと理解が早かったと思う。とはいえ、とくにこのタイプのある種の思弁的なマンガの読み手としてはわたしは特に理解が遅いほうだと思うので、理解が遅れたのはあくまで一指標と思ってもらえるとよいと思う。このマンガのように、内容の分析がしっかり用意されているマンガはそれだけでよいと思う作品だった。

課題3ネーム 桐山さん「そこにAIはあるんか」

そこにAIはあるんか | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はAIへの問いとネットを介したリアルへの問いのフリとオチが二重にしっかりしていてよかった。個人的にはテーマになっているAIグラビアも女装男子も、それぞれ特に興味はないのだが、これだけしっかりしている構図があるとちゃんと面白く読める。とてもよくできた内容で言うことないと思うが、もしここからさらに工夫をというと、最初の3pがわりと読み手を選ぶ描写になっていると思うので、ここでなにかフックになる要素があると、不特定多数の人に読まれるものとしてはいいのかもしれない。この作品は個人的にも痛快で楽しく読ませてもらったので、ぜひ完成稿をがんばって欲しい。

課題3完成稿 桐山さん「そこにAIはあるんか」

そこにAIはあるんか

 この作品はネーム的にはよかったのだが完成せずということで残念。ただ、八丁堀さんのビジュアルが見られてうれしかった。男性の女装が妙にきれいな感じがよく出ていると思う。個人的にも楽しみにしていたネームだったので、今後機会があればぜひ完成させてもらえたらうれしい。

課題4ネーム 桐山さん「境界」

境界

 このマンガはよく出来ていると思う。4pのものとしては読み応えがあって、納得感がちゃんとあるマンガだと思った。ただ細かい話だが、3pから4pにかけてのめくりは、ちょっと最初に読んだときはなにがおきているかがわかりづらかった。3pで「コトン」の後に主人公が机の中で起きたことを予想しているところは、もう一歩手前で、そもそも不可解なことが起きたこと自体に対する疑問のリアクションが欲しい部分ではないかと思う。それと、4pのめくりの大ゴマはおそらくモノローグがないほうが迫力やリズムが生まれてよいのではないだろうか。とはいえ、これはよいネームだと思うので、ぜひがんばって完成させてほしい。

課題4完成稿 桐山さん「境界」

境界

 このマンガは言うことないと思う。ちゃんと怖いフリとオチで構図的にきれいだと思った。ただ個人的には3pまでであまりこのマンガ自体がホラーだと思わずに読んでいたので4pの怖い画面がちょっと唐突には映った。とはいえ細かい話で、十分良くできているマンガだと思う。

課題5ネーム 桐山さん「あの子に」

あの子に

 このお話はアイデアが突飛で面白かった。耳を切り取って飲んで欲しいと願うというアイデアは奇妙で、マンガ的な面白さを感じる。また、実は読唇術が出来るという設定もキャラクターや世界観の解像度を高めていてよい効果になっていると思う。一方、きさきと姫のキャラクターがどっちなのか読んでいると混合する部分があった。(おそらくビジュアルが良いほうが物語の中心人物だと感覚的に思い込んだため。)完成すれば気にならなくなる部分だとも思うが、個人的な願望としては人魚姫のほうがかわいくあってほしいかなとも思う。このお話はアイデアと構成がよくかみ合っていて、非常にマンガらしい面白さがあると思うので、ぜひ完成までがんばって欲しい。

課題5完成稿 桐山さん あの子に

 このお話は話の流れがスムーズでかつ突飛で面白い展開があり、マンガとしていうことないと思う。個人的にも内容的に楽しめたマンガだった。あえていうなら、セリフで場面がつながっているところは似た構図に映っており、少し単調に感じたとはいえるかもしれない。どこかで間や余白があると一呼吸置けて余韻が残るように思う。とはいえ、これは本当によくできた作品だと思う。こういう奇妙なアイデアを惜しみなく読ませてもらえることが贅沢だと思う作品だった。

課題6ネーム 桐山さん「死あるいは死

 このお話は展開があるお話で、4pマンガ的な小粒なおいしさがあると思った。個人的にお話としてのくだらなさがちょうどよいぐらいだった。この内容はラフな絵が合っているように思うが、完成稿ではまた変化するのだろうか。どういう仕上がりになるのか楽しみだ。

課題7ネーム 桐山さん「変わらないもの

 このお話はこれはこれで素直で悪くないお話だと思う。少し緊張した状況でとりあえずほしいもを勧める主人公がいいと思った。ただ、主人公は変化していないとされつつ、変化しないこと自体の強さみたいなものは意識されている内容ではないかと思うのだが、そこはなにかもう一押し展開がほしいようには思った。お互いの世界にとってお互いが助かる存在なのだ、という部分がなにかあるとよいのだろうが、なかなか難しいのかもしれない。

課題9(合同誌) 桐山さん「パパ活JK、漫画を描く」

 このお話は悪くないと思う。自分はそこまで共感的には思わないのだが、若い女の子が世の中のおっさんを成敗するという話で、好きな人は好きなタイプのお話なんじゃないだろうか。ただ、やはり自分はあまり好きではないかなとも。主人公の女の子にもうちょっと共感できたらあるいは興味が持てたのかもしれない。

課題10ネーム 桐山さん「本当の自分

 この作品はお話のアイデアは面白いと思ったが、SF設定のスケールの広さに対して主人公の悩みが小さいように感じた。実はロボットだったという設定だけなら主人公の葛藤や悩みはわかるのだが、それに加えて人類が滅びた世界ともなると内向きな葛藤は起こらないのでは?(葛藤をぶつける周りの人間はもういないから)と感じた。もしかすると、なにか設定の狙いがあって自分がうまく読めていないだけかもしれない。

桐山さん ヤングキング掲載「トビウオと深海魚
 ※ひらめきマンガ+にも一時的にアップされていたようで、せっかく雑誌に掲載されたということなので感想を残しました。2024/3/17

 パっと読んで、主人公の小泉のオフのときのキャラクターデザインが良いなと思った。なにか艶があるというか、家族を見るまなざしや自分を捉える視点にリアリティが感じられ、このキャラクターからはドラマが起こりそうだと思う。一方ヒロインの前村さんは個人的にはいまいちよくわからなかった。小泉くんがこのエピソードの中で前村さんのことが少しでも好きになった部分がいまいち想像できていないのだと思う。
 個人的に小泉くんのネイルを前村さんが肯定する部分がこのお話の重要な部分だと思うのだが、最初読んだときは良くわからなかったが、これが小泉くんが女性なのだったらここで二人の間に関係が生まれるのはとてもよくわかると思った。でも実際には主人公は男性なので、この「めっちゃかわいいじゃん」という前村さんの反応で喜ぶ小泉くんの感情をイマイチつかみ損ねてしまっているのだと思う。違う言い方をすれば、このネイルの話は友情的なもののモチーフに思えるのだが、このお話自体は最終的には前村さんのスパッツが見えるという異性愛的な部分に落ちる。そこがミスマッチに感じられたことがこのお話の意味のとおりを悪くしている部分なのではないか、ということをこのネイルのシーンからは想像する。
 とはいえ、さすがに雑誌に掲載されているだけあって、画面がうまく出来ているお話だと思った。朝日を一緒に眺めるシーンも、個人的にはこれが友情の話なのだと思うと明と暗のある二人に同じ光がさすというかなりグッとくるシーンだと思う。なので、やはりこの話の場合は恋愛的な部分がなにかわかりづらくさせてしまっているのではないか、ということを思うのだが、実際はどうなのだろうか。

 

カネゴンさん

課題3ネーム カネゴンさん 「趣味」

趣味 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話はオチが意外で面白かった。ただそのオチに至るまでがちょっと長いとも思う。なにか、このオチの意外性を生かせる整理の仕方がありそうだが。お話作りは何回もやってみてつかめてくると思うので、ぜひ今後もがんばって欲しい。

課題5ネーム カネゴンさん 「王子様とイチャイチャ」

王子様とイチャイチャ♡

 このお話は内容への感想を持つ以前の話としてキャラクターの外見がわからず、そこがちょっとさびしく思った。どういうことを描きたかったのかがもう少しわかると感想も持ちやすいように思う。とはいえ、作品の提出があることは読者的にはうれしいことだ。是非今後もがんばって欲しい。

課題7ネーム カネゴンさん「引きこもり

 この話は一見してヤバイ話だと思ったが、このくらいぶっ飛んでいたほうがマンガとしてはフックがあってよいと思う。一方、あまりにも理由なく付き合うことになるので、そこはもう少し回収があるとよいとは思う。たとえば、相手の子も実はなにかヤバイ性癖の持ち主だとか、なにか二人がくっつくことを納得させる要素があるとうれしいのではないかなと思った。

 

mangatime007さん(やまださとし with うちやまつとむさん)

課題1ネーム mangatime007さん「ひらめき☆パーティ」

ひらめき☆パーティー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はなにがなんだかよくわからなかったのだが、ただ、作品に込められた勢いみたいなものを感じるネームだった。なにか作者の方が考えているイメージがないとなかなかこういう内容にはならないと思う。個人的には「地ぞうの舞」や、口が悪そうな主人公がヒロインに対しては丁寧口調だったりするところは面白いと思った。ただ、このネームに関しては、計画書的な意味でのネームの意図がわかりづらいところがあって、たぶんおもしろい作品だと思うのだが、あまり内容が正確に読み取れているようにも思えていない。これがどういう内容を想定したものなのかということも含めて、なにか気になるネームだと思う。

課題2ネーム mangatime007さん「ご機嫌いかがですか 敬丘 千鶴さま」

ご機嫌いかがですか 敬丘 千鶴さま | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはマンガの一場面としては十分成立しているものだと思った。内容的にも3pのマンガだったらこれでよいと思う。ただ、個人的には冒頭の扉絵や俯瞰のコマなどを使った状況説明の絵が入るとよいのではないかと思う。何時ごろの話なのか、自宅の中のどこでの話か、盗み食いしたおやつはどんなものだったかなど、周辺の情報が入ると、読んでいる方も話しに入りやすいのではないだろうか。この姉妹二人の話はほほえましくてよい話だと思うので、できそうな工夫を加えてぜひ完成させてもらたらうれしい。

課題3ネーム mangatime007さん「ご機嫌いかがですか 敬丘千鶴さま(2通目)」

ご機嫌いかがですか 敬丘千鶴さま(2通目) | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話はアピール文にあるシナリオを読むと意味はわかったのだが、ネームだけでは内容がうまく読み取れない話だった。基本的には場面が跳ぶところで内容がわかりづらくなっているように見えるので、一つ一つの場面がなにを表している場面かわかるようになるとよいのだと思う。ただ、状況の設定やキャラクター同士の関係はよいと思う。自分が作りたいものは自分でしか作れないので、ぜひ踏ん張って作っていって欲しい。

課題4ネーム やまださとし with うちやまつとむさん「浮丘千鶴のニチジョ」

浮丘千鶴のニチジョ

 この話は4コマで書かれていて、いままでのこの作家さんのお話に比べて汲み取りやすい内容に映った。まだわかりづらくはあるが、それぞれの4コマはよく読むとわかる内容ではないかと思う。パッと読んだところキャラクターたちの関係がどういう関係かがもっと明瞭になっていて欲しいかなと思う。無理に説明的になる必要はないと思うが、なにかお話としてまとまりが出てくると良いと思う。

 

mimixさん(馬場逸さん)

課題9(合同誌) 馬場逸さん「ねがい」

 この作品は、マンガというより1枚の絵を見たような感じでなんともコメントしがたいが、女の人に妙な怖さがあるのがあって絵はきれいだと思う。これだけだとなんとも判断がつかないが、ストーリーみたいなものはあると思っていいんだろうか。うーん。

最終課題完成稿 mimixさん(馬場逸さん)「あこがれ」 

 こういったほとんど説明のないお話は久しぶりに読んだと思った。言葉で感想を残すのが難しいタイプのお話だが、思春期にあるような頭の中の妄想と現実の混濁のようなものをそれひとつにテーマとして絞って描いていることがわかるつくりだと思う。その点、一見不親切に見えるがこれはこれで実はわかるようにできている内容だと思った。言葉の少なさがイメージを誘ういい作品だと思う。

 

七井一汐(なないつ)さん

課題1ネーム 七井一汐(なないつ)さん「初見」

初見 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはお話しとしては今回の課題で一番しっくり来たネームだった。一見してなんでもない日常を映しただけの内容に見えるがなかなかこういうものは描けないと思う。個人的には今回の教室の課題への考え方の回答を見つけたようで影響を受けた内容だった。ただ若干わかりづらかったのはセリフとコメントが交互に出てくる部分で、どれがニコ生のコメントか現実の独りごとかや、あるいは男性と女性のどっちのセリフかがわかりづらいところがあった。セリフ周りがわかりやすくなったら本当に言うことがないマンガだと思う。ぜひ完成したものを読みたい、そして完成したものを見てまた感想を考えてみたい作品だ。

課題1完成稿 七井一汐(なないつ)さん「初見」

初見 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、個人的にはとてもすごいことをしていると思う内容なのだが、普通に読むとあまりよくわからない内容なのかなとも思う。この作品がすごいと思ったのは、要するにこの作品で描かれているような相撲界の八百長疑惑や当時のオタクの二次元嫁的な価値観などの具体的な出来事は、簡単に思い出せる記憶ではないと思うためだ。ただ一方、個人的にとくにオチの部分は言わんとすることがあまりよくわかっておらず、どういう結びを目指して描かれた内容なのだろうと少し不思議にも思う。
 読んだ人がこういった作品のすごさに気づいて楽しむのはハードルが高い読み方だとも思うので、その意味でも普通に読んだときのわかりやすさが大切だとも思う。とはいえ個人的には、洞察力の高さみたいなものを感じる、今回の課題作の中で印象に残る作品の一つだった。

課題2ネーム 七井一汐(なないつ)さん「スタバOLトーク

スタバのOLトーク | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話はなんだか自分の知らない世界で人が怒ったりしていて面白いと思った。9pのセリフの怒りは勢いがあると思う。ただ読んでいて、怒りの理由として複数の理由が出てきていて焦点がわかりづらいとも思った。個人的に怒りの理由は、相手の自己承認があるかどうかとかはあまり重要ではなく、単に自分たちの知っている出来事が歪められて伝わっていくことがいやなんじゃないかと思ったのだが、実際はどうだったのだろう。

課題3ネーム 七井一汐(なないつ)さん「2人の孤独」

2人の孤独 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は個人的に今回の課題作の中でも特に印象に残る作品だった。現実に対する洞察力がある内容だと思う。個人的に好きなマンガなので距離を測るのが難しいのだが、あえていうなら、個人的にはキャラクターの心情が少しわかりづらいところがあり、もう少しアザのあるこの世界のリアリティが知りたい内容だったとはいえると思う。
 特に、男性として男性には触れられないカイの”人を愛し合えないまま死ぬのかな”という気持ちがちょっと遠く感じた。もしかしたら彼はゲイだったりするのだろうか。もしそうであったとしても、この世界において男女で同じ症状が起きた場合気になってくるのは女性が男性と愛し合えないことの問題ではないはないか、と個人的には思うのだがどうだろうか。実際に触れるとどうなるのかが描かれると、キャラクターの心情やこの世界のリアリティ含め説得されるのだと思う。(もしかすると”触れると死ぬ”という設定が強すぎるのかもしれない。)個人的にこういう洞察力がある作品は好きなので、ぜひ整理して完成させてもらえたらうれしい。

