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ひらめき☆マンガ教室 第5期 課題5 ネーム感想 #ひらめきマンガ

途中までですが感想を公開しておきます。順番は教室の名簿順です。ツイッターやおたよりフォームなど、感想へのコメント是非お気軽にください。大塚

最終更新:2022/08/21_13:40

感想の基準

 感想を書いてからの事後報告になりますが、今回の作品らは事前にはあまり基準みたいなことを考えて感想を書いてはいませんでした。ただ結果的には、作品に奥行きを感じたものを評価するように感想を書いたように思います。課題の「花開く」というお題への応答はそれぞれの作品にいろんな形があったと思いますが、個人的には、作品の中での答え方の強度みたいなものが大切だと思って読んだためです。基本的に、作者の方が「花開く」こととしてイメージすることについて、どういう時間的な緩急や広がりをもっているのかが伝わってくる作品が良い作品だと思って今回は読みました。

 

全16作品感想

aokiさん「株式会社桜を見る皆(かい)」

株式会社桜を見る皆(かい) | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

  話としてのまとまりはある作品だと思ったが、肝心の花見でドタバタする部分にあまり興味を持たずに読んでしまった。おそらく主人公のキャラクターにとっかかりをうまく感じられなかったのだと思う。ほかにキャラクターを出すなど、主人公の一人芝居にならないようにする工夫があるとよいのかもしれない。

 

俗人ちん「僧侶失格!?」

僧侶失格!? | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は短くまとまった内容以上に面白く感じた作品だった。書いている側の率直な妄想が描かれていると思えたからかもしれない。(もしかしたら自分の妄想を正しく書いてくれていると感じたからなのかもしれない。)個人的に、ヒロインの鈍感さが結果的に悪女っぽく感じられるところが好みだ。これはあとは完成させるとよい作品なんじゃないだろうか。

 

降原さん「忍ちゃん」

忍ちゃん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 やろうとしていることはよくわかる作品だったが、途中から出てきたナツミに全てかっさらわれた感があった。この作品の読み方は、男と女の話ではなく女と女の話、という読み方でよかったのだろうか。ちょっと混乱が生じている。

 

はねむらさん「田中さんは才能がほしい」

田中さんは才能がほしい | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 ふつうに面白く読んだ。田中にはもっともっと異常な能力があるはずだと思ったのは自分だけではないんじゃないか。それと、どうして神田さんは田中の才能を見抜けなかったのだろう。気になる。なんだかオカルティックな気配がする。

 

葉野 赤さん「野火」

野火 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これは語りすぎないオチがたいへんよかった。前半のなんでもない日常のような会話と、関係のない出来事としての山火事、オチの艶めかしさがそれぞれうまくかみ合っていると思う。しいて言うと、3,4p付近でちはるがアキの手足を見る前にアキの後ろ姿がバーンと出ていると、ちはるがアキを特別に見るマンガだとわかりやすくなるかもしれない。

 

かわじろうさん「フォトグラファー」

フォトグラファー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は完成度が高いと思う。特に今回はマミコがカメラマンから絵描きに転向するところにグッときた。アピールにある「「自分の意図が及ばないところで何かが起きて心が動く」と解釈して、「匂いで不意に忘れていた記憶や風景が浮かぶ」漫画を描きました。」という解釈も堂に入っている。この作者の方はこの方向性でかなりやっていけるんじゃないだろうか。

 

泉ころろんさん「無限のQに、一の花」

無限のQに、一の花 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はどうやって読むとよいのかちょっと困ってしまった作品だった。意味的には”与えられたもので勝負をしようぜ”みたいなことかなとは思ったのだが、ストーリーがなにがどうなったのかがイマイチピンと来ていない。自分の読解力がないだけのような気もする。ただ、作品にはなにか信念のようなものが発揮されているような感じがし、悪くは思わないマンガだった。

 

小林煌さん「クチナシの花を君に」

クチナシの花を君に | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 おお、オカルトホラー、夏!とグッときた作品だった。どんどんホラーに向かっていく淀みない演出でよいのではないだろうか。とはいえ物語的には、りなちゃんが花野井君が取りつかれていることを自分からアプローチする(「くさい」と伝える部分)のに、単に伝えるだけで手を貸すか貸さないかを特に逡巡がないところには若干キャラにブレがあるようにも感じた。どうして花野井くんがりなちゃんに積極的にかかわろうとしたのか(「僕に見つけさせてもらえない?」と伝える部分)など、なにかもう少し情報が欲しい気もしてくる。どちらも好みの問題といえばそれまでな気もするが。

 

森紗はるきさん「フライング・ペンギン」

フライング・ペンギン | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はなにがやりたいのかストレートに出ていて好感を持った作品だった。8ページのペンギンの絵がいい。ただ、おそらくオチの部分で終わらせ方に少し困ったんじゃないだろうかとも感じる。コンクールが現実には絵描きの楽しさに評価を求めていないところにもしかすると難点があったのかもしれない。あるいは、主人公が最初から絵を描くことを素直に楽しめなくなったと感じているところも主人公の登場のさせ方として賢すぎたのかも。(先生に指摘されて気が付く、とか個人的には想像するところ。)いずれにせよ、主人公がどういう気持ちでこの場面にたどり着いているのかなど、もうすこしキャラクターを掘り下げてみるといろいろな展開が考えられる作品のように思った。

 

qjinさん「G」

G | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 射精がテロになる、という設定がメタ的な比喩を本当にベタにやっている感じで面白かった。ただ、オナニーして射精した瞬間を配信するだけでそれがテロになるのはテロとしてハードルが低すぎるような気もする。なにか到達の困難さが伝わってくるともっと迫力が出てくるように思うが、なにかいい案はないだろうか。あと野暮かもしれないと思うが、男性が勃起も射精もコントロールされていたこの世界の住民はどうやって子孫を残すつもりだったのだろう。

 

滑川王手さん「月下美人

月下美人 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 不思議な読後感がある作品だった。また内容に対して話の筋が予想以上にわかりやすいところは作品の力量を感じる。アピールに「これまでの課題とは違っていかにもなギャグ漫画ではなく、等身大のお話を作ろうと試みました。」ともあるが、個人的にもこのギャグと等身大の生活感が入り混じったような作風は今後も読んでみたいように思う。面白い作品だった。
 ひとこと内容に対する感想を言うなら、「そしてわたしは当然のようにその男と寝た」とあるのはわざわざこう書いてあるということは同衾したということだろうが、急!!と思った。(もしかして勘違い?)

