作品の感想を書きました。順番はひらめき☆マンガ教室の名簿順です。こちらの感想配信で内容の補足説明をしていますので、感想の詳細やニュアンスが知りたい方はそちらも参考にしてください。よろしくお願いします。大塚
全22作品感想
形井中へいさん「ヤンキー、恋をする」
このお話はテーマになっている吃音がちゃんとセリフとして強調されていてよいと思った。 次になにを言うんだろうという期待が持てるように感じる。ストーリーはこのくらい軽いものも悪くないとは思ったが、印象に残るお話かというと微妙とも思う。(これは作画にもよると思う。)個人的にはなにかもう少しなにか芝居があってほしいだろうか。
アキオさん「卒業式から始まる」
このお話はよい雰囲気があるお話だと思う。間がある演出に情感が感じられていい。ただ、お話としてさらにまとまった感じが出てくるとよいのではないかとも思う。状況説明的なシーン(背景のある引きの絵)が入ってくるとよいように思える。
このお話は、声というテーマからよいお話を引き出していると思う。個人的にはこれで十分なお話だと思ったが、あえていうなら声がうるさい部分に大文字を使った演出などの画面的な演出があるとより説得的になるのかもしれない。ただ、こういう話はわたしは好きだ。
深田えいひれさん「文字の神様」
このお話はなんだか面白そう、という感じと、微妙に乗り切れない、という感じと両方の感想をもったネームだった。絵が入ると印象が変わるかもしれないが、この話のように関係性が逆転する話なら、変化する前の関係にフリとしてなにか屈辱だったり理不尽な場面があってほしいように思う。ただ、文字のきれい汚いと性格のきれい汚いを重ねるアイデアは面白いと思う。はまっている感じがしているし、作者の方もそう感じているなら応援したい。
ぼんち。さん「君が。」
このお話は素朴なようで少し不穏なようで、というバランスが面白い作品だと思った。最初は単に田中がやさしい話かと思って読んでいたが、何度か読んでみて田中は本当に単にいいやつなのか…?と少し不安になってくるのが面白い。個人的にはさらにいい話であったり不穏な話であったりと、どちらかに振り切ってもらえたらキャッチしやすいようにも思う。ただ、そう思うのはわたしがこの話の主題がうまく読めていないということなのかもしれない。
ひむかさん「ずっと前から」
この話は、決別の居心地の悪さみたいなものが表現されているお話だと思った。なにを選択してもうまくいかない後味の悪い感じに共感を覚えた。こういう暗いものを暗いままに表現するやり方は正直な感じがしていいと思う。画面がはっきりするとまた印象が良い方向に変わりそうに思え、この作品はまた完成したものを読んで考えてみたい。
きぬばりさん「ひとに会うためのバッテリー」
このお話は世界観の作り方がうまいお話だと思った。8pで猫の姿になった主人公が普通に喜んでいるところが爽快感があるいいシーンだと思う。動物の作画のカロリーは高そうだが、完成稿をぜひ読みたい作品だ。
ほりい泉さん「レンズのむこう」
このお話はうさぎくんの病気によって、主人公もうさぎくんもより人間らしくなっていくところが切ないお話だと思った。人の優しさとつらさが関係していることを感じさせる内容だと思う。一方、個人的には、メガネの受け渡しはもう少しなにかエピソード仕立てになっていてもいいと思った。死ぬ間際に最後のうさぎくんの優しさとしてメガネがプレゼントされる、とかくらい優しい(ある種あざとい)落とし方でもこの話の場合、持ち味や内容のよさが崩れることはないと思う。なにか人のあり様について感じさせる力のある内容だと思うので、ぜひまた完成稿を読んでみたい。
あい乙いなびこさん「背徳感」
このマンガは悪くないと思った。ひとつのマンガとして主張がある内容だと思う。短い分絵が大切だと思うのでぜひがんばってほしい。またあわよくば、ここからさらに4コマがいくつか続くとストーリー性が生まれて楽しめるかなと思う。たとえば、この主人公の周りにどんな人がいるのかとか、学生なのか社会人なのかなど、なにか情報が入ってくるとまた楽しみ方が生まれるように思う。
やながわけんじさん「たまご焼き」
この話は非常によかった。単にお話としてよいことを超えて、真に迫るところがあると思った。「死にたいって言うな!!」というセリフが、そこにいたる過程や着地の仕方を含めて絶妙だと思う。この主人公にとってお母さんにこういう死に方をされたことはある種の暴力を受け取らざるを得なかったという性格を孕んでいると思うのだが、川田さんへの「死にたいって言うな!!」という言葉を経由して暴力がなんらかの許しや慰めを得る、という内容だと思った。うまくいえないが、なぞや疑問そのものは解決しないまま、そうせざるを得ない人の様子として許されていくところに気持ちのよさや説得力があるお話ではないかと思う。
桐山さん「変わらないもの」
このお話はこれはこれで素直で悪くないお話だと思う。少し緊張した状況でとりあえずほしいもを勧める主人公がいいと思った。ただ、主人公は変化していないとされつつ、変化しないこと自体の強さみたいなものは意識されている内容ではないかと思うのだが、そこはなにかもう一押し展開がほしいようには思った。お互いの世界にとってお互いが助かる存在なのだ、という部分がなにかあるとよいのだろうが、なかなか難しいのかもしれない。
この話は一見してヤバイ話だと思ったが、このくらいぶっ飛んでいたほうがマンガとしてはフックがあってよいと思う。一方、あまりにも理由なく付き合うことになるので、そこはもう少し回収があるとよいとは思う。たとえば、相手の子も実はなにかヤバイ性癖の持ち主だとか、なにか二人がくっつくことを納得させる要素があるとうれしいのではないかなと思った。