課題3完成稿 七井一汐(なないつ)さん「2人の孤独」

2人の孤独

 この作品は個人的にはネームから引き続き、現実に対するまなざしがあるところがよいと思う作品だった。こういうはっきりした感じがあることは稀有だと思う。一方内容的にはややわかりづらかったところもあり、特に12pでカイが抗議するおじさんに敵意を向けるところは少し唐突に思った。アザの原因を作った側ではなくその生きづらさを膨張させる人たちに対する怒り、と文脈的には読み取れるものの、ここはキャラクターの怒りの様子を丁寧に描写してほしい部分ではないかと思う。ただ、個人的にはこういうフィクションのようで現実のことを描いているような作品は増えたらいいと思う作品で、今後も読みたいと思う。今後もがんばって欲しい。

課題6ネーム 七井一汐(なないつ)さん「アラサーがJKの制服を着て電車に乗ってみた結果

 このお話はなんだか不思議で面白いお話だと思った。痴漢に対する裁きが物語の下敷きになっていると思われる一方、それをどこか脱臼させようとする意思も感じる。適度にトゲトゲしくなく、かといって必要以上に手を抜いている感じがないところが読み味の良いところだと思う。物語のオチは、こういう硬めな主張(倫理的に従順な主張)を描きたいならこれで良いと思うが、個人的には、法や倫理が主張することと主人公が選択することとは、フィクションの中では別であってほしいと思う。ただ、この作品の描き方はこれはこれで全然ありだと思う。このお話は個人的に気になる作品で、ぜひまた完成稿で読ませてもらいたい。

課題7ネーム 七井一汐(なないつ)さん「私も仲間に入りたい

 このお話は童貞くんの見せ方がうまいと思った。彼の言動の意味がお話の前後で反転して見えるつくりで説得させられた。ただ反面、童貞君がしっかり演出されているからこそだと思うが主人公の印象は少し弱く見えるとも思った。このストーリーの中で「そこの女子大生とセックスすりゃいいじゃん」とぞんざいに扱われているのはむしろ主人公なので、なにかそこがうまく扱われるとお話としてはスッキリした印象になるのではないかと思うが、どうなのだろう。

課題9(合同誌) 七井一汐さん「アラサーヤクザがJKの制服を着て電車に乗ってみた結果」

 このお話は感想が難しいが、やろうとしていることはよいことではないかと思ったのだが、ちょっと話の流れがわかりづらかったかなと思った。男がかなり異常な行動をとっているので、その異常さについてもう少し触れてから裁いてほしかったかな、と思う。ただ、読んでいてなんらか感じるところのある作品だった。

課題10ネーム 七井一汐(なないつ)さん「死に方

 このネームは面白いと思う。話としてもう少しまとまりきってほしいようには思うが、絵的なイメージ(目玉や血)が話の流れにちゃんと絡んでおり読んでいて想像が膨らんだ。またこういう内容は男性同士の恋愛を想起させる感情として描かれるのが合っているとも思った。ただ、話の終わり方にはなにかもう一ひねりあると一読者的にはうれしい。

課題10完成稿 七井一汐(なないつ)さん「死に方

 まだ荒削りなマンガだと思うが、軸が太くメジャー感のある内容で楽しく読んだ。自分の死にも他人の死にも執着がない主人公が、自分と命を天秤にかける吸血鬼との出会いの中で生きることに意味を見出す、というストーリーがよくできていると思った。まだ演出的によくなりそうな部分はあるとは思う。でもこういうメジャー感のあるお話は読んでいてわくわくすると思った。

 

中山懇さん

課題1ネーム 中山懇さん「満願寺さんのワンナイトハッピーアワー」

満願寺さんのワンナイトハッピーアワー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 個人的にはこの作者の方の作風が読めるだけですでに嬉しさがあって、客観的に感想を考えるのが難しいところがあるのだが、この作品を通じて描きたかったことは具体的に何だったんだろうと不思議には思う。主人公が女の子とセックスできてわーい、みたいなことなのだろうか、それともむしろ、この一夜の出来事くらいでは主人公は回復しないぞ、という話だったりするのだろうか。そのあたりがよくわかっていない。ここが理解できると、なにかもう少しこの作品に対する愛着みたいなものが生まれるように思うのだが。

課題1完成稿 中山懇さん「満願寺さんのワンナイトハッピーアワー」

満願寺さんのワンナイトハッピーアワー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガはネーム第二案的なものとして読んだ。個人的に元のマンガの印象が強いため感想が難しいが、ぱっと読んだ感じでは、ネームのほうが勢いがあってよかったように思った。ただ、こちらの完成稿の描き方は元のマンガよりも展開が丁寧になっていると思ったので、こちらのほうがより丁寧でよいのではないかとも思う。というようにどちらにも良い部分があり、二つを比較してどちらがよいかというとそんなにはっきりとはわからなかった、という感じだった。
 ただ、個人的にはだが、完成稿で主人公の男性の名前が「モブ沢さん」に変化してるところはあれっ、そういうことだったのか、と勝手に拍子抜けした部分だった。なんだかネームからさらに降格した感じがあってちょっとかわそうな感じがした。ただ、なにか意図はあってそれに自分がうまくついていけていないだけなのだと思う。完成稿もネームも両辺通じて、個人的には作中のマッチングアプリの出会いが主人公の男性にとってよい出来事だったと思えたらうれしかったのだと思う。

課題2ネーム 中山懇さん「飴屋ちゃんのイライラキャンディライフ」

飴屋ちゃんのイライラキャンディライフ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは普通に面白かった。いやな性格をしている上司が本当にいやらしく描かれているところもいいと思ったが、話のオチがおばちゃんと主人公の関係でオチているところに安心した。この作品はもうこれで楽しめる内容だと思うが、一方さらに欲張って読むなら、11pから13pのパワハラ報告で報復する展開はわりにさらっと描かれているので、ここは飴屋ちゃんが暴力を振るってしまうのかどうかもう少しハラハラさせる演出があるとよいのかもしれない。せっかくよいキャラクターだと思うので、もう少し飴屋ちゃんの言動に焦点があたる感じがあると読み手としても共感しやすいのではないかと思う。

課題3ネーム 中山懇さん「俺の性的問題と彼女の事情」

俺の性的問題と彼女の事情 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は感覚的には面白そうなことをやっているとは思うのだが、個人的にはちょっとよくわからないという気持ちが先行する作品だった。なんだか熱い展開だとは思うのだが、ただ、読んでいる側としてはうまくついていけない感じだった。なにかこの作品世界のルールがあると思うのだが、そこをもう少し丁寧に説明してもらえたらわかるような気がする。変なことをやっていて、それがよいとも言えるしそれゆえによくわからないとも思う、不思議な作品だった。

課題3完成稿 中山懇さん「俺の性的問題と彼女の事情」

俺の性的問題と彼女の事情

 この作品は基本的にはとてもよく描けていると思ったのだが、作品全体に表れている屈折感みたいなものがよくわからないところがあり、個人的には読み方が難しい作品の一つだった。たぶん、自分の読み方が下手で、本来引っかかるべきではないポイントでひっかかっていると思うのだが、たとえば6pの主人公のセリフが「俺が助けてやる」とわざわざ「~してやる」なっているところなどが引っかかってしまっていて、この二人の関係や描こうとしていることにうまくノれない感じだった。ただ、この作品のモチーフは若者特有の屈折や卑屈ゆえのクズさみたいなものがテーマの中心だと思うので、これはこういう形でよいのだと思う。

課題4ネーム 中山懇さん「推しとメシで生きています。」

推しとメシで生きています。

 この作品は、作品のつくりのとおり読んでいておなかがすく作品だった。パッと読んで楽しみ方がわかるつくりでたいへん良いと思う。ほとんどいうことないできばえだと思ったが、個人的には推しに対する主人公の態度がよくわからないように映った。冒頭は主人公が推しとの間で悩んでいるところから始まるが、オチでは結局主人公は単に悩みなく推しを推しているように見えるので、そこはあまり解決が見えなくて不思議に感じた部分だった。とはいえ、作品の完成度が高いネームだと思うので、作者さんには自信を持って欲しい。

課題4完成稿 中山懇さん「推しとメシで生きています。」     

推しとメシで生きています。

 この作品はパッと読んだ感じがネームよりもよかった。画面のメリハリがあってよりマンガらしく感じられるようになっていると思う。ネームでは推しの設定など細かい点で気になっている部分もあったのだが、完成稿を読んでそれもあまり気にならないと思った。時間がなかったとのことだが、その中では十分よくできている作品なのではないだろうか。

課題5ネーム 中山懇さん「姉は、人魚姫40歳」

姉は、人魚姫40歳

 このお話は景色のきれいなお話だと思った。ラストの3p(見開き2pの部分)が印象的で、ここだけで読んでよかったと思えるお話だと思う。一方、個人的には40歳の人間が15歳の人間にしりを叩かれて行動するところはあまり客観的には映らず、少しクセが強い部分に映った。とはいえ、イメージのふくらみがある内容でこれはよいお話だと思う。ぜひ完成してもらえたらうれしい。

課題5完成稿 中山懇さん 姉は、人魚姫40歳

 このお話は特に14,15pの見開きがとてもキレイだった。このシーンだけで良いマンガだと思わせる力があると思う。ただ、個人的には少し読んでいてひっかかったポイントもあり、特に11pで主人公がこのタイミングで「ビビってたんか!」と自分の本当の気持ちに気がつく流れはあまりピンときていない。ただ、これはわたしがうまく読み取れていないのだと思う。というように、個人的に少し読めていない部分があるとは思っているのだが、それを差し引いても、十分魅力のあるよく出来たマンガだと思う。

課題6ネーム 中山懇さん「お風呂のあかは残しとけ

 このお話は個人的に楽しんで読んだお話だった。イケメンのあかなめというアイデアが奇抜で、また絵力があるので、その二つに駆動されて読まされた形だった。ただ、絵の力があるのでこれはこれで良いと思うのだが、勝手な話だが、マンガとしてはうまいのだけどこの作者さんの作品として読みたいものとは少し違う、とも思う。うまいものではなくてよいので顔が見えるお話が読みたいというか、マンガを使ってどういうことを表現したいかがもう少し知りたい気持ちが強い。これはこれで全くよい作品だとは思うのだが。

課題7ネーム 中山懇さん「バースデーも別れ話で。

 このお話はなんだかきつねに化かされたような不思議な気持ちになった。個人的に、やはりドッペルゲンガーがでてくるところが予想外で面白いと思う。ただ、これは色々な意見がありそうだが、せっかく出てくるならドッペルゲンガーにはさらに早い段階で登場してほしいようにも思う。これはこれで成立しているとは思うが、修羅場に3人目がいたら面白そうだな、などと思った。

課題7完成稿 中山懇さん「バースデーも別れ話で。

 このマンガはよかった。絵的にも気合が入っていて、内容的にもあまり人間関係の問題に深入りしない温度感がちょうど良いと思う。個人的に、この二人が普段どういう関係かなどをあまり説明していないところがキャラクターへの想像力を限定しておらず、軽い読み味になっていると思う。

課題9(合同誌) 中山懇さん「バースデイも別れ話で」

 このお話は教室でのマンガの再録だったのだが、改めて読んでいい作品だと思った。作品として改めてコメントというのも難しいが、なにかのリアリティが表現されているお話のような感じがする。リアリティの表現が見られるのはマンガのような表現ならではかもしれない。

課題10ネーム 中山懇さん「なんでマンガなんかやってんのか。

 この作品は、作中で登場する絵はすごいと思った。ただ、こういう内面の吐露をする内容は自分はあまり興味がないと思った。自分の読解力不足だとは思うが。とはいえ、好きな人は好きな内容だと思う。

課題10完成稿 中山懇さん「バイトに取り憑かれた男の話

 ネームから非常に読みやすくなっていて驚いた。なるほど、現実逃避のマイナスしかなかったはずの経験が今どう手元に残っているのかが描かれている話なのだな、とうなずくように読んだ。やはり、実際にその当時描かれた”絵”の挿入によって、当時の辛さや絵への興味の所在の説得力がぐんと増していると思う。キャラクターの一貫性がある中での変化が描かれているよいマンガだと思う。

最終課題ネーム 中山懇さん「姉は人魚姫、40歳。」 

 今までの課題のブラッシュアップ版とのことでコメントが難しいが、作品自体はよいと思う。きれいな作品だと思う。ただ、この作品があえて再録に選ばれているところの意図はあまりわかっていない。わざわざ選ばれているということはなにか理由があったのだろうか。実際に完成したところを見ないとなんともわからないのかもしれない。

最終課題完成稿 中山懇さん「姉は人魚姫、40歳。」 

 このお話は絵がきれいで海面に出るシーンが心象風景的にもキレイなお話だとは思ったのだが、いまいち主人公の抱える鬱屈や海面に出ることの解放感には共感しづらかったお話だった。ぼんやりとは伝わってくるのだが、はっきりとした形で「こういうことが題材なんだ」とまではうまくつかめていないのが正直なところだ。なにか描こうとしているテーマの切実さがあって描いているお話なのではないかと思うのだが。

 

藍銅 ツバメ(らんどうつばめ)さん

課題1ネーム 藍銅 ツバメ(らんどうつばめ)さん「押しの声の怪」

推しの声の怪 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガはお話しとして感心しながら読んだ。虫のようなもののけがフィクションとして表れて閉じていくことが声優の声を空しく感じさせるエンディングにうまくつながっている。この作品を読んでいるとエンディングの空しさの意味するところを感じざるをえない(たとえば、表層的な関係が何かの拍子にきつくなってしまう人間の心理がある、とか)のだが、だからといって単調な批判の形には全くなっていない(たとえば”演技なんて全部ハリボテで無意味だ”というような)。お話がなにか社会的な意味を内蔵するタイプの創作の原型を見させてもらったような作品で、個人的にとても感心している。

課題1完成稿 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「推しの声の怪」

推しの声の怪 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、ネームのときからよかったが完成稿も期待を裏切らないできばえで一読者として読ませてもらえてうれしかった。妖怪(?)のビジュアルが想像したよりも愛着が持てるように描かれていて、オチの叩いてしまう場面もより切なく映る。個人的にはもう少し間の演技がほしいようにも映ったが、これはこれで作品のテンポに統一感があるので問題ないのだと思う。内容的にも”本物の声が虚しい”というオチがやはり優れていると思う。これだけ話の骨格がしっかりしていると読後感がよいのだと改めて感じる作品だった。

課題2ネーム 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「お狐サマが解釈ちがい」

お狐サマが解釈ちがい | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は話の作り方がうまい、と思った作品だった。くだらない話と少しマジメな話のバランスがいい。特に”流行り病”といってコロナを思わせる内容が入っているところは、この作品の気持ちを感じる部分だと思う。淡々としたテイストは持ち味だとも思うが、個人的にはもう少し抑揚があるとうれしいとも思う。しかし、課題1に引き続き安定感があるお話しだった。

課題2完成稿 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「お狐サマが解釈ちがい」

お狐サマが解釈ちがい | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームのときと感想が似てしまうが、短いページの中でうまくまとまっていて読みやすい作品だった。主人公の性癖の部分と社の復興のいい話の部分がどちらもサラッとしているところが読んでいて肩の力が抜けるところだと思う。この作品はこのページ数の作品としてはいうことはない出来だと思う。個人的にはもう少しドラマがあるタイプの作品も読んでみたい。今後もぜひがんばってほしい。

課題3ネーム 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「フルーツ王国のイチゴちゃん」

フルーツ王国のイチゴちゃん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、最初に読んだときよりも時間が経つにつれてよさを感じるようになる作品だった。なんといえばいいのか、世界観のかわいらしさと残酷さにギャップがあって、悲劇が単純な悲劇とも言えない内容で、キャラクターの葛藤なくさらっと描かれているところがよいと思う。(葛藤が描かれていないことで読み手が葛藤を受け取れるつくり、といってもよいかもしれない。)なんといっても5pの果汁をなめるシーンはすごい。わからないが、この作者にしか描けないものを読まされていると思った作品だった。