 

いとしろたかやさん「好きの言葉」

好きの言葉 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは、男性である自分には必ずしもクリーンヒットな内容ともいえないが、ある種の大衆受けをしそうな内容を選んでいてたいへんよいと思った。ただ、肝心の二人の関係の変化はこの作品からは少し見えづらいようにも思え、その点が惜しいと思う。なにか明確な変化がわかるつくりになるとよいと思うのだが。(わたしが読めなかっただけかもしれないが、たとえそうだとしてももう少しはっきり描かれているとよいのだろう。)
 蛇足だろうが、個人的にはこの二人の話は、一方的にリードされたままの関係がそうではない関係になる様子を描くための話だと思った。とすると変化は男性のキャラクターの方に訪れるとよいのではないだろうか。もしかすると、男性の方があまり弱みを見せないので主人公のいったいどこを好きになったのかよくわからない、ということが先述のわかりにくさを感じた部分だったのかもしれない。

 

谷なすびさん「溺れるカッパ」

溺れるカッパ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は良い意味で考えらさせられる深い話だった。アピールにある「ちょっと異常なヒロインだが主人公にとっては唯一の他者であり、ありがたい存在になり、ヒロインのことを考えて生きることを通じて少しずつ成長していけるだろう話」という説明がこの作品の狙いをうまく表現していると思う。主人公は自分が何に巻き込まれているのかわからずに巻き込まれ、少女も自分の行動に自覚がない一見危うい設定をつかって、うまくハッピーなお話しとして成立させているところが普通の発想だけではなかなか描けない部分のように思う。今期の作品全体を考えても、わたしが自分に関係があると思う数少ない作品のうちの一つだと思う。

 

たにかわつかささん「つり日和」

つり日和 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガ、全然悪くないマンガだと思うのだけど、ただ、父親と子どものどっちが主人公なのだろうとちょっと迷って読んでしまった。子どもの感動に共感することがテーマか、それとも子どもがうまく釣りができたことに喜ぶ父親に共感することがテーマか、読んでいて混乱が生じたのだと思う。でも、よくかけている作品だと思うので、単に自分がこのマンガを読むのが下手なだけのようにも思う。

 

つりばしわたるさん「人間性診断」

人間性診断 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームの段階だとイマイチ雰囲気が掴みづらいようにも思うが、絵がついて完成してくるとまた読み味が違ってくる作品のように思える。一つ気になった部分はこの作品のテーマが、主人公の悩み(会話が続かないこと)をテーマにしているのか、それとも「人間性診断」というフィクションを使って表現したいことがテーマなのかということ。どちらを主題として読むとよいのか少し迷った。とはいえ、この作品を通してやりたいことはなんとなく伝わってくる気もしており、完成したものを見てみたい作品だと思った。

 

よこうたださん「雨がなくてわ」

雨がなくてわ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 読んでいてなんだか小説のような雰囲気のマンガだと思った。内容は悪くないと思うが、特に5p以降はこのままだとマンガとしてはどうなのかとも思う。個人的には雨のおじさんの登場の仕方がたいへんよいので、このおじさんのセリフ部分をさらに膨らませたものを読んでみたいとも思う。
 ただ、もっというと、一度このままでもよいので作品として完成させてみるとよいのではないかと思う。完成させると何がしたいのかがクリアになり、何が必要で何が不必要なのかのもはっきりとわかってくるのではないだろうか。

 

全体を振り返って

 今回課題5の「花開く」というテーマを最初に見て、これは面白そうな課題だけど答えるのはなかなか大変そうだぞっ、と思っていたのですが、実際に出てきた作品を見るとそれぞれにそれぞれの回答をしていて、変にびっくりしたのを覚えています。回答の範囲が広い今回の課題がよかったのだと思いますが、今回の作品らからは作者の方々の個別の解釈が入っている感じを受け、課題に対して解釈を加えている感触が今までの課題作品とは違っていて新鮮だったのかもしれません。
 個別の解釈が入っているということをちょっと違う言い方をすると、野球の競技に例えるなら、難しい球を打ち返すというよりは優しくトスされたボールを力いっぱい遠くへ打つような今回の課題への返答の結果、作品らから書き手のテンションと作品のテンションとにあまりズレを感じなかったということなのかもしれません。これは想像にすぎませんが、作者の方が頭の中で思い描いているイメージと実際に漫画の中で表現されているイメージとがあまり乖離していない印象を今回の課題作品からは受けました。
 たまに(この教室でということではなく)頭よく考えて作られていることが伝わってくる作品もあるのですが、僕みたいな少しひねくれたところがある読者は、そういった正解を答えようとしているような創作よりもその作品を作ることによって書き手自身の心が開いていく様子が目に浮かんでくるような作品を欲していたりします。

 

更新履歴

2022/08/06 7作品の感想追加
2022/08/09 3作品の感想追加
2022/08/14 2作品の感想追加
2022/08/21 4作品の感想追加、感想の基準追加、全体の振り返って追加