七井一汐(なないつ)さん「私も仲間に入りたい」
このお話は童貞くんの見せ方がうまいと思った。彼の言動の意味がお話の前後で反転して見えるつくりで説得させられた。ただ反面、童貞君がしっかり演出されているからこそだと思うが主人公の印象は少し弱く見えるとも思った。このストーリーの中で「そこの女子大生とセックスすりゃいいじゃん」とぞんざいに扱われているのはむしろ主人公なので、なにかそこがうまく扱われるとお話としてはスッキリした印象になるのではないかと思うが、どうなのだろう。
中山懇さん「バースデーも別れ話で。」
このお話はなんだかきつねに化かされたような不思議な気持ちになった。個人的に、やはりドッペルゲンガーがでてくるところが予想外で面白いと思う。ただ、これは色々な意見がありそうだが、せっかく出てくるならドッペルゲンガーにはさらに早い段階で登場してほしいようにも思う。これはこれで成立しているとは思うが、修羅場に3人目がいたら面白そうだな、などと思った。
藍銅ツバメ(らんどうつばめ)さん「たりないメイドの砂糖漬け」
このお話は、ずっとこのワールドを見ていたいと思うようなお話だった。会話が軽くて面白く、別段ストーリーの進展があるわけではないのだが見せ方によってこれだけ面白くなるのだと感心した。最後の大画面を使ったコマも堂々としていてよいと思う。ぜひ完成稿をがんばってほしい。
くまのぶさん「バタフライ」
この話はいい話だと思った。喫茶店のおばちゃんとの会話を経て主人公が最終的に絵を描くことに戻っていくところが気分がいい。説得力のある内容だと思う。小さな話といえばそうだと思うが、個人的には教訓のようなことを上からでない無理のない形で伝えるこういった作品はいい作品だと思う。
このお話は軽くて読みやすい話だと思った。元カノとの思い出の品が壊されてしまうところが主人公にとって話が前に進んでいていいと思う。一方、一見細かい話だが、個人的には5年前の彼女のことが忘れられない、という設定は現実で考えるとそうわからないでもないと思えており、それを作中で”おかしい”とするなら、その異常さみたいなものをもっと強調させたほうがストーリーとしてはわかりやすくなるのではないかと思った。本当に破壊してもらったほうがいいな、と読者に了解してもらってから破壊神には暴れてもらったほうがスッキリするのではないだろうか。
藤原 ハルさん「約束と運命と」
この話はくだらない話をちゃんとおもしろおかしくしているところに、なるほどと思いながら読んだ。くだらない内容の中で今回の課題テーマにもまじめに答えている部分があるのがいい描き方だと思う。また、16pのマンガならこのくらい軽いトーンがよいのかなとは思うが、個人的には主人公男の子の「本当は正面から挑むことが怖いだけだった」という部分にはもう少しなんらかの回収があると、この作品が主人公にどうなってほしかったのかがわかってうれしいようには思う。ただ、このマンガはこれはこれで16pのマンガとしては成立していると思うので、葛藤の部分をどう回収するのかはまた別の話なのかもしれない。
高月晃太さん「ヒマつぶし」
このお話は不思議な話だと思ったが、面接だけ受けて採用をけるという趣味(?)を持っている主人公の闇を感じる。このお話の設定にはある種の過激さがあるのではないかと思ったのだが、そういう過剰な部分はよいと思う。ただ、面白い感じはするお話なのだが、個人的にアイデアの源やキャラクターの着地のイメージがあまりわかっておらず、全体的につかみどころはわかっていない感じだ。
たにかわつかささん「発砲美人」
これはなんだか面白い話だと思った。主人公の両面性のある内心がだんだん表になっていく感じがよく、また、「誰も傷つけたくないの!!」といいながら銃をぶっ放すところが、なんだか描かれ方として人間くさくていいと思った。内心で何を感じているのかは人それぞれ色々あると思うが、この主人公の場合、選択肢に悩んでいる部分はたしかにあるのだが、それだけではなく、選択肢を与えようとしてくるもの自体へのイラつきがあって、そのことに気がつかされることが読んでいて気持ちよいと思う。一方で、両親の離婚に対する回答の部分はもう少しボリュームがほしいと思う部分だった。この主人公なら親に向かって”離婚するなら子供の俺に慰謝料を出せ”とか、そういうひねった反抗の仕方をしてくれそうな感じがする。
ヤギワタルさん「ぼくとおじさん」
この話はアイデアもよくテイストもよい話だと思う。ただ、最後に主人公が結局絵を描いているわけではないところが惜しいと思った。クローンのアイデアは親から子(といっていいと思うが)への気持ちを届けるよい設定になっていると思う。それだけに、気持ちが通じた結果として変化したことは、”絵を描かなくては”と「べき」論に達したことではなくて、実際に絵を書くに至ったという動きの変化であってほしいと思った。
山岡兄弟さん「戦場に舞う正義」
この話は描かれていることは面白いというか、深そうなお話だと思う。因果応報的な展開が物語としてはスタンダードでわかりやすいように思う。一方、これは絵の加減かコマ割りのためかわからないが、ところどころ前後のつながりが読めないところがあった。特に6,7pで大尉が「放置しておけん」と言っているのはなんのことかは意味内容的によくわからなかった。とはいえ、こういうメタファーを使って物事を考えようとするお話はよいと思う。
更新履歴
2023/10/1 7作品感想更新
2023/10/5 8作品感想更新
2023/10/6 7作品感想更新