課題3完成稿 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「フルーツ王国のイチゴちゃん」

フルーツ王国のイチゴちゃん

 この作品はなんともいえない読後感で非常に気に入ってしまった作品だ。複雑な内容ではないと思うのだが、イチゴちゃんが涙(果汁)を飲むシーンはぐっと来るものがある。(涙と果汁でかかっていることに何度読んでも感心してしまう。)また、今までの作品もそうだが、やはりひょうひょうとしたやりとりがいい。特にこの作品はシリアスな部分とのギャップになっていてその落差に味わいがあった。あえて言うなら、ネームから変化している4pの1,2コマ目はどういう時間経過のシーンかわかりづらいとは思う。ただ、わたしが単によく読めていないだけかもしれないし、そうでなくとも教室のマンガとして色々試してみてもらえたらよいと思うので、全然よいと思う。今回も読後感がしっかりある作品で、とてもよかった。今後もがんばって欲しい。

課題4ネーム 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「なんとなくネクロマンサー」

なんとなくネクロマンサー

 このお話は面白かった。単純にこの二人の切なく幸福な話としても読めてそこも良いと思うのだが、深刻さを崩す描き方のおかげでクスッと軽く読めるようになっているところがいいと思う。完成度が高いネームだと個人的には思うが、あえて気になるところを挙げるとすれば、5pの1コマ目の主人公が自分の感情を語るモノローグはちょっとわかりづらかった。主人公から相手への好意を示すシーンなので、個人的にはもう少し説得力がほしいと感じた。とはいえ、人によって反応が違ってくる部分だと思う。

課題4完成稿 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「なんとなくネクロマンサー」

なんとなくネクロマンサー

 この作品はネームと比べてもより不穏でアンバランスな感じがあって良かった。6pと短いページ数の中で救いのない感じとコミカルな雰囲気をこれだけ表現できることがすばらしいと思う。また、これはこれで良いと思ったが、もし今後こういう作品があるなら、今度はさらに救いがない話が読んでみたいとも思う。

課題5ネーム 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「人魚の三文小説」

人魚の三文小説

 今までの作品に引き続き、今回のお話も短い中でよくまとまっていると思う。しっかり主張もオチもある内容でこれはこれで言うことないが、3pから4pにかけての恋愛をめぐる議論が面白く、個人的にはそこをたっぷり読みたいとも思う。今回も安定してうまみがある内容で、これだけ毎回しっかり構成をとれていることに作品への信頼を感じている。ぜひ完成稿もがんばってほしい。

課題5完成稿 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん 人魚の三文小説

 このマンガは予想外にキャラクターの動きがかわいいマンガだった。魔女のべた塗りのタコ足がなんともいえずキュートだと思う。お話としてもメリハリのあるつくりになっていて、完成したものとしてこれだけしっかりまとまっていればいうことないのではないだろうか。

課題6ネーム 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「また店が開かなかった

 このお話は、2pのものとしては情報の入れ方がうまく楽しい雰囲気があると思ったのだが、ただ、もう少し展開が欲しいようには思った。これをベースにしてこの先のお話が作れそうだと思うのだが、意外とお話作りに苦戦していたりするのだろうか。

課題6完成稿 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「また店が開かなかった

 このマンガは、2pのものとしてはキャラクターの配置に充実感があった。ただ、エピソードとしては起承転結の起で終わっている感じがあってもの足りない。うまく配置されているだけに不満足感があるといったほうがいいかもしれない。ただ、このキャラクターのおき方はやはりよくできていると思う。

課題7ネーム 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「たりないメイドの砂糖漬け

 このお話は、ずっとこのワールドを見ていたいと思うようなお話だった。会話が軽くて面白く、別段ストーリーの進展があるわけではないのだが見せ方によってこれだけ面白くなるのだと感心した。最後の大画面を使ったコマも堂々としていてよいと思う。ぜひ完成稿をがんばってほしい。

課題8 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さんなんとなくネクロマンサー

 この作品は悪くないと思った。元のマンガもよかったが、こちらのように大ゴマを使うとより情緒的に感じられて、個人的にはこちらのほうがよいと思う。また、細かい部分だが背景の書き込みが増えているところも読み応えが増していると思う。一方個人的には、6,7pでは大ゴマでの台詞があってそれはよいのだが、受け止めがなにか用意されていてほしいようにも感じた。バランスに対する好みの問題だとは思うのだが、こうはっきりと好意を伝えられたら主人公が実際にそれをどう思っているのか見てみたい。ただ、元のマンガと比べてこちらのマンガのほうが表現したいことが乗っていて、個人的にはこのほうがよいと思う。

課題9(合同誌) 藍銅ツバメ さん「目猫」

 このマンガは、今回紙で読んだことで藍銅さんの線の丁寧さがよくわかり、今回Aチームの冊子の中でひょっとしたら一番読めてよかった作品かもしれない。お話の内容は、まあまあ、このくらいの長さだったらこういうお話でちょうどいいのかなと思うものの、個人的には、今までにひら☆マンのほかの課題でも読んでいるので、もう少しボリュームがほしい感じはする。逆に、自分はここ最近藍銅さんのマンガについては「ボリュームがほしいかも」と毎回言っているので、合同誌でもこういうタイプのお話を持ってきたところを見るに、もしかしてこの短さには自分が気がついていない何らかの意図があるのやも、とも思わされる。

課題10ネーム 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「文字まみれ

 この作品は面白かった。説明が難しいが、全て文字で表現しているにもかかわらず、物語としての基本的な構成を崩しておらず意外と読めてしまうところがすごいと思う。個人的に言葉での表現内容も面白かった。犬の説明で「犬がこの世にいるならば愛は存在するかもしれない」と普通はあまり説明しないだろう。言葉遊びがお話の骨格の中で殺されずにコントロールされていることの気持ちよさがある内容だと思う。

課題10完成稿 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん文字まみれ

 こういう変わったマンガでちゃんと面白いマンガって作れるんだなあ、と感心して読んだ。バランスがよいので面白くて悔しいと思ったくらいだ。個人的に「③おえかき」のシャツの文章が面白い。最初は読み飛ばしていたのだが、後から読んだらくだらなくて笑ってしまった。

最終課題ネーム 藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さんあらゆる文士は娼婦である」 

 この作品はとにかく面白かった。3人目の彼の登場の勢いといい、最後のグズグズ感といいとにかく面白い。個人的に作品のボリュームがそこそこあるのもうれしかった。ぜひ完成をがんばってほしい。

藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「あらゆる文士は娼婦である」 

 このマンガは面白い。個人的には、内容のテンポのよさもよかったがそれ以上にキャラクターのデザインと作画がきっちり整っていることが好印象だった。やはり、3人が名刺交換をしているシーンのカオス感は読んでいて笑ってしまう。あえて言うなら、フキダシの線が(おそらく意図してではなく)背景とかぶってしまっている部分が何箇所かあるのは時間がなかったのかな、と思った。とはいえ、個人的にも非常に楽しませてもらった作品だ。

 

くまのぶさん

課題1ネーム くまのぶさん「doWa

doWa | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はヒロインのdoWaちゃん(?)が人の言葉を話せないまま一生懸命がんばる様子がかわいかった。キャラクターがしゃべらないで演技する描写は個人的に好ましい描き方だと思う。一方、4pから9p辺りのコマ割りはなにがどうなっているのかちょっとわかりづらかった。お話としてもヒロインの話から風の話に内容が変わってしまっているように感じる。ただ、作風的にはすでに形になっているように思う。今後、他にもどんな世界観の作品を描くのか気になる作者の方だ。

課題1完成稿 くまのぶさん「doWa

doWa | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、完成稿になってグッとよくなった作品だと思う。特に主人公のちょっとダメなキャラクターが二人の別れの切なさにうまく響いていると思った。一方、巨大樹に雷が落ちる8p9p付近の展開はもう少し余裕をもって読みたいとも思う。物語が動く派手なシーンなのでせっかくならもっと画面的に強調があってもよいのでは、と思ったが、今回、ほかの修正部分がこれだけ整理されているところを見るに、わたしがわかっていないだけで何か意図があった描き方なのかもしれない。
 人生初完成稿とのことでたいへん喜ばしいと思った。こういうしっかり読みやすく工夫してある作品を読ませてもらえるのは印象がよかった。今後も楽しみな作家さんだ。

課題2ネーム くまのぶさん「完璧な男」

完璧な男 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、個人的にはなにか面白いことをしていると思ったが、ただちょっとわかりにくい描き方だとも思った作品だった。特に最後の数ページのオチの部分は矢井田が本当になにかミスをしていたのかどうかがわからず、単純に内容の汲み取りが難しいと思った部分だった。ただ一方、途中で女子社員が矢井田との関係の中で会社をやめていくところは、なんだかリアリティというか本当らしさを感じる部分。縮小された人間の社会みたいなものが表現されている感覚を覚える内容で、個人的には面白い表現をしていると思う。

課題2完成稿 くまのぶさん「完璧な男」

完璧な男 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は普通に読みやすくていい作品だと思うのだが、つくりがしっかりしているからこそ矢井田のキャラクターの掘り下げがほしいと思う内容だった。主人公が矢井田を嫌に思うことはわかるのだが、なにかもう少し別の側面が知らされないとキャラクターとしての受け止め方が難しいと思った。設定の部分ではもう少し色んな側面があったりしたのだろうか。とはいえ向き不向きがあると思うし、この作者さんは絵がいいので、自分に合いそうな話のつくりを目指してもらえたらうれしいと思う。

課題3ネーム くまのぶさん「新しい春へのダンス」

新しい春へのダンス | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は個人的には華やかな雰囲気があってよい話だと思ったのだが、一方で主人公の喜びにもう少し共感できるつくりが欲しくなるお話でもあった。ヒロインに手を取られることによって主人公がダンスのトラウマを克服する流れがよく、それだけに申し訳なく思うのだが、そのためにはヒロインのキャラクターがもう少しストーリーに対して必然性を持っていて欲しいと思う。なぜ、このヒロインとの間でこそこの主人公は助けられる必要があるのか、ということに個人的には疑問を感じてしまったのだが、単にわたしにはこの内容がうまく理解できていないだけなのかもしれない。お話のモチーフもキャクラターの造詣も前作前々作に続いて魅力的で、こういう作風はそれだけでも持ち味だと思う。今後もぜひがんばって欲しい。

課題3完成稿 くまのぶさん「新しい春へのダンス」

新しい春へのダンス

 この作品は、キャラクター二人のバランスがよい作品ではないかと思う。特に鮫島さんの明るさは、個人的に、自分ではこういうキャラクターは作れないと思うものだった。一方で、読んでいて気になったのは、菜綱のバレエの”失敗”が何を指しているのかがこの情報だけだとハッキリしないと思ったこと。この内容だと足をケガをしたともとれるし、単にステージの上でコケて精神的なプレッシャーで立ち上がれなくなってしまったことだともとれる。すこし細かいことかもしれないが、個人的には読み取りに少し迷いが生じる部分だった。とはいえ、このお話しはよいと思う。こういう人の暖かさみたいなものを感じられる作品はまたぜひ読ませてもらいたい。

課題4ネーム くまのぶさん「おぼんやすみ」

おぼんやすみ

 このお話は素朴に良い話だった。ちょうど夏のこの季節に合わせたお話が読めてうれしい。これはこれでよく出来ていると思うが、6,7pを使った大ゴマの景色が主人公にとって思いがけない出来事だったことにもう少し強調があっても良いのかなと思う。ためがもう少し欲しいといったところだろうか。でも、こういうお話は王道で良いと思う。ぜひがんばってほしい。

課題4完成稿 くまのぶさん「おぼんやすみ」

おぼんやすみ

 この作品はよく出来ていると思う。この夏の季節に合っているいい話だった。一方、これはこれで良いと思うが、6,7pの見開きのシーンの前にこのシーンに意味を持たせる内容がなにか追加されても良いのではないかとも思った。せっかく良い話なのでタメや落差の演出があるとさらに映えるのかなという感じだ。

課題5ネーム くまのぶさん「リトルカレッジ」

リトルカレッジ

 このお話は、これはこれでよく描けていると思ったのだが、お話としては少し途中で終わっている感じがあり、ここから先で起こるはずの王子様と出会った姫の変化を読んでみたいと思った。起承転結でいうと承までが描かれている感じがする、というとわかりやすいだろうか。人魚姫のかわいらしさと世界観の暖かさがよく描けていると思うので、このキャラクターを使った話の行方や登場人物の変化が見てみたいと思う。

課題7ネーム くまのぶさん「バタフライ

 この話はいい話だと思った。喫茶店のおばちゃんとの会話を経て主人公が最終的に絵を描くことに戻っていくところが気分がいい。説得力のある内容だと思う。小さな話といえばそうだと思うが、個人的には教訓のようなことを上からでない無理のない形で伝えるこういった作品はいい作品だと思う。

課題7完成稿 くまのぶさん「バタフライ

 このお話はネームに引き続きいいお話だと思った。主人公の少し冷めて疲れている感じが、静かに熱を持っているこの内容に対してよく合っていると思う。また、ネームから変更されているオチの絵も、個人的にはこちらのほうが変にいい話になっていなくて合っていると思った。結論を急いでいない雰囲気が心地よいと思うマンガだった。

課題9(合同誌) くまのぶさん「きゃんヴィズえにうぇあ~」

 この作品はよくまとまっているいい作品だった。ヴィズさまのコスチュームが変化して構図も変わっていくのがおもしろかった。読んでいて心が暖かくなるというか、普段考えている現実の出来事から少し距離をとらせてくれるようなお話だと思う。

課題10ネーム くまのぶさん「

 この作品は、演出が丁寧で空気感がよい作品なのだが、あともう一歩内容があってほしいと思った。自分には主人公の小紅が雪に感動するのだろう、と展開が読めてしまったところがあり、小紅が雪に出会うことがさらにストーリー上の意味を持っていたらと思う。ただ、今までの作品に比べても丁寧さがコントロールされている感じがあり、作品作りがよくなっていることを感じている。

課題10完成稿 くまのぶさん「
 季節感がある暖かな話で悪くない話だと思ったが、コマ割りが小さくてひっかりなく読んでしまった感じだった。小紅が雪を見てなにかを思うところにもう一味固有の受け取り方が入っていると印象に残る内容になるのではないかと思う。画面に黒さがあって作りの丁寧さを感じるので、一読者としては惜しいと思う作品だ。

最終課題ネーム くまのぶさん「小食二郎訪問 ~環七一之江店~」 

 のんびりした良い内容だと思ったが、コマが若干小さくて読みづらいようにも思えた。ただ、ネームの段階なのでそう感じているだけかもしれない。こういうレポマンガはこれはこれでいいような気もする。この作品はペン入れ次第で印象が変わりそうだが、このネームの印象よりもしっかりした作品に仕上がるのではないかと想像している。ぜひ完成向けてがんばってほしい。

最終課題完成稿 くまのぶさん「小食二郎訪問 ~環七一之江店~」 

 コンパクトだが読み応えがある作品だった。ネームから内容は変えずに構成が変わっていてとてもまとまりがよくなったが、特に最後のページの引きのショットの追加が主観が強くなりがちなエッセイマンガへのアクセントになっていて読んでいて気持ちがよかった。ベタな感想だが、読んでいて外食がしたくなるというか、こういう自分の好きを満喫する時間が恋しくなるマンガだった。

 

