玄関先の言葉置き場

主にひらめき☆マンガ教室の感想用。メッセージ等はおたよりフォームへいただければ、配信でお返事します。

ひらめき☆マンガ教室第6期 課題6完成稿感想 #ひらめきマンガ

 作品の感想を書きました。順番はひらめき☆マンガ教室の名簿順です。こちらの感想配信で内容の補足説明をしていますので、感想の詳細やニュアンスが知りたい方はそちらも参考にしてください。よろしくお願いします。大塚

全10作品感想

形井中へいさん「朝熊会長は絵が描けない

 このマンガはヒロインがエロいマンガでそこがよかった。主人公だけにかまってくれるちょっと天然でなんだかエロっぽい先輩、という関係性は読み手が読みたいものだと思う。一方、個人的には主人公の印象が希薄でそこが気になった。もう少しなにかキャラクターがほしい。たとえば、ずっとスケベなことを考えているとか、サークルの活動だけじゃなくなんにでもネガティブだ(でもマンガは一生懸命だとか)など。上記は一例であって、具体的にこうするべき、ということでは決してない。ただ、普段どういう人間だからこそこのヒロインとの二人きりの状況に意味が生じているのか、というシュチュエーションのうまみがさらにほしいと思うお話だった。


明青りんご(あおりんご)さん「夜の探し物

 このお話はよくがんばって作ってある、という印象が強かった。話のオチの部分でヒロインの暗田さんの設定になんとか意味を与えようとしているところは、苦労のあとが伺えるという意味でも好感を持つ部分だ。ただ、とはいえ「なんでこんな時間に学校に」という主人公の疑問は解消されていないように思える。解決の仕方はなんでもよいと思うのだが、個人的には暗田さんが闇深そうなキャラクターなので、もっと序盤に出てきてフリを残してくれると面白そうだ。

 

深田えいひれさん「ラジオガール
  このマンガは配信者エッセイマンガのようでおもしろかった。ありそうで意外とあまりみかけない組み合わせだと思う。主人公が自分の欲望に正直なところも、7p付近の動画投稿の達成感をうまく引き出していてよいと思う。一方、画面はかなり工夫していると思うのだが、主人公一人のお話なのでどうしても画面が単調に感じられるとは思った。ただ、個人的に今回のマンガは、ちょっとしたネタや4コマ的な自由さがうまくかみ合っているように思う。もしよければ今後も4コマでなにか読んでみたい。

 

ぼんち。さん「バレちゃう。

 このマンガはネームのときに比べてわかりやすく、話の起伏があって読みやすかった。ただ、本当に個人的な話としては、女性のセックスの話題から始まっているのでその点の入りづらさは感じる。とはいえそれはわたしが男性なので仕方ないと思う。一点気になったのはモノローグで基本的にリアクションが示されているところ。キャラクターの受け取りがモノローグで示されるとキャラクターの主観に付き合う形になって、どうしても次の展開を追うことが重くなっていくと思った。このマンガでも15pのやりとりなどがなっているように、キャラクター同士のやりとりによって心情が示されるとお話に共感できるマンガになっていくのではないかと思う。

 

藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「また店が開かなかった

 このマンガは、2pのものとしてはキャラクターの配置に充実感があった。ただ、エピソードとしては起承転結の起で終わっている感じがあってもの足りない。うまく配置されているだけに不満足感があるといったほうがいいかもしれない。ただ、このキャラクターのおき方はやはりよくできていると思う。

 

大須健さん蛍光灯を割れ!

 このお話はおもしろいと思った。なんとも形容しがたい不思議なお話だが、10,11pの能面のような主人公の「やらねば」から始まる画面は、主人公の行動のシュールさとヤバイ要求への期待を向ける彼女の無垢さとが画面で表現されていてかなりレベルの高い表現になっていると思う。一方、おそらく、犬がしゃべるシーンはさらに異常事態が起きたことで主人公の言動が小さいできごとになったという意味合いの場面だと思うが、リアクションがもっとはっきりしていないと場面の意味がわかりづらいと思った。ここはオチにもフリにもつながっている重要なシーンだと思うのできっちり意味を強調させないともったいないと思う。ただ、このマンガは不思議な高揚感があり、この作品でしか味わえないおいしさがあるマンガだった。

 

藤原 ハルさん「麦茶とパリと君の嘘

 このマンガはなんだかおもしろいと思った。まず普通にレベルの高いマンガで、お話がまとまっていて画面も充実しているのでマンガとして単におもしろい。ただそれだけでなく、一見すると男性向けのマンガとして男性中心の描き方がされているようでいて、実際にはヒロインの女性を中心にいろんな設定がされているように読め、そこがおもしろいと思った。たとえば主人公の男性の童貞っぽい描かれ方は実はこれはヒロインにとって魅力的な男性像として描かれているように思える。こういった表現は難易度が高い表現であまり見られないと思う。一方、そのことの裏表だと思うが、うそばかりつくはずのヒロインが主人公の好意にときめいて”ありがとう”と伝える一連のストーリーは、それはそれで素直すぎるようにも思えた。うそをつく人はもう少し心の開き方が下手なのではないか、などと考えた部分だった。ただ、これはドラマのヒロインにはもっと謎を抱えていてほしい、というわたしの男性読者的な願望によるものかもしれない。

 

たにかわつかささん「ばーちゃんの家の竹の花

 このマンガは力強さを感じるマンガだった。質感がある内容で、病院からおばあちゃんの家はどのくらいの距離なんだろうとか、窓越しに見える自分の家におばあちゃんはなにを思っていたんだろう、ということを考えさせられる。個人的に、人の死に立ち会う人間の成長として主人公のきばの行動が描かれるところがよいと思う。特に14pのニッシッシ~という主人公ののきばの笑顔が印象的で、こういう強い意思を持った魅力的なキャラクターはなかなか見られないと思った。このマンガはぜひ、いろんな人に読まれてほしい。

 

ヤギワタルさん「ゾンビに投げる石

 このお話はやろうとしてることはわかるお話だと思った。石を投げる少年の葛藤が思春期マンガ的でこういう題材は理解しやすい。ただ、根本的にどういうことをしようとしたマンガだったのはちょっとうまくつかめなかった。こういう話の場合、同級の葛藤を引き受けた主人公がなにか行動に変化を起こすのが鉄板ではないかと思うが、このマンガではそうはなっていない。ここからさらにエピソードが用意されていればこういうお話でどういうことがしたいのかがわかるようになるのではないかと個人的には思う。

 

山岡兄弟さん「

 このお話は完成稿になってあらためて読んで思ったのだが、主人公と女性の間の話は知的でおもしろい雰囲気があるのだが、世界の崩壊(?)の部分は解像度が低くなっているように感じられる。なんというか、主人公の独白によってのみ世界が崩壊する理屈がよくわからない。これが彼女との約束の結果世界が崩壊する、とかならまだわかると思うのだが。(とはいえそれはまた別のお話だろう。)個人的には、これはこれでおもしろいとは思うが、主人公と世界の話よりも主人公と彼女との話で一貫したストーリーが読みたかったかな、という印象だ。