大須健さん

課題1ネーム 大須健さん「小麦アレルギー男の必勝デート計画!」

小麦アレルギー男の必勝デート計画! | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はキャラクターの描き方がなんだかコミカルでそこが気に入った作品だった。デートの解決策として主人公がちゃんといちご狩りを思いつく部分もよいと思うのだが、妄想上のマイコさんと現実のマイコさんのふるまいがちゃんとそれっぽく違っているように感じられ、その書き分けが特によくできていると思った。一方、気になるところを言えば最後のページの主人公からのマイコさんへのリアクションの演技は、なにかもう少しアイデアがあるとよい部分にも映る。マイコさんの気遣いがこの男の子にとってどのくらいうれしい出来事だったのかがもう少しわかるとうれしいかもしれない。この方の描くキャラクターの演技はなにか安心するものがあるので、今後の作品も楽しみだ。

課題1完成稿 大須健さん「小麦アレルギー男の必勝デート計画」

小麦アレルギー男の必勝デート計画! | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

  この作品はよくかけていると思った。読んでいて特に手が止まるような部分がなくスッキリした印象だ。とくにマイコさんがあらかじめ主人公の事情を把握していて気にかけていてくれたという内容は、なんだか普通に心が温まってしまった。主人公の男性が事態をなんとかしようと悩むところも含め、キャラクターの人としての魅力を感じる作風だと思う。一方で、お話しの内容は、この話をどこにおとすのかが難しかったのだろうと思って読んだ。個人的にこういうベターな修正でいいのではないかと思う一方、もう少し二人の関係が最終的にどうなったのか知りたいとも思った。

課題2ネーム 大須健さん「素直に笑えばいいのに」

素直に笑えばいいのに | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、自分に嫌いなところがあっても他人が好きになってくれたら許して良いんだよ、というメッセージがある作品だと思う。個人的にこういう内容のある作品はすばらしいと思うのだが、ただ、もう少し二人の関係に話の内容の焦点があたってもよい内容なのではないかとも思った。実は主人公のモモカがルリのどのあたりを人間的に好いているのかがよく見えなかったのだが、そこがはっきり描かれないとなかなかこの二人の関係性の良さは表現されないのではないだろうか。ただ、微妙な関係を描こうとしているだろうとは思うので、どこまではっきり描くかバランスが難しい内容なのかもしれない。メッセージを感じさせる内容で、個人的にはなにか応援したい気持ちにさせられる作品だと思う。

課題2完成稿 大須健さん「あたしの笑った顔が嫌いなの」

素直に笑えばいいのに | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話はとてもよくがんばって描いていると思ったのだが、ただ、話の中心はあまりわからず少しぼけた内容に映ってしまった。作品の持つメッセージの力強さの意味では個人的にはネームの内容のほうが力強く感じる内容だった。元の内容から変更を加えた結果描き方が難しくなってしまったのかとも思うが実際はどうだったのだろう。この主人公がどういう問題を抱えていて、それがどうなってほしい話だったのかがもっと知りたいと思うし、そこで扱われるはずだったテーマ自体はよさそうなテーマなので、どんな解決を目指して描かれたのかが気になってくる作品だと思う。

課題3ネーム 大須健さん「あのときの1000円を返せ」

あのときの1000円を返せ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は、思春期にただ単に無碍にされた記憶に悩む内容で、個人的に共感がある内容なのだが、一方で話としてはなにか途中で終わっているような感じがしたお話だった。これはこれで読み手に感じさせる力がある内容だと思うのでその意味で描き方の不足はないと思うのだが、個人的には、この作品を読み終わってみて、主人公の感情のこの行き場のなさをどう受け取るとよいのか少し困る感じがした。ただ、これは人によって受け取り方が違う部分だと思うし、ひょっとするとこれを読んだわたしが自分の過去に対して整理がついていないことと無意識に重ねたために内容をうまく拾えなかったのかもしれない。作者の方自身が何度も取り組んでいる内容のようなので、特にこの作品は一般性みたいなことではなく、取り組んでいる側の納得感が大切だと思う。”自分がいいたかったことはこれだ”と思える何かが、作る側にも読み手にも見つけられているかが大事ではないかと思う作品だった。

課題3完成稿 大須健さん「あのときの千円」

あのときの千円

 この作品はネームに比べるとわかる内容になっていて16pの内容としてはよくまとまっている作品だと思ったのだが、正直にいうとこの作品をどういう作品と思えばよいかがよくわからなかった。特にこの冗談のようなオチは内容の深刻さや私小説的な題材に対して回答を避けた終わり方に個人的には映る。ただ、わたしがこの作品についてよくわかっているとは思えないので、たんに理解不足なのかもしれない。なにか描きたいことがあることは伝わってくるのだが。

課題4ネーム 大須健さん「おかしいとは思わねぇか?」

おかしいとは思わねぇか?

 この作品は発想は面白いとは思ったのだが個人的にはちょっとよくわからない感じだった。よく読むとたとえば最終話の「コンドームを自分で着ける男はおかしい!」などはなかなか良い話だと思うのだが、その良さに気がつきづらいように感じる。個人的には、セックスシーンであることの必然性がどのあたりにあったのかが気になって読んでしまったのだが、最終話のための設定ということで読み方としてはあっていたのだろうか。なんだか違う気がする。ずっと読んでいたら癖になるような感じもしていて、なんだか不思議な作品だ。

課題4完成稿 大須健さん「おかしいとは思わねぇか?」

おかしいとは思わねぇか?

 この話は申し訳ないが、なんとなくわかるような気がしつつも、はっきりとなにかがわかるともいえない、と受け取りを少し難しく感じたお話だった。部分部分としてはわかるのだが、このシュチュエーションにうまく着いていけなかった感じがしている。作中の会話の内容や、シュチュエーションそのものが悪いとも思わない。こういうマンガを試そうというところには共感があるのだがちょっと惜しい感じがした作品だ。

課題5ネーム 大須健さん「筆談!伝われ!最後の夜!」

筆談!伝われ!最後の夜!!

 このお話は切なくてよかった。話の終わりで姫の魚の尻尾が生えてしまっているところが、またそれが絵で説明されているところがこの作品世界の広がりを感じさせるところだった。なんともせつない余韻があると思う。このお話はぜひ完成稿を読んでまた感想を考えてみたい。

課題5完成稿 大須健さん 筆談!伝われ!最後の夜!!

 このお話は個人的に、しゃべれないキャラクターの本当の声を聞く、という話の骨格に納得感があった。またこの等身での描き方は難しかったのではないかと思うが、よくがんばって描かれたなと感心した。このお話にはこの等身があっていると思う。ただ一方で、非常に丁寧に書かれているとは思ったものの、前半のギャグっぽくテロップで進む部分とオチのシリアスな部分は少しかみ合いが悪いようにも感じる。後半のシリアスな部分がよくできると思うので、もう少しそこを信じて振り切って描いて欲しかった、というのが率直な感想かもしれない。

課題6ネーム 大須健さん蛍光灯を割れ!

 このお話は、個人的には彼女の無茶振りと笑顔との両義性が人間くさくて面白いと思った。「『わたし』と『社会』/どっちが大事?」などのセリフはシュールで面白い。ただ、オチはこれはこれで面白いとは思うのだが、爆発オチなどに近い投げっぱなしな雰囲気のあるオチで、終わらせ方に困ったのかなとは思った。とはいえ、この話は十分面白い話だと思うので、ぜひ完成向けてがんばって欲しい。

課題6完成稿 大須健さん蛍光灯を割れ!

 このお話はおもしろいと思った。なんとも形容しがたい不思議なお話だが、10,11pの能面のような主人公の「やらねば」から始まる画面は、主人公の行動のシュールさとヤバイ要求への期待を向ける彼女の無垢さとが画面で表現されていてかなりレベルの高い表現になっていると思う。一方、おそらく、犬がしゃべるシーンはさらに異常事態が起きたことで主人公の言動が小さいできごとになったという意味合いの場面だと思うが、リアクションがもっとはっきりしていないと場面の意味がわかりづらいと思った。ここはオチにもフリにもつながっている重要なシーンだと思うのできっちり意味を強調させないともったいないと思う。ただ、このマンガは不思議な高揚感があり、この作品でしか味わえないおいしさがあるマンガだった。

課題7ネーム 大須健さん元カノForever

 このお話は軽くて読みやすい話だと思った。元カノとの思い出の品が壊されてしまうところが主人公にとって話が前に進んでいていいと思う。一方、一見細かい話だが、個人的には5年前の彼女のことが忘れられない、という設定は現実で考えるとそうわからないでもないと思えており、それを作中で”おかしい”とするなら、その異常さみたいなものをもっと強調させたほうがストーリーとしてはわかりやすくなるのではないかと思った。本当に破壊してもらったほうがいいな、と読者に了解してもらってから破壊神には暴れてもらったほうがスッキリするのではないだろうか。

課題7完成稿 大須健さん元カノForever」 

 このマンガはリアルな絵柄がシュールで面白かった。破壊神にいちいちビンタされる主人公が面白い。内容的にもちょうどネタになるいいくらいの内容だと思う。一方、個人的には破壊神が”こいつはなにものなんだ”と少し気になってしまった。うまく言語化できないが、演劇を見ているような感じというか、抽象的な世界観を感じると思った。よしあしはあると思うが、個人的には抽象的ならそれはそれでもっと振り切ってもらえると楽しめるかもしれない。ただ、これは人によると思う。このマンガはよくできていると思うので、次回からもぜひがんばってほしい。

課題9(合同誌) 大須健さん「発汗宇宙人と不良人間」

 このお話は、きっちりとお話がまとまっているよいマンガだと思った。お話として変な部分もちゃんとあり読み応えのある内容だった。言葉にするのは難しいが、こういう変な話をちゃんと説明しているマンガがいいマンガだと個人的に思う。

課題10ネーム 大須健さん男の萌え袖が許せない。殺す。

 このお話はおもしろげではあると思ったのだが、ちょっといろんな要素があってごちゃごちゃした感じがあっただろうか。面白いような気がするのだが、うーん。たぶん男性の主人公がいつも同じような感じに映るのだと思う。これはこれで一つの作風だとは思うのだが。

課題10完成稿 大須健さん男の萌え袖が許せない。殺す。

 読み方をわざと複雑にしているっぽいマンガで感想もなんだか難しいが、でも変なエピソードが続く中でリズム自体は読みやすいので思ったよりもさくさくと読めた、というのが感想ではないかと思う。普通に面白いマンガだと思うが、もっとへんなことが起こって面白くなるのかな、と思ったところで引かれてしまうようにも映り、もう少し押し出しの強さがほしいとは思った。ただ、どういうつもりで描いているかによるのだと思う。

最終課題ネーム 大須健さん痴話喧嘩無敗伝説」 

 テンポがよく、内容も悲しさと馬鹿さがあって面白かった。最後のエピソードの無声演出がシュールで特に面白い。ただ、全体として読むとちょっと長いようにも思える。一つ一つ面白いのだが、思い切ってどれかエピソードを削ると読み味が軽くなるのかもしれない。とはいえ、持ち味がよく出ている内容だと思う。ぜひ完成に向けてがんばってほしい。

最終課題完成稿 大須健さん痴話喧嘩無敗伝説」 

 このマンガは背景や人物の作画が非常に凝っていて、また内容もネームに比べてテンポがよくなっているように感じた。特に最後のエピソードに抜け感があるのがよかった。個人的には面白く読んだマンガなのだが、ただこういう同じテーマの短編が並ぶタイプのマンガを読む媒体があまり想像がつかないとも思う。アイデアが一つ一つ富んでいるのでそれぞれのエピソードは面白くはあるのだが。人によって反応が異なる作品のようにも思える。個人的には、マンガとしての画面作りや面白いエピソードをこれでもかと詰め込んでいる点を評価したい作品だ。

 

藤原 ハルさん

課題1ネーム 藤原 ハルさん「さいごの散歩」

さいごの散歩 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はよくできた作品だと思った。表現の幅が広く、犬がすでに亡くなっていることが5pの「残念でしたね」「どうしたの?」「ああ……」の間接的なやりとりであらわされているところなどは感心しながら読んだ。一方内容的には”主人公夫婦が亡くなった犬とさいごの散歩に行く”という、夫婦が重要そうな描き方のわりに特に夫婦仲になにか変化が起こる内容ではなかったので、そこは少しあれっと思ったポイントだった。個人的には夫のキャラクターがもう少し見たいとは思う。ただ、単純にわたしの経験がなくて理解が及んでいないだけのようにも思うので、これはこれでよいのだと思う。この作品は完成稿になったものが読んでまた感想を考えてみたい作品の一つだ。

課題1完成稿 藤原 ハルさん「さいごの散歩」

さいごの散歩 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは大変よいと思う。ネームでは夫の印象があまりよくなかったところが修正されており、ペットへの感情に気持ちが向かいやすい適切な描き方になっていると思う。もしあえてなにか言うなら、さらに夫に何か動きを持たせられると家族の話しとして奥行きが生まれるとは思う。やはり、この夫がどういう人物なのかはネームの時点から継続して気になると思った。

課題2ネーム 藤原 ハルさん「きらいなあのこ」

きらいなあのこ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、ある種の典型を使って飽きないようによく工夫されている作品だと思う。とくに、今回の課題テーマが「嫌い」だったことに対して、10pで「こんな私が/大嫌い」と回答を持ってくるところはひねりがきいていて、おっと思った部分だった。ただ、もう一方でこれだけ丁寧に描けるならもっと内容的にはふくらみがほしいとも思う。読者のわがままではあるのだが、たとえばこの話は主人公の「こんな私が嫌い」が中心になっている話だと思うので、なんとかオチに向かってその気持ちの部分に話がまた戻ってきてほしいなあ、と思ったりする。最後に主人公の小梅川さんからもなにか一言気持ちの吐露があると一読者的には話しの奥行きや納得感が感じられてうれしいのかもしれない。

課題2完成稿 藤原 ハルさん「きらいなあのこ」

きらいなあのこ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は個人的に好きな作品だった。主人公の表情の変化と内容のポップさが魅力なのだと思う。主人公がオチで反応をしっかり返すキャラクターになっていて、性格の情けないところも含めて魅力に映るよいキャラクターだと思った。十分面白い作品だと思うが、あえて気になったところをいうなら、お話としては少しこじんまりとしていることは感じた。大げさな出来事ではなくてよいので、もう少し固有のドラマが作品に組み込まれていると印象に残る作品になってゆくのではないだろうか。今後、もしトライする機会があれば、ぜひわかりにくくてもいいので挑戦的な作品も読んでみたいと思う。

課題3ネーム 藤原 ハルさん「ふ・れる」

ふ・れる | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは細かい部分で面白い感じにさせる描写があり、個人的には楽しませてもらったネームだった。テンポのよい話の中にシリアスな内容と二人の関係をめぐる読んでいる側が恥ずかしくなってしまうような恋愛の内容とがうまく組み込まれていて、個人的にはこういうマンガがよいと思う描き方だ。と、ネームを読む限りでは肯定的に受け取ったのだが、まだネームの段階で個人的には状況がイマイチの見込めていない部分もあり、完成すると良くも悪くもまた印象が変わるようにも思う。でもそれを見越した上で言えば、これはスッキリしていていい内容なんじゃないだろうか。

課題3完成稿 藤原 ハルさん「ふ・れる」

ふ・れる

 このマンガはなんだか変なことをしていて面白いマンガだと思った。2pのガスマスクの図だったり、6pの女の子の「キス/するのかな」というコマの表情だったり、少しずつ予想と違う描写が入っていることが楽しく、こういうことをマンガでして欲しいんだとうなずくように読んだ。すでに十分よく出来ていると思うが、あえて言うなら個人的には4pから7pにかけてセリフとキャラクターの連続にやや圧迫感があるようにも感じる。完成度が高いゆえの話ではあるが、もしさらになにかというならここはさらに工夫があってもいい部分なのかもしれない。

課題4ネーム 藤原 ハルさん「1/720の初恋」

1/720の初恋

 この話は面白かった。後半の森ちんのリアクションがしつこくて、こういう過剰さはマンガらしいと思う。今回の課題ネームの中では特に気に入った作品の一つだと思う。ほとんど言うことないネームだと思うが、タイトルにもなっている森ちんの粘菌好きの設定は面白いと思うのでもう少し内容にかかっていて欲しいとも思う。なんとなく森ちんと吉田さんは相性が良いキャラクターだとは思ったが、欲を言えば森ちんが吉田さんを好きになる部分にもう少し共感がほしいのかもしれない。

課題4完成稿 藤原 ハルさん「1/720の初恋」

1/720の初恋

 このマンガは気合が入っていて好感を持った。フキダシ等の細かい演出を伴う画面のつくりがこれだけ工夫されていることはすばらしいことだと思う。一方、これだけ良くできているからこそ気になる部分だが、森ちんが吉田さんに魅力を感じる部分については少し共感しづらいところがあった。森ちんの性の目覚めがギャグっぽく描かれている部分(心象風景として宇宙に行ってお漏らしする部分)と吉田さんの魅力の描かれ方に少しひねりが入っているところ(「性格キツイ」ところがあえてよい、という描き方)の、両方ともについていくのが少し大変、という感じがした。どちらか一方に絞るほうがベターではないかと個人的には思うが、読み手によっても意見が違うはずではっきりとはわからない。
 とはいえ、この指摘も工夫がされていることに比べたら些細な話で、これだけ気合を入れて描かれていることが本当にすばらしいと思う。今後も色々試行錯誤したマンガが読ませてもらえると一読者的にはうれしい。

課題5ネーム 藤原 ハルさん「人魚の選択」

人魚の選択

 このお話は、特にオチがマンガ的な演出がよく効いていて読みやすく、また人魚が恋をする相手が実は男性が好きというアイデアに面白さと切なさがあると思った。ただこういう叙情的な内容の場合、もう少し主人公の気持ちの移り変わりがはっきりと描かれて欲しいようにも感じる。もしかすると、王子があまりにも姫のほうを向かないことに話の動かなさを感じたのかもしれない。(生き返らせてしかも気持ちを譲ってくれたことへの感謝とかあってもいいのに!と思う。)ただ、わたしは男性で、このお話の勘所がイマイチつかめていないようにも思う。

課題5完成稿 藤原 ハルさん 人魚の葬送

 このお話はマンガ的なつくりがよくできている作品で、わたしはこの話の内容がそう読み取れたとは思えていないのだが(そしてこの場合それで良いと思うのだが)、それでもなんとなく最後まで楽しく読めてしまうのですごいと思った。一方で同じことの裏返しだが、わたしが男性読者だからかもしれないが、冷静に考えるとなぜ主人公がこの王子らのために見返りなく尽くすことができるのかがいまいちピンとこないとも思った。とはいえ、こういう作品はフェチに訴えるタイプの内容に見えるので、ピンと来た人を読み手として求める作品ではないかと思って読んでいる。個人的には、毎回これだけ精度高く作品を投稿していること自体に好感を持っていて、非常に応援している気持ちだ。

課題6ネーム 藤原 ハルさん「麦茶とパリと君の嘘

 このお話は今回の課題作品の中では一番心に残るお話だった。こういうある種のベタで作られているお話は形式によって感動させられるところがあると冷静な目線は持っているつもりなのだが、とはいえ、実際に読むとタネがわかっていてもぐっとくるものだと思った。内容については、個人的にもう少し男の子の告白に意外性があってほしいと最初に読んだときは思ったのだが、何度か読むと、人の記憶に残る出来事はこのくらいサラっとしているものなのだ、というお話とも読め、そう思うとまたぐっとくると思った。このお話は女の子へのタッチが優しくそこに作者の気持ちが見えると思う。ぜひまた完成稿で読ませて欲しい。

課題6完成稿 藤原 ハルさん「麦茶とパリと君の嘘

 このマンガはなんだかおもしろいと思った。まず普通にレベルの高いマンガで、お話がまとまっていて画面も充実しているのでマンガとして単におもしろい。ただそれだけでなく、一見すると男性向けのマンガとして男性中心の描き方がされているようでいて、実際にはヒロインの女性を中心にいろんな設定がされているように読め、そこがおもしろいと思った。たとえば主人公の男性の童貞っぽい描かれ方は実はこれはヒロインにとって魅力的な男性像として描かれているように思える。こういった表現は難易度が高い表現であまり見られないと思う。一方、そのことの裏表だと思うが、うそばかりつくはずのヒロインが主人公の好意にときめいて”ありがとう”と伝える一連のストーリーは、それはそれで素直すぎるようにも思えた。うそをつく人はもう少し心の開き方が下手なのではないか、などと考えた部分だった。ただ、これはドラマのヒロインにはもっと謎を抱えていてほしい、というわたしの男性読者的な願望によるものかもしれない。

課題7ネーム 藤原 ハルさん「約束と運命と

 この話はくだらない話をちゃんとおもしろおかしくしているところに、なるほどと思いながら読んだ。くだらない内容の中で今回の課題テーマにもまじめに答えている部分があるのがいい描き方だと思う。また、16pのマンガならこのくらい軽いトーンがよいのかなとは思うが、個人的には主人公男の子の「本当は正面から挑むことが怖いだけだった」という部分にはもう少しなんらかの回収があると、この作品が主人公にどうなってほしかったのかがわかってうれしいようには思う。ただ、このマンガはこれはこれで16pのマンガとしては成立していると思うので、葛藤の部分をどう回収するのかはまた別の話なのかもしれない。

課題7完成稿 藤原 ハルさん「約束と運命と

 このマンガは非常に良くできていると思う。ネームから変更された演出がよく、とくに11pから14pにかけてのための演出が非常にマンガっぽいものだと思った。個人的にオチはなにかもう一ひねりあるとうれしいようにも思ったが、このページ数なら実際的にはこれくらいでいいのではないかとも思う。気持ち、主人公にもう少しプレゼントがあると読んでいて達成感があるのかもしれない。とはいえ、これはこれでぜんぜんありだと思う。ぜひひきつづきがんばってほしい。

課題8 藤原 ハルさん「きらいなあのこ(改稿)

 このマンガは非常によくできていると思う。元のマンガもよかったが、こちらのほうがキャラクターが尖っていて印象に残るように感じた。一方、個人的な好みをいうと、陽キャの女の子が主人公を追いかける以前のバージョンでの展開のほうがやさしい世界で好みだったかなとは思った。このマンガでは、教室に戻った主人公が自分にとっていやなことを耳にする(そしてそれに特に触れられない)ので少しかわいそうだなと思った。ただ、このマンガはこのマンガでちゃんと話の筋があって成り立っていると思うので、展開に対する好みの問題だと思う。そもそも、こうして元のマンガの別のバージョンを作ろうという気概があること自体がよいことだと思う。

課題9(合同誌) 藤原ハル さん「透明な君との距離は」
 
このお話は、さっくりしていて読みやすいいい話と思った。アンソロジーの最初にこういった爽やかで軽い話が来ると、その後の警戒感が薄れてよいと個人的に思う。
 それと、矢野川さんみたいに距離感がバグってる女の子って、割と「そういうキャラクター」として無神経な感じのキャラで固定されてしまいがちではないかと思う。この作品みたいにそういう属性を持ったキャラがちゃんと恋愛を通じて最終的に距離感に変化を受け取る物語ってそういえばあまり記憶にないぞ、と思った。短いながら新鮮なことに取り組もうという気概がある作品ではないかと思う。

課題10ネーム 藤原 ハルさん「部屋の恋

 このマンガは壁の勢いのある登場や家主の再登場でのオチなど、人物を使わない構図によるリズム感がよかった。また、今回のお題への答え方がいいマンガだと思う。たしかにこの内容は商業を目指す場合には描かれない内容で、こういう機会にふさわしい内容に思える。

課題10完成稿 藤原 ハルさん「部屋の恋

 ネームと比べると情報量が多くなった結果重たいようにも感じた。完成稿を最初に読んでいたらまた感じ方が違っているのだろう。とはいえ、話がサクサク展開していてバカバカしい話で読んでいて楽しかった。こういうバカバカしさを自分の人生にもうまく取り入れたいものだと思う。

最終課題完成稿 藤原 ハルさん「夜を泳ぐ魚たちは」 

 このお話は亀を使ったスケール感の広さや、お話の構成や言葉選びのうつくしさ、またマンガとしての精度の高さと、どこをとってもすばらしさしかないお話だった。筆舌に尽くしがたいとはこういう作品のことを指すのかと思った。
 あえてひとつ感想をあげるなら、物語の終わりで主人公の女の子の股から血が流れるシーンは意味深く、その意味についてはいろいろなことを考えた。
 作品にはそう描かれていないが、おそらくこの主人公は親友が亡くなって彼氏の借金を背負ってから生理が来ていなかったのだろうと思った。去勢せざるをえなかったブンジさんに対比するように主人公の体がラストで性的な健康を取り戻す対比の構図がきれいなのだが、しかし、そこで取り戻された健康は主人公の苦難を解決しているのではなく、むしろ主人公が自分自身(の体)と向き合わざるを得なくなったことを示唆しているように見える。普通、自分自身の傷に向き合うことはそれ自体がマイナスのイメージを伴いがちだが、この作品では同じその状況を自分自身の傷を受け止められる状態まで回復したこととして描くことで傷(この作品の場合けがれといったほうが適切かもしれない)を肯定的に描こうとしている。これはマイナスから0へと向かって行く人間を描くこの作品の想像力の結果なのだと思う。
 自分がこのマイナスから0へと回復するイメージが重要だと思うのは、普段人は生活が安定している間はあまり気にしないが、ふとした拍子にそれまでできていたはずのことができなくなったり、そもそも”普通どおりにすごす”ということを見失ってしまうタイミングがあると考えるからだ。たとえば、人が疲れて自分自身に向き合うことが難しくなって問題を放置し始めたとき、実は先送りにした問題の内容そのものではなく、そもそも正常に判断するということがどういう状態だったのかのイメージがだんだんと壊れていってしまうことに本当の深刻さがあるように思える。この作品で描かれる、主人公の未果の置かれている過酷な境遇とそこからの復帰を描く一連のストーリーは、そういった失われてしまった正常な状態をイメージする想像力自体の回復を図っているように思える。
 本来このお話は主人公がブンジさんの死に涙し感情を取り戻す、というところで終わっていていいはずの内容ではないかと思う。しかしこの作品ではそこを超えて、取り戻された感情が主人公に何をもたらしたのかまでを描いている。そのとき、つまりマイナスが0になるイメージが回復されたときに主人公に認識されるのが自分自身の”血”だということからは両義的な意味が匂ってくる。これは直感的な捕らえ方に過ぎないが、この”血”は”向きあうことが困難なものとしての生”の比喩だと考えられるのではないだろうか。
 この作品からは、生きて行くことを手ごわいことだと認めた上で、その中でどうやってその手ごわさに向き合う回路を見出すことができるのか、という実験があるように思う。その向き合う回路が見出されるのは満たされる人間の中からではなく、むしろ悲しみや現実を背負う欠損を持つ人間たちの営みからこそ想像力の余地として取り出すことができるのではないか。回復の先に困難が匂わされるというこの作品の終わり方からはひょっとしたらそんな思考が読み解れるのではないだろうか。

※放送後不十分と思い、大幅加筆修正しました

 

高月晃太さん

課題1ネーム 高月晃太さん「404 Not Found

404 Not Found | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは内容が全然わからないと思ったのだが、そもそも内容を読んでもらいたいタイプの話ではないようにも思う。なんだかこういうちょっとSFチックな世界観で場面が飛び飛びに出てくるタイプのマンガは読んだことがある気がする。とはいえもう少し、なにがどうなっているのかわかる内容だと一読者としてはついていきやすいようにと思う。個人的には嫌いではないタイプの内容なのだが。どんなペン入れになるのかあまり想像ができないというものあるが、単に絵が入るとよい感じになりそうだとも思うので、一度完成したものを読んでみたいネームだ。

課題2ネーム 高月晃太さん「部活だから」

部活だから | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話は、なんだかよくわからないのだが良い話だと思った。最後先輩がゲジゲジをはたいてしまうところが読んでいても意外で、キャラクターがおもわずしてしまったことがそのとおりに描かれている面白い描写だと思った。一方で、個人的にはこういう空気感を読ませるタイプのマンガをあまり読みなれていないこともあり、途中から先輩がムシを怖がるようになる部分は少しついていくのが大変に思った部分だった。とはいえ、作品世界の空気感のようなものが伝わってくる良い作品だと思う。

課題2完成稿 高月晃太さん「部活だから」

部活だから | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームの段階ではよくわからないと思っていたのだが、完成稿になってわかる内容だと思うようになった。からかうためにムリしちゃった先輩がかわいい話なのだと思う。キャラクター同士のやりとりもかわいいのだが作画も軽いタッチでたいへんよい。演出もうまくはまっていて完成度が高い作品だと思うが、個人的にはこの作品で描かれているフェチみたいなものがもう少しわかるようになるともっと引き込まれるようになるとは思う。単にわたしがこの作品の魅力をうまくつかめていないだけなのかもしれない。この作者の方の作品は次もまた読んでみたい。

課題3ネーム 高月晃太さん「恋人つなぎって気持ちいいの?」

恋人つなぎって気持ちいいの? | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は二人のやり取りがかわいいところに魅力があるお話だと思う。クライマックスになっている主人公のテレ顔がよくキマっていると思った。ただ一方で、会話で中身が続いているので個人的にはもう少し話を牽引してくれる味付けが欲しいとも感じた。特に話の受け手の宇野さんにもう少しハッキリした魅力があると、主人公にとっての相手に好意を抱く動機がわかり、内容への親しみやすさが上がるように思った。とはいえ、すでにこの作風が好きな人は好きな内容になっていると思う。個人的にも、この作者さんの作品を読むうちに、だんだんとどういうことを描こうとしているのかわかってきている気がするので、ぜひ今後もこういうかわいいキャラクターが出てくるお話を読ませてほしい。

課題3完成稿 高月晃太さん「接触の時間」

接触の時間

 この手の女の子が会話している系のマンガは自分では不得手だと思っているのだが、不得手なりにこの作品は女の子がかわいくていい作品じゃないかと思った。ただ、主人公の自問自答の文字ベースになっている部分(具体的には5p最後のコマや9p全体)は個人的に少し読みづらく、わたしの場合は主人公の考えを一生懸命読む形になった。ただ、ここは単にわたしが読み方が下手なんだと思う。読んでいてやりたいことは伝わってくるしこれはこれでマンガとしてよいものだと思うので、今後もこの調子でがんばってもらえたらうれしい。

課題4ネーム 高月晃太さん「魔法少女現実を見ろ」

魔法少女現実を見ろ

 このお話は、個人的には難しく感じるお話だったがオチがほっこりしているところが良かった。分析的な見方すぎるかもしれないが”現実をみよう”という物語の最初に与えられる命題の解決が、最終的に人の温かさによってフィクションの終わりに着地する構図が良いと思う。一方、わたしの場合は話の後半になってやっとこの世界が魔法のない現実の世界だとわかったので、そこは前半でわかると個人的にはうれしい部分だと思った。個人的に、話の主張として一本筋が感じられるお話で好感を持ったお話だった。

課題5ネーム 高月晃太さん「にんぎょひめ」

にんぎょひめ

 このお話は、ファンタジーな世界と女の子の姦しさの組み合わせ良く、それだけで楽しく読めた。特に2,3pの海面に顔を出す主人公がかわいい。ただ、8,9pのくだりは意味的にちょっとわかりづらかった。特に”~なければ”が続くところがよくわかっていない。とはいえ、楽しさやかわいらしさがある、この作者の方の作風ともよく合っている内容だと思うので、ぜひ完成稿もがんばって欲しい。

課題5完成稿 高月晃太さん にんぎょひめ

 このお話は女の子がかわいくてお話としてもそこでキュっとまとまっているので個人的には読みやすかった。女の子がかわいいとそれだけで読む手がすすむんだな、と思うマンガだった。ただ、ネームから完成稿になって変化したオチの部分は、投げっぱなしオチがきた、とちょっと思った。これはこれでふざけた感じがあって面白いと思うが、冷静に読むとオチのつけかたに少し困ったのかな?と思えたのだが実際はどうだったのだろう。これはこれで成立している感じもする。

課題6ネーム 高月晃太さん「保健室で許して

 このお話は、かわいい女の子二人が会話しているだけで読めるお話だと思って読んだが、さらに、女の子が自分の顔面を殴ってしまう物語の展開も予想外で面白く読んだ。一方、オチは心が開くようなもう少し柔らかい解決が欲しいように思った。もしかしたら終わらせ方に困ったのかもしれないが、これをどういう話として表現するかは作者の方にしか決められないことなので、そこはがんばって欲しいと思う。けしてつまらないお話ではないと思うので、ぜひ完成に向けてがんばって欲しい。

課題7ネーム 高月晃太さん「ヒマつぶし

 このお話は不思議な話だと思ったが、面接だけ受けて採用をけるという趣味(?)を持っている主人公の闇を感じる。このお話の設定にはある種の過激さがあるのではないかと思ったのだが、そういう過剰な部分はよいと思う。ただ、面白い感じはするお話なのだが、個人的にアイデアの源やキャラクターの着地のイメージがあまりわかっておらず、全体的につかみどころはわかっていない感じだ。

課題9(合同誌) 高月晃太 さん 「だてめがね」

 このお話はちゃんと男女の付き合いの話を持ってきていてよかった。今までの同じ作者さんの作品の中では男女の恋愛をはっきり描いている内容は珍しいのではなかっただろうか。なのでなかなか好印象だったのだが、最後、なにかお話が終わりきっていない感じがあって、そこが少し不満足には思ってしまった。この主人公の男の子はがんばって思いを伝えているので、受け取る側の女の子がそのことにどういう反応をするのか、というところが個人的には見てみたかったポイントだと思う。とはいえ、キャラクターのリアリティに迫る部分があるお話で、これはよいものがある作品だと思う。

課題10ネーム 高月晃太さん「ねえ ワンピース

 このネームは、個人的に絵がきれいで気に入った作品だった。いままでと違うタッチの絵柄で、関連して内容もいままでと少しテイストが違っているように感じる。内容的には、ワンピースを使っているところがなぞにディティールが深くて面白いと思う。ただ、それを使ってどういう表現をしようとしているのかまでは自分にはうまくつかめないとも思った。宗教のメタファーとしてワンピースを用いているとのことだが、なんだかそれ以上の意味を感じさせる(読者が勝手に想像してしまう)雰囲気があると思う。

最終課題ネーム 高月晃太さんなかなかキスしないカップル」 

 この作品はとてもよかった。シンプルな展開がわかりやすく、その中で少しずつキャラクターらしさを描いたり、クスッとなるようなシーンがあったりと、マンガとしての厚さを感じる作品だった。特に家に帰ってお互い連絡を入れるオチがいいと思う。ぜひ完成したものをまた読ませてもらいたい。

 

東京ニトロさん

課題1ネーム 東京ニトロさん「091101」

091101 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は、おそらく内容的には9.11を日本人としてどのように受け取ればよいのか、というようなテーマがあるお話だと思う。現実としての9.11を考えるとシリアスにならざるを得ないが、他の世界線でのフィクションとして9.11を描くことで、現実の9.11の持っていた物語的な力(たとえば貿易センタービルの映像が単に映像的な迫力があったとか、事件にまつわる市井の人々のドラマチックなドキュメンタリーが情報として大量に流れたとか)を取り出して受け取ける試みがある作品なのだろう、と思って読んだ。
 ただ、そういった試みは個人的には評価したいが、このお話しがマンガそれ自体としてまとまっているとは思えなかった。手癖のようなものが先行していて、どこに向けて描くかがあまりコントロールできていないのではないか、と個人的には思う。作画的には申し分ないと思うので、一度、お話しとしてちゃんと形になっているものを読んでみたいというのが個人的な感想だ。

課題1完成稿 東京ニトロさん「091101」

091101 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、ネームの内容を壊さずに話としてちゃんとまとめようという姿勢がある内容で、そのことに好感を持った作品だった。内容的にも、主人公が自分の父親の死をフィクションへの傾倒と重ねる内容で、きれいな構図的だと思う。この描き方なら、どういうことを描こうとしているのかわかると思った。細かな指摘などはさらにできるのかもしれないが、個人的にはあのネームからよくがんばって描ききったとエールを送りたい作品だった。

課題2ネーム 東京ニトロさん「ミイラ対巨大ゴキブリ(船橋編)」

ミイラ対巨大ゴキブリ(船橋編) | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはこれはこれでいいのではないかと思うが、個人的にはちょっとわかりにくく感じた内容だった。話の流れ自体はわかりやすいと思うのだが、自分のような真面目なタイプ(真面目なのがよいとかいう話では全くなく)は読んでいて「なぜ主人公がミイラ?」とか「ブレンダン・フレイザーとはだれ?」とかいちいち気になってしまって、作品に対する距離感の持ち方が難しかった。特定の読者に向けた内容になってしまっているのではないかと感じるのだが、わたしがわかっていないだけでなにか別に意図があったりするのだろうか。

課題3ネーム 東京ニトロさん「ハーツ。」

ハーツ。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は設定も悪くなく面白そうな話だと思ったのだが、お話としては途中で終わっているようでちょっとよくわからなかった。実際に途中で描き終わっているのか、それともこれはこういうものとして完成形なのかもあまり判断がつかない。つらい出来事に悩む主人公が最終的にどこに至るのかがわかるとお話としてはよいのだと思う。がんばって欲しい。

課題4ネーム 東京ニトロさん「グランド・ツアー」

グランド・ツアー

 このお話はよくできていると思う。画面的にも読みやすく、また現実の出来事を使うことで物語としての余韻をうまく感じられる作品だと思った。一方、少し気になったのは11pのモノローグで入っている「あのとき先輩に/ちゃんと伝えられていたら/未来は変わったのだろうか?」というセリフで、ここは主人公が具体的になんのことを言っているのかがよくわからなかった。ここははっきりと内容が描かれていたほうがいい部分ではないかとおもうが、微妙なニュアンスを含む部分で実際の表現に落とし込むことが難しい部分なのかもしれない。

課題4完成稿 東京ニトロさん「グランド・ツアー」

グランド・ツアー

 この作品は、現実の事件や出来事を題材にしてこういうお話が作れるのだと感心したお話だった。お話の作り方としても回想の中で時間が経過するところが技巧的で、12pの現在と過去が入り混じった不思議な空間の演出がうまくできていると思う。一方で、個人的には16pのマンガとしては少し展開が急だとも感じる。このくらいしっとりした内容なら、もう少しゆっくり展開して主人公の感情に共感する余韻を残せるとよいのだろうと思う。とはいえ、こういう作風はなかなかやろうと思ってできるものではないと思う。その中でとてもよくやっている作品だと思う。今後も応援している。

課題6ネーム 東京ニトロさん「ワナビ16歳が生成AIと世界を救うはなし。

 このお話はなにかノリがとても良いところがあり、キャラクターの掛け合いもかみ合っていてとてもエンタメ的だと思った。特に主人公が小説の梗概をずっと気にしていることがよくわからなくて面白い。惜しいのはやはり話としては終わりきっていないことで、読者としても未完のものにはコメントがしづらく、きっちり終わらせて欲しいと思う。きっと創作の苦悩があると思うのだが、読者としては応援することしかできないのが口惜しいところだ。

課題9(合同誌) 東京ニトロ さん「NEXO」

 このお話は、コメントが難しいと思ったのだが、決して悪くはないのだがでも個人的には何がおきているのかよくわからないマンガだと思った。だれがどこでなぜなにをしているのか、という基本的な要素を確認しようとマンガに目を落としても目が滑ってしまう。言い方が難しいが、作品全体にかっこよさはあるのだが、かっこよいところで読み手を捕まえようとしていて、基本的な部分での読み手の着地を避けているような印象があり、そこが印象が悪い。このお話が読み手の着地を避けるように思えるのは、はたして自分だけが感じていることなんだろうか。

 

たにかわつかささん

課題1ネーム たにかわつかささん「委員長とテキトー円花」

委員長とテキトー円花 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは話の内容の方向性としてこれで問題がないと思う。女の子のなくしたピアスが男の子とのかかわりの中で見つかる、という結論に向かって全体の話が用意される作りになっていて、話づくりとして好感を持った。ただ、最初の3pの流れは話全体の方向付けとしては少しわかりにくいように思う。とくにピアスをなくしたことについての男の子の反応が”校則違反だ”だけではちょっと淡泊ではないかと思った。
 とはいえ、このお話しは個人的には今までのたにかわさんの作品の中でも内容の整理がうまくいっている内容だと思う。個人的に、このネームはどんな方向性の話が描きたいのかが見えるように思ったネームで、去年から見ていた読者としてうれしく思った。

課題1完成稿 たにかわつかささん「委員長とテキトー円花」

委員長とテキトー円花 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 個人的に、この作品は今回の完成稿の中でも読めてうれしかった作品だった。軽く読んでも深く読んでもそれぞれに楽しめる、マンガとして好ましい描き方をしている作品ではないかと思う。
 あと、個人的にはネームの段階では委員長が少しツンツンしている印象も受けたのだが、これはこれで硬い反応を返すキャラとしていいのではないか、と今回完成稿を眺めていて思った。今までたにかわさんの作品ではあまり硬派な男子キャラはいなかった覚えがあるが、改めて振り返るとこういう硬い感じのキャラクターのほうが優柔不断な感じの男子キャラより正直な感じがして気分がよいかもしれない。またそのおかげか作品全体としても正直な感じがあって、特に今回の作品はよかったと思う。

課題2ネーム たにかわつかささん「たえろっ!富永先生」

たえろっ!富永先生 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話は何度読んでも面白い。教師としてのポリシーを全うしようとする主人公の話だとも読めるし、なにより切れてしまった主人公に笑わさせられてしまう。よくよく読んでみると、コサキ君はたしかにうざったい態度はとっているものの、実は怒られて当然といえるほどのこともしていない(だって殴るとか暴言を吐くとかはしていないのだ)のに結果的に怒鳴られてしまったところも、なんだか状況のリアリティを感じるところだと思う。この作品は個人的に共感がある内容で非常に気に入っている。教室でも選出として選ばれたとのことで完成稿が楽しみだ。

課題2完成稿 たにかわつかささん「たえろっ!冨永先生」

たえろっ!富永先生 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は本当によいと思う。先生とコサキ君のどちらからも人間らしさを感じる内容だった。現実ではトラブルになるような出来事をキャラクターの魅力を引き立たせる場面として描いているところが気分がいい。個人的にも共感がある内容で、読んでいて楽しい作品だった。

課題3ネーム たにかわつかささん「片岡さんのやらかいところ」

片岡さんのやらかいところ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話はコンパクトにまとまっていてよいと思う。先の展開がある程度よめても楽しめるこういった作品は、個人的にはマンガとして好ましいと思う。一方で、やわらとその友達の佐々木のどちらが主人公なのかが少なくとも今のネームの段階では実はわたしはうまく読めておらず、単にわたしが読めていないだけなのか作品のほうが整理が求められる部分なのかわからないが、しかし読んでいて気になった部分だった。やわらの友達の佐々木が主人公、という理解でよかったのだろうか。個人的にはマンガらしくてよい内容だと思っただけに、だれの目線で読むといい内容かがもう少しわかったらうれしいと思うネームだった。

課題4ネーム たにかわつかささん「梅雨空と真っ黒」

梅雨空と真っ黒

 このお話は、雨の中絵を書いている少女、真っ黒な絵のなぞ等の設定が良かった。設定だけで作品の世界観に引っ張っていく力があると思う。ただ一方、二人のキャラクターの感情がどちらも少し重い印象があり、個人的にキャラクターの心情の流れは少しつかみづらかった。どちらかというと悩んでいるおじさんの悩みが晴れる話だと思うので、少女の側のキャラクターに安心感があるとバランスはよいのかもしれない。ただ、ここは読み手によって感じかたが異なってる部分だと思う。個人的に、15pの主人公の「つかれてました・・・」というセリフが、この作品の意図するところを感じられる良いシーンではないかと思う。

課題5ネーム たにかわつかささん「方向音痴の人魚姫」

方向音痴の人魚姫

 このお話はちゃんと冒険をしているところが良かった。とくにクジラの登場がクライマックスへのフリになっているところが読んでいて楽しい。よく出来ている内容で、ネームの段階では特に言うことないと思う。この作品は絵がつくとまた感想が変わりそうな作品で、ぜひ完成稿を読ませてもらいたい。

課題5完成稿 たにかわつかささん 方向音痴の人魚姫

 このお話はわかりやすい冒険のお話で良かった。素直に描かれている感じのあるいい作品だと思う。一方、これはこれでいうことないと思うが、個人的には主人公ら二人が一緒に行動している理由はどこかで明かされて欲しいようには思った。良い話だとは思ったのだが、自分とは少し関係ないことのように読めてしまったところがあった。とはいえどちらかというと個人的な感想で、これだけよくできていればいうことないのかなとも思う。

課題6ネーム たにかわつかささん「ばーちゃんの家の竹の花

 このお話はじんわりよいお話だった。しっとり落ち着いた余韻があるお話だと思う。お話としていうことないと思うが、本当に個人的な感想としては、最後はむしろ竹の花は咲かないほうがこの場合リアリティが増すのではないかとも思った。少し硬いオチに個人的には映った。ただ、完成するとまた印象が変化することだと思う。とてもいいお話だと思うので、ぜひまた完成稿で読ませてもらいたい。

課題6完成稿 たにかわつかささん「ばーちゃんの家の竹の花

 このマンガは力強さを感じるマンガだった。質感がある内容で、病院からおばあちゃんの家はどのくらいの距離なんだろうとか、窓越しに見える自分の家におばあちゃんはなにを思っていたんだろう、ということを考えさせられる。個人的に、人の死に立ち会う人間の成長として主人公のきばの行動が描かれるところがよいと思う。特に14pのニッシッシ~という主人公ののきばの笑顔が印象的で、こういう強い意思を持った魅力的なキャラクターはなかなか見られないと思った。このマンガはぜひ、いろんな人に読まれてほしい。

課題7ネーム たにかわつかささん「発砲美人

 これはなんだか面白い話だと思った。主人公の両面性のある内心がだんだん表になっていく感じがよく、また、「誰も傷つけたくないの!!」といいながら銃をぶっ放すところが、なんだか描かれ方として人間くさくていいと思った。内心で何を感じているのかは人それぞれ色々あると思うが、この主人公の場合、選択肢に悩んでいる部分はたしかにあるのだが、それだけではなく、選択肢を与えようとしてくるもの自体へのイラつきがあって、そのことに気がつかされることが読んでいて気持ちよいと思う。一方で、両親の離婚に対する回答の部分はもう少しボリュームがほしいと思う部分だった。この主人公なら親に向かって”離婚するなら子供の俺に慰謝料を出せ”とか、そういうひねった反抗の仕方をしてくれそうな感じがする。

課題7完成稿 たにかわつかささん「発砲美人

 このマンガはなんだかへんてこなマンガだと思った。主人公の性格の歪さがひっかかるマンガだと思う。ただ、この場合ひっかかりは読みづらさにもつながっていて、このマンガはぱっと読んで主人公の感情の流れがすんなり理解できるものではないとも思う。でも、わからなさをもっているキャラクターはとても大事だと思う。このキャラクターがうまく物語の中で活躍できたらいいマンガになっていくのではないかと思った。

課題8 たにかわつかささん「ばあちゃんの家の竹の花(改稿)

 このマンガは、個人的に元々からして絵がきれいでキャラクターの造詣が気に入っていて、今回もさほど印象がかわらずこれはこれでよいマンガではないかと思った。ただ、元のマンガに比べて暗い側面を取り入れてよりドラマチックな方向を目指したのだと思うが、そのためにはもっともっと後ろ暗い部分を組み込まないと難しいとは思う。方向性は間違っていないと思うので、今後もぜひがんばってほしい。

課題9(合同誌) たにかわつかささん「金なる木」

 このマンガは悪くないと思う。ただ個人的な好みの話として、マンガを描いているキャラクターがお互いの人間性には触れず、思弁的・理念的なことだけやりとりしている、という部分で少し関心がそれてしまうようには感じた。この二人はそもそもなぜマンガが書きたいと思っているんだろうか(ほかの職業ではだめなのか?)、みたいなことをちょっと思ってしまった。もう少し広く、夢を志す人間のお話として読んでみたかったかな。

課題10ネーム たにかわつかささん「巨大なるセーラー戦士

 このお話は、発想はいい作品だと思った。たしかなフェチがあってよいと思う。ただ、なんとなくもったりとしているようにも思った。内容は悪くないのだが、もっと早々にヒロインが巨大化したり、主人公はあっけらかんとスケベでいいのでは?と感じた。それとも、読めていないだけでなにか意図があったのだろうか。

最終課題完成稿 たにかわつかささん「カイジューのちいちゃん」 

 このお話は、おそらく健康を害した人がだんだんわがままになっていく姿をカイジューにたとえたお話だと思う。個人的に興味があるテーマだったのだが、ただ、実際に読み進めるとお話の結末が単なる口ゲンカに終始していてカイジューとヒーローの戦いであることにあまり意味が乗っていないことを不足に思ってしまった内容だった。ケンカといって、実のところどちらもあまり身を切っていないように感じたのが一番不足に思えた点だったのだと思う。ちいちゃんがカイジュー化してしまうシーンまでは非常にわくわくしながら読んだのだが、やはりこういうお話は結論に共感できるかどうかが重要だと思う。このお話は自分の興味に近いテーマなこともあって、どうしても辛い見方になってしまうお話だった。

 

ヤギワタルさん

課題1ネーム ヤギワタルさん「忘れ物」

忘れもの | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話しは不思議なテンポ感があるお話しだと思った。つくりが整っていて最後までついついよんでしまった。ただ、読み終わってみて、いったい何を読まされたのかはあまりよくわからないとも思った。とはいえそういう不思議な読後感を目指して描かれたお話しのようにも思うので、これはこれでよいのだとも思う。すでに作風としては完成されているようにも思うが、個人的に、この作風でどういったことをしようとしてるのか現時点ではあまりよくわかっていない、という感じだ。

課題1完成稿 ヤギワタルさん「忘れもの」

忘れもの | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームと似た感想になってしまうのだが、なんだか不思議な話だと思った。個人的には、内容的には具体的な説話のように進行するのに対して、描き方は軽いテンポ感ですすむバランスがよいと思う。ただ一方、作品で描かれている内容がどのあたりに重心があるのはいまいちつかめていない。とはいえ、わたしがわかっていないだけでこの内容自体は具体的な人々に向けて投げかけられている内容のような気もする。

課題2ネーム ヤギワタルさん「のろまな占い師」

のろまな占い師 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この話は寓話のようなストーリーでうまく作られている話だと思った。ただ、個人的にはどこが話の肝なのかはうまく読み取れなかった。とはいえ、これは作品のつくりの問題というよりは単にわたしの読解が追いついていないだけなのだろう。昨今のAIブームに対する冷めた目線や反論のしづらさとが投影されている話として、現実の比喩として読む感じの内容だったのだろうか?

課題2完成稿 ヤギワタルさん「のろまな占い師」

のろまな占い師 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はよくできていると思ったが自分にはよくわからない内容だった。主人公が作中のAI水晶をめぐる自分が不利になっていく状況に対してどういう考えや判断を持っているかがうまくつかめなかったのだと思う。主人公が悩んでしまう姿を描こうした内容だったのだろうか。画面的にはとてもよくできていると思うだけに、内容の不思議さがより気になる作品だ。

課題3ネーム ヤギワタルさん「戻る権利」

戻る権利 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話はオチがどうなるのかと思って読み進めていたのだが、そのオチが暖かさがある内容でよかった。納得感があり、読み手になにか感じさせる力のある内容になっていると思う。ただ一方で細かい話になってしまうが、タイムリープの設定がどういう設定になっているのかはちょっと気になった。10年前に戻れるというと再び父親との辛い10年間が戻ってくるだけなのではないか、とわたしは思ってしまった。たぶんここは作者の方にはなにか考えがあるはずだと思うのでなにか説明があるとよいのではないかと思う。個人的にも内容的にも深みがあり今回の課題作の中で気になったネームの一つなので、ぜひ完成目指してがんばって欲しい。

課題3完成稿 ヤギワタルさん「戻る権利」

戻る権利

 この話は心にぐっと来るものがある話だった。通奏低音として流れている人間観のようなものに暖かさを感じた。また一方、これだけ描けていれば一つのマンガ十分かとも思うが、個人的にはこの主人公が10年前に戻ったときに父親の介護をせずに生きる姿が想像できないと思った。人生の中で、自分にとってはプラスではないと思うがなにかを受け入れて決断するタイミングがあるように思え、この主人公にとっては10年前がそうだったのではないか、というようなことを考える。ただ、わたしはそのように考えたというだけで、この作品の出来不出来の問題ではないと思う。情感がたっぷりあるマンガで色々なことを考えた人がいるのではないだろうか。

課題4ネーム ヤギワタルさん「ファクトチェックするトラベル」

ファクトチェックするトラベル

 このお話は、個人的には観光地を訪れることのよさがベタに描かれているところが好きだと思うお話だった。この作品で描かれているように、実際の観光地に行くと知らなかったことに気がつくことがよいよな、とうなづくように読んだ。一方、気になったというかあれっと思ったのは、肝心のファクトチェックする仕事という設定は少し肩透かしを食った感じだった。お話としてよくでいていると思うので、これはこれでよいとは思うのだが。たぶん、描きたい方向性があってこういう形になったのだと思うが、個人的にはフィクションや広い意味でのファンタジーの要素にもっと素直に入っていく描写があってもうれしいのかなと思う。

課題4完成稿 ヤギワタルさん「ファクトチェックするトラベル」

ファクトチェックするトラベル

 このお話は個人的には好きな話だった。マンガとしてもテンポよく読め、内容も観光の良いところをうまく捕らえている内容だと思う。一方、主人公にとってどのくらいの重要さがある出来事だったのかもう少し理解できるとうれしいとも思った。個人的には主人公がこの仕事を再び引き受けるオチの部分に対するフリがもう少し強く欲しいという気持ちだ。でも、これはこれでよくできている作品だと思う。次回もこの調子でぜひがんばって欲しい。

課題5ネーム ヤギワタルさん「人魚は海に帰れない」

人魚は海に帰れない

 このお話は、なんだか不思議なお話だったが、辛い状況での主人公の決断が描かれていてこれは良いと思った。不思議というのは、なぜただの司書が人魚のことを詳しく知っているのかとか、憶測だけでは大ゴマで”魔女にはめられた?”とはなかなかならないのではないか、とかのことだが、作中でもさほど深入りしない部分なのでこれはこれでいいのかなと思う。この作品は辛さがとくにフォローされないところが主人公の決断を映えさせていると思う。なかなか味のある描き方だと思うので、ぜひ完成稿もがんばって欲しい。

課題5完成稿 ヤギワタルさん 人魚は海に帰れない

 このお話は、話の骨格としても不足がなく、画面のつくりもよくできておりいうことないのではないかと思う。しいて言えば、淡々とした描き方に反してドラマチックな内容だと思うので、もう少し主人公の感情にゆれがあっても面白いのかもしれない。が、正直好みの問題だと思っていて、こういう地味だが丁寧なお話づくりは好感が持てると思った作品だった。

課題6ネーム ヤギワタルさん「ゾンビに投げる石

 このお話は、話としては全く悪くないというよりむしろ心温まる良いお話だと思った。ただ、結局この世界のゾンビはなんだったんだと謎には思う。おじいさんがただの認知症のご老人なら石を投げる中学生はとんでもないじゃないか、という連鎖的に宙ぶらりんになる感じも覚えた。結果的に主人公を取り巻く人情ドラマの部分にうまく集中しきれないというか、なにか惜しい感じを覚える。ただ、わたしがこの作品がしようとしているフィクションをうまく読み取れていないだけなのかもしれない。このお話をどう読むとよいのか、よみかたが知りたいと思うお話だ。とはいえ、それ以外はまったくよいお話だった。ぜひまた完成稿でじっくり読んでみたい。

課題6完成稿 ヤギワタルさん「ゾンビに投げる石

 このお話はやろうとしてることはわかるお話だと思った。石を投げる少年の葛藤が思春期マンガ的でこういう題材は理解しやすい。ただ、根本的にどういうことをしようとしたマンガだったのはちょっとうまくつかめなかった。こういう話の場合、同級の葛藤を引き受けた主人公がなにか行動に変化を起こすのが鉄板ではないかと思うが、このマンガではそうはなっていない。ここからさらにエピソードが用意されていればこういうお話でどういうことがしたいのかがわかるようになるのではないかと個人的には思う。

課題7ネーム ヤギワタルさん「ぼくとおじさん

 この話はアイデアもよくテイストもよい話だと思う。ただ、最後に主人公が結局絵を描いているわけではないところが惜しいと思った。クローンのアイデアは親から子(といっていいと思うが)への気持ちを届けるよい設定になっていると思う。それだけに、気持ちが通じた結果として変化したことは、”絵を描かなくては”と「べき」論に達したことではなくて、実際に絵を書くに至ったという動きの変化であってほしいと思った。

課題7完成稿 ヤギワタルさん「渡されなかった手紙

 これはなかなかいい話だった。ネーム段階からかなり修正されていて、結果として主人公の変化が物語の中心として感じられるようになった。一方、ヤボかとは思うがクローンの設定は本当に必要なのだろうかとも思った。わからないが、なにかほかの設定が削れられた結果浮いて見えるようになったのかもしれない。非常によくできているので、クローン設定だけ少し浮いて見えたかなという印象だ。話全体としては引き締まっていてこういう修正ができることはすごいことだと思う。この調子でがんばってもらえたらと思う。

課題8 ヤギワタルさん「ファクトチェックするトラベル(改稿)

 このマンガはがんばって描いていると思った。元々のマンガからこれだけ変化を加えていることはすごいと思う。内容的にも悪くはないと思うのだが、ただ、実際に観光地がニセモノだったのだとしてこういう奇妙な事態にはなりえるのか、と疑問は感じた。マンガとしてはよくできていると思うのだが、なんだかわかりづらい内容だとは思う。

課題9(合同誌) ヤギワタルさん「日給100万円の日雇い労働」

 このマンガは、よくできていて決して悪くはないのだが、話の最後のまとめ方の部分で急にわからなくなってしまった。これはどういう意味のオチだったんだろう。作品としては不足があるようにはあまり思わないのだが、そこが引っかかっていてほかの感想が出てきづらい感じだ。

課題10ネーム ヤギワタルさん「いま注目のアイドル

 この話はなかなかいいのではないかと思う。あきらかに語られていない内容があるお話で、おもわず作中の事実を想像してしまった。ネームの段階だと少し話と話の間が飛んでいるような感じもするのだが、場面の動きのある内容で完成するとしっくりくるのではないかと思う。

課題10完成稿 ヤギワタルさん「いま注目のアイドル

 意味深な情報がなぞのままに物語が終わっていて、もっと説明がほしい!と思うが、作品の意図としてなぞをばら撒いて読者に考えさせる、という一貫性が取れていると思うので、そうやって見ると面白いと思えるマンガだった。ただ、アイドルの女がショーに出ているラストのシーンはあまり話しのオチとしての意図があまりつかめておらずもう少し意味するところがわかるとうれしい。ひょっとしたら自分がうまく読めていないだけだろうか。

最終課題ネーム ヤギワタルさん「子育てがしやすい街」 

 怖い、つらい、と思う話だった。個人的にはあまりピンと来ていない部分もあるが、展開がスムーズでいい作品だと思う。しいて言うなら離婚を告げるオチは納得したのだが、急に終わってしまったようも感じた。だけどそのスパッと終わるところも作風なのかなとも思う。ぜひ完成に向けてがんばってほしい。

最終課題完成稿 ヤギワタルさん「警察不在の街」 

 このお話はいわゆるキレのあるお話になったと思う。はっきりと陰謀論的なイヤな空気感を持つお話になっていて、今までのこの作者さんのお話に比べてわかりやすいと思った。ただわかりやすくなった結果、個人的にこういったつらいお話が苦手なこともあって、どうしてこんなにつらいことばかり起こるお話に…とも思うようになった。(でも、そういうこと自体をエンタメとして楽しませる作品なのかなと思う。)作画的にも作劇的に非常によくできている作品で、こういうお話を楽しめる人にぜひ読んでほしい作品だと思う。

 

ねりけしさん

課題1ネーム ねりけしさん「予想外のおしぼり」

予想外のおしぼり | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 もう、これはマンガとして完成されていて特にいうことないと思う。普通に楽しく読んだ。一男性読者的には(おそらく大半は女性が通うであろう)ヨガ教室の雰囲気を知らないので、おセレブヨガと半額ヨガとでどういった具体的なサービスの違いがあるのか普通に気になった。このマンガで書かれているように、意外と人の密度とアメニティサービスの有無くらいしか差がなかったりするのだろうか。それだったら、自分なら半額ヨガの方が入りやすそうだ、などと思う。

課題1完成稿 ねりけしさん「予想外のおしぼり」

予想外のおしぼり | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、洗練されていて面白かった。完成稿になって思ったが、作者のねりけしさんの少し太めでシンプルな線がと印象に残った。この線をみるだけでねりけしさんの作品だと気づいてちょっとクスっときてしまうような、力のある線だと思う。それとカラーのバージョンも読ませてもらったが、個人的にモノクロのほうが動きのイメージが膨らむようでよかった。(というかそもそもの話として2バージョン用意しているのがすごいと思った。)改めて完成稿を読んで、安定感があってほっとするというか、更新がうれしい作者さんだと思った。

課題2ネーム ねりけしさん「しいたけぐらし」

しいたけぐらし | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 変な感想だが、この話はしいたけがおいしそうな話だと思った。後半、もりっと育ったしいたけが調理されるところはなんだか魅力的だと思う。一方、前半のしいたけが歩き出すところは個人的には”これはいったいどういう話?”と少し読む手が止まったところだった。ただここはマンガが完成すると気にならなくなる部分のような気がする。完成すると読み方がまた変化しそうで気になる作品だ。

課題2完成稿 ねりけしさん「しいたけぐらし」

しいたけぐらし | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは良くも悪くもするするっと読んでしまったマンガだった。表現としては十分楽しめたのだが、個人的にはもう少ししいたけの栽培と食のどちらかに強調があったほうが共感が持ちやすいようにも思った。たとえばしいたけを食べる12pのシーンはもう少し主人公がどの程度の期待値を持っていたのか知りたかった、などと思う。とはいえ、たぶん読者層としてはまっているかどうかによって、強調が見えるかどうかの受け取りも違ってくるのだと思う。(わたしはたぶんちょっと距離がある読者だと思うので。)今後もまたこの作者さんの作品を読ませてもらいたいと思う作品だった。

課題3ネーム ねりけしさん「エピソードゼロ」

エピソードゼロ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は「3人同時接触」を描くところが、描き方として面白いと思ったお話だった。ありふれた場面だとは思うが、改めて説明されると、人と人が新しく家族になる時にそういう特殊な状態が発生していることに気づいてびっくりした。一方で、話の中心になっている主人公の男性っぽいとされる名前については、ここは具体的な名前が欲しくなった部分だった。なにかそれっぽい名前が与えられていると読んでいる側としてはスッキリするのではないかと思うがどうだろう。とはいえ、描き方としては個人的には好きな作品で、こういう笑いと洞察が両方ある作品はよいと思う。

課題3完成稿 ねりけしさん「エピソードゼロ」

エピソードゼロ

 このマンガは、なんだかへへっと笑ってしまうようなマンガだった。話の筋も笑いがあるが、キャラクターの雰囲気にどことなくギャグっぽさがあって(1p2コマ目のお母さんや、3p1コマ目のおばあちゃんなど)個人的にはそこで笑ってしまった。話としては悪くはないが、かといってすごく印象に残るという感じでもないかなと思う。ただ、このネタでこれ以上ひっぱるのも難しいと思うのでこれはこれで十分よく出来ているとも思う。この作者の方のマンガは毎回楽しみなので次もがんばって欲しい。

課題4ネーム ねりけしさん「げきあつ!K-POP

げきあつ!K-POP

 この作品は良いと思う。描かれている実際のアーティストのよさが良く伝わってくる内容だった。特にそばかすを見せるために化粧をこするところは、今のアイドルってそういう丁寧なサービスすらするんだ、と普通に内容に感心して読んでしまった。こういう実録とかルポのようなマンガがこの作者さんには良くあっていると思う。この作品はぜひ完成したものが読みたい。

課題4完成稿 ねりけしさん「げきあつ!K-POP」     

げきあつ!K-POP

 この作品はよく描けているし全く悪くないと思うのだが、一方でこのアイドルのことがわからないとうまくついていけない内容かもしれない、と思って読んだ。自分がアイドル的なものにほとんどはまったことがないこともあって共感がしづらかったのかもしれない。これは好みの問題だとは思うが、もう少しエピソード仕立てになっていたらまた感想が変わってきたのかなと思う。個人的に好きな作風でよく出来ているマンガだとは思うのだが、なにか惜しい感じがしている。

課題5ネーム ねりけしさん「ぜってぇ泡になんてならねえ人魚姫」

ぜってぇ泡になんてならねえ人魚姫

 このお話は、自立にいたる主人公の話の大筋としては良いと思ったのだが、前半のギャグ調の部分と後半のオチに至る情感を読ませる部分とでテイストが変化しているところがよみづらいと思った。この作品で描こうとしていることが、真面目な話の部分なのかギャグの部分かどっちなのかがちょっとわかりづらく、感想も難しく感じている。

課題9(合同誌) ねりけしさん「チャーミーとしゃーあくのBADな日常」

 このマンガは、幕間マンガとして非常によくできていると思う。細切れの話が一冊の本を通してお話のオチまでついているところもちゃんとしている。作家さんの得意なマンガとそれを載せるスペースとがかみ合っていることが感じられ、この本といえばこの作家さん、と思えるようなマンガになっていると思う。

 

山岡兄弟さん

課題1ネーム ヤマオカ兄弟さん「だれかが見ている」

誰かが見ている | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは描き方として整っていて、話の設計思想的には理解できる内容だと思ったが、ただ個人的に話に途中でついていけなくなった内容だった。例えば、妻の統合失調的な症状と主人公のカメラの仕事をつなげるところは、作品のつくりとして問題があるとは思わないのだが、どうしてこの流れになったのか急にわからなくなった部分だった。
 と、個人的に毒があるに感じたこの作品はちょっと苦手なタイプで、実を言えばあまりちゃんと読めている自信がない。毒がある内容は個人的には苦手だが、このタイプの作品が好きという人にはこのままで十分楽しめる内容ではないかと思う。

課題1完成稿 ヤマオカ兄弟さん「誰かが見ている」

誰かが見ている | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は個人的に、どう評価するとよいのか難しかった作品の一つだった。個人的に、オチで妻の話からカメラの仕事の話に移るところはなにか話題がすりかえられているような印象を持つ。ただ一方で、この作品がよいと思ったのは作中の悩みが家族の問題として描かれているように映ったことだった。子どもを持つ父親として妻の病にどうすることもできない苦しさみたいなものが根底に流れているように思える。ただこれは読者の側の勝手な読み方なのかもしれない。とはいえ、圧迫感のある雰囲気のようなものが良い作品ではないか、と個人的には思う。

課題2ネーム ヤマオカ兄弟さん「クズの惑星」

クズの惑星 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は内容的にはちゃんと面白い内容だと思ったのだが、ただ、絵柄の変化に読んでいてうまく集中できなかった。ノイズが激しく感想という感想があまり出てこない感じでいるが、内容的にはちゃんとSFをしているし、あとはどう絵的に親切に出来るか、ということが重要になるのではないだろうか。

課題2完成稿 山岡兄弟さん「クズの惑星」

クズの惑星 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームの23ページから16ページにまで内容をしぼっていてまずそこがえらいと思う。話としてもきゅっと引き締まっていてこちらのほうがよかった。ただ、絵の問題というか図像の問題はどうしても気にはなる。絵の統一感もほしいとは思うが、それよりもフキダシが個人的には気になった。おそらくフキダシは既存のものを使っていると思うが、意外とその作者の線を感じる部分になるのでフキダシだけでもペンを入れてみると印象が変わるのではないか。出来合いのものをどううまく使うか、ということは自分もよくわかっていないので、個人的に今後も考えたいことだが、お話として十分面白いものだと思うので、作画的な部分もできそうなところから挑戦してもらえたら読者としてはうれしい。

課題3ネーム 山岡兄弟さん「いつもここにいるよ」

いつもここにいるよ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は、個人的には内容のよさを感じたお話で好印象だった。特に15pの「この目の前に私に似た命があれば/『死ぬ』なんて些細なことだったんだ」というセリフが個人的にはベタに感心させられたセリフで、なるほど、こうやって考えると家族やその死についての考えが整理できるのかと、考えに助けをもえらえたように感じた。一方で、これだけ内容がちゃんとあるものなら絵的にはもっと繊細な演技が求められるのではないかとも思う。個人的にはよい内容だと思ったので言い方が難しいが、この作画に対してどのくらいのお話だと納得出来るものになるのかという意味では、ちょっと難がある内容かもしれない。といいつつ、個人的にとても感心させられており、作品というのはそれで十分ではないかとも思うのだが。

課題3完成稿 山岡兄弟さん「いつもここにいるよ」

いつもここにいるよ

 この作品は内容は決して悪くないと思うのだが、どことなくマンガとしては印象に残りづらい作品だと思った。全体的に出来事のみとして描かれるのでもう少しキャラクターのドラマを描いてほしい、というのが個人的な感想だと思う。

課題4ネーム 山岡兄弟さん「約束を守る」

約束を守る

 この作品は悪くないんじゃないかと思う。まだ少し読みづらいところがあると思うが、ストーリー的には十分な盛り上がりがある内容だと思った。一方、細かい話だが、9pの女の子の「全力でわたしを守って・・・」というセリフは話の流れとして少しわかりづらかった。この場面でなぜいきなり少年に頼る感じになったのだろう、と個人的には不思議に感じてしまったところだが、いづれにせよ細かい話だとは思う。今までの作品と比べるとわかりやすくなってきていていると思う。是非がんばって欲しい。

課題4完成稿 山岡兄弟さん「約束を守る」

約束を守る

 ネームのときとあまり変わらない感想で申し訳ないが、今までの作品と比べてだんだんマンガっぽくなってきていて良いのではないかと思う。ただ、個人的にマンガを読む楽しみは絵を見る楽しみが大きいところがあって、どうしてもその点ではあまりうまみは感じられずにいる。とはいえ、こういう方法を試してみることはいいのではないだろうか。

課題5ネーム 山岡兄弟さん「人魚姫」

人魚姫

 このお話はよくできていると思う。個人的な好みの話といえば、泡になった主人公がゴミ扱いされて捨てられるところや、男があえて鈍感に描かれているところは露悪的であまり得意な描き方ではないと思ったが、ただ、現代劇として人魚姫を描いているところの組み換えがうまくできており、また海の役割を流れ着く場所として描くところに洞察力を感じる内容だった。気になったところを言えば、キャラクターが皆頬を赤らめてニコニコしていることは違和感がある。AI絵を使う以上避けられないのだろうが、個人的にはマンガとして評価の上限がそこで決まってしまうのかなという印象だ。

課題5完成稿 山岡兄弟さん 人魚姫

 このお話はネームとあまり変わらない感想だが、現代の中でファンタジーを再解釈するようなアイデアが良いと思う作品だった。一方、特にページ的に盛り上がるはずの12,13p付近はもっとコマ割がすくないほうが効果的ではないかと思う。主人公の女性の感情にもう少し寄り添ったお話として読みたいかな(そして、そのほうが結果的にえぐみや落差も生じるのかな)、と個人的には思う。

課題6ネーム 山岡兄弟さん「

 このお話は不思議な世界観で面白いと思った。”窓”をヒントに世界との接点を考えさせるやりかたがアイデアとして冴えていると思う。一方、後半は生々しく破滅的な世界が描かれるが、個人的にはここの絵が前半との統一感が少し足りないように感じた。ただ、今までのマンガと比べてとくにセリフの違和感が少なく、マンガっぽさはどんどん上がっていると思うので、ぜひこの調子でがんばって欲しい。

課題6完成稿 山岡兄弟さん「

 このお話は完成稿になってあらためて読んで思ったのだが、主人公と女性の間の話は知的でおもしろい雰囲気があるのだが、世界の崩壊(?)の部分は解像度が低くなっているように感じられる。なんというか、主人公の独白によってのみ世界が崩壊する理屈がよくわからない。これが彼女との約束の結果世界が崩壊する、とかならまだわかると思うのだが。(とはいえそれはまた別のお話だろう。)個人的には、これはこれでおもしろいとは思うが、主人公と世界の話よりも主人公と彼女との話で一貫したストーリーが読みたかったかな、という印象だ。

課題7ネーム 山岡兄弟さん「戦場に舞う正義

 この話は描かれていることは面白いというか、深そうなお話だと思う。因果応報的な展開が物語としてはスタンダードでわかりやすいように思う。一方、これは絵の加減かコマ割りのためかわからないが、ところどころ前後のつながりが読めないところがあった。特に6,7pで大尉が「放置しておけん」と言っているのはなんのことかは意味内容的によくわからなかった。とはいえ、こういうメタファーを使って物事を考えようとするお話はよいと思う。

課題7完成稿 山岡兄弟さん「幸福と正義

 このお話は良くも悪くも抽象度が高いお話だと思った。ある種の論争のようなものを物語に落としこむのはうまい描き方だと思う。一方、両者の議論は平行線で戦いの勝ち負けもその議論にはあまり内容に絡んでいないように見えるので、結局どういう結論を見せたいお話なのかがわかりづらいと思った。それがわからない、ということを描きたかったのかもしれないが。いずれにせよ、結論がわからずとも話の焦点がわかると、もう少し内容が伝わってくるのかなと思う。

課題8 山岡兄弟さんいつもここにいるよ

 この作品は以前のものとあまり感想は変わらないかなと思う。なかなかよい内容だと思うが、ただキャラクターに焦点が当たらず引っかからないなとも思う。もしこれを引っかかる内容にさせたいなら、死をめぐるアイデアをうまく使ったまま、話自体を組み換えることが必要になるような気がする。

課題9(合同誌) 山岡兄弟さん「キュートでバッドな私たちの神様」

 このマンガは申し訳ないがなんだかよくわからなかった。たぶん、このマンガ独自のルールが展開されていると思うのだが、そこにうまくついて行けていないのだと思う。一方、AIイラストはきれいで、これを使いたくなるのはわかるなあ、と思った。

課題10ネーム 山岡兄弟さん「はじめてのSEX

 このマンガは冒頭からバカな始まりかたで終始バカで面白かった。AI絵の微妙な上滑り感をリズムのよさに転用していて面白いと思った。個人的にはこういうバカな内容を全力でやっているマンガは好きだ。

課題10完成稿 山岡兄弟さん「はじめてのSEX

 ネームの展開のほうがよかったかな、というのが正直な感想だ。人間の本能の話から始まったはずの話が機械と人間の関係の話にすりかえられてしまい、一貫性が失われていると思った。ネームの展開がかなり自分好みだったので、あまりバランスのよい感想ではなく申し訳なく思う。わざわざ変更したということはなにか意図があったのだと思うのだが、個人的にそこが作品からはうまく伝わってきていない。

最終課題ネーム 山岡兄弟さんパティスリー・ヨシダ」 

 読み応えがあるとは思ったのだが、すこしずつ説明が親切ではないところで引っかかってしまった。この作品特有の用語の意味がわからず読み返したり、作品の中心にあるお菓子が結局なんだったのかがよくわからなかったりしていて、結局どういう内容だったのかあまりわかっていない。もう少し固有のエピソードが読んでみたい、というのが率直な感想だろうか。

最終課題完成稿 山岡兄弟さん「パティスリー・ヨシダ」 

 なにか壮大なことが描かれているお話だと思うのだが、内容が高度で自分ではうまく読み取れなかった、というのが正直な感想になると思う。ネームからページ数が絞られていてその点さっぱりと読めるようには感じたのだが、おそらく、キャラクターにあまり共感や興味がもてずお話について行くのが難しかったのだと思う。内容的に悪いとはまったく思わないのだが。なにか寓話的なことを描こうとしたお話だったのだろうか。

 

四日街さん

課題1ネーム 四日街さん「ざっくりマンガ講座」

ざっくりマンガ講座 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはもうしわけないのだが、全体的にこのマンガを描いた意図を深読みしてしまってうまくよめなかった。「ざっくりマンガ講座」が、これが具体的な何かを差して揶揄しようとしているのか(もしかしたら内容的にひら☆マンの指導と被るところがあるので、その揶揄にもなっているのかと考えたり)、逆に、講座内容を作者の方が内容的には正しいと思っているからこそ具体的な内容を置いているのかなど混乱が起こってしまった。(個人的には別にひら☆マンなりなんなりを揶揄する内容でもいいのだが、内容的にはっきりしていないのでよくわからなかったということ。)
 ただ、個人的には、10,11pの女の子の立ち絵を見て、これだけイラストが描ける方ならどういうマンガを描くのか読んでみたいと思った。このネームは今回の課題に少し困って出てきた内容ではないかと思って読んだのだが、一度、のびのびとネームを描いて見せてもらえたらうれしいと思う。

課題2ネーム 四日街さん「くだらないこと」

くだらないこと | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは読んでいて胸がキューっとなるいい内容だと思った。短いながらよくまとまっていると思う。しいて言うなら、オチの付近の描写はこれはこれで状況がわかる悪くない表現だと思うが、破られた絵を直す男の子の表情をもっと読んでみたいとも思った。いい描き方があるネームだと思うのでぜひ完成稿を読んでみたい。