玄関先の言葉置き場

主にひらめき☆マンガ教室の感想用。メッセージ等はおたよりフォームへいただければ、配信でお返事します。

ひらめき☆マンガ教室 第5期 課題2 完成稿感想 #ひらめきマンガ

課題2の完成稿作品の感想を書きました。掲載順番は上から教室の名簿順です。感想へのご意見などはおたよりフォーム、もしくはツイッターまでお願いします。(いつでもコメント大歓迎です。)大塚

最終更新:2022/07/03_15:59

全10作品感想

nonakaさん「私を忘れないで」

私を忘れないで | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 ネームの段階では物語後半の時系列が全然わからなかったのだが、完成稿になってようやくわかった。話が整理されていて、とても良い出来の作品だと思う。ただ、これは解釈によっても変化しそうな感想なのだが、斗子との関係をこれだけきっちり描くなら、親との関係も、モノローグだけではなく、もう少し具体的に描かないとバランスが悪く映るのではないだろうか。作品からは意図したかどうかわからないのだが、これだと恣意的に斗子のことだけを選んで書いているような印象があり、もったいないのかなと思う。単純にわたしが読み抜けをしているだけなのかもしれないが。

 

はねむらさん「ハム部」

ハム部 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 ネームとあまり変わらない感想だが、やっぱり気が抜けるマンガはいいなと思った。ただ、厳しく見ると、完成稿になって部長のヒロイン感が薄くなっていることが残念だ。部長との関係ではなくハム部自体がメインテーマになったと思えば、まあそういうものかなとも思うのだが。(たとえば8pの大ゴマで部長と早坂先輩が横並びで二人の優先順位がついてないことと、10pでネームの段階から部長の正面顔がなくなったことの、その二つだけでネームに比べてヒロイン感は薄れているように思う。)とはいえ読みやすさの意味では完成稿になって読みやすくなっているように思う。これはこれでよくできていると思うが、先述のテーマの変化が意図されたものかは気になり、全力で「これはもう完成されている!!」とまでは言えないかも、という感想だ。

 

柿谷孟さん「目覚まし」

目覚まし | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これはよかった。マンガを読みなれている特定の層にはこのまま受けるような完成度の作品だと思う。高校生である主人公のフクイが想像よりもホワホワした雰囲気を持っていて、ネームから一段と表情が加わったところがよい。あえて細かいことをいうなら、最後の「それでは」は不必要ではとも思うが、それはどうでもよいことだ。それより少し気になったのは、このマンガはフクイがかわいいマンガになっていると思うのだが、そこにどんな狙いがあるのかが気になること。このいろんな表情をするフクイはおそらくこの作品世界の中でけっこう愛されているキャラクターとして生きていると思える。でもそれだと、「人好きのしないやつで友達もいない」という独白とキャラクターとがかけ離れてしまわないだろうか。オチはネームから大学生になった→会社を辞めたと変化しており、その修正は全く良かったのだが、今度は完成稿で表情が付いたことでフクイのキャラクターが新たに気になるようになった。ほとんど文句らしいものは浮かばない作品だったが、フクイのキャラクターにどんな考えがあるのかが気になっている。

(この感想ではフクイのキャラクターの一貫性の問題を指摘しているのですが、配信でしゃべりながら改めて考えてみたところ結論が変わりました。この作品を整理すると「シオアジのおかしな一面がバカにされてると思っていたフクイが、実はシオアジはバカにされているわけではなかったと知る。そのことで、必ずしも自分が周りからバカにされているわけではないと思えるようになり、自分がうまく人と接することができないことについても肯定的な見方をすることができるようになった」作品ということがわかりました。なのでフクイが客観的に見てかわいいことと、それなのに友達がいないことは、周りは変に思ってないけどフクイは人づきあいが苦手という解釈で、キャラクターの一貫性として保たれていることになります。感想がぐねぐねしてわかりづらくなってしまって、もうしわけない気持ちです。ただ、そのうえで言えば、シオアジを見て”自分もバカにされているわけではなかったのかも”とフクイが(おそらく)思えるようになったことが読者にはっきりわかる場面がもっと具体的に描かれているとよかった、とは言えるのかもしれません。2022/6/7 追記)

 

泉ころろんさん「妖術師ヒカル」

妖術師ヒカル | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 線の細部が丁寧にまとめられていて、キレイな印象を受ける作品だった。展開も王道を踏んでいていい。ただ、読んでいると1ページごとの抑揚のつけ方がまだ弱いのかなと思う。もっと”このコマだけは目にとめてほしい”というコマがはっきりしてくると、さらに気の抜けた感じ(気軽に見れる感じ)が演出できるように思う。わたしの場合は「どこが読んでほしいのかな」と少し考えて読んでしまったように思う。そのストレスが減ると、もっとぐっと読みやすくなるはず。

 

森紗はるきさん「いちれいチャンネル」

いちれいチャンネル | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは、とてもマンガらしいマンガだと思った。特に1~3pでヒロインの登場を丁寧にさせているところ、10,11pで二人の目線をしっかり描いているところが大変良かった。このマンガの良いところはコマごとのキャラの目線がはっきり設定されているところだ。ただ惜しいことに、肝心の12,13pでは二人の目線がどんな心境を表しているのかあまりよくわからなかった。おそらく、11pの上段で二人が隣に並んでお互いの顔がお互いの視界に入っている状態なのに、12pで唐突にれいちゃんの視線が外れてしまっていることにシーンの跳びを感じてしまうのだと思う。ただ自分でそう指摘しつつ読解力不足も感じていて、どうすればその違和感が解消されるがイマイチ想像がついていないことが心苦しい。とはいえ、この作品は基本の目線のリズムが洗練されており、今回の課題作の中では個人的に評価が高いものだとは言っておきたい。

 

qjinさん「にほんのあじ

にほんのあじ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 完成稿になって、なるほど、これは一見スプラッタ的な人食をテーマにした作品と思わせて、実は国産海外産の違いがテーマだということにびっくりしてほしい作品だとはわかった。その意味でネームに比べてずいぶん親切に感じる。ただし、実際に読んだとき、残念ながらその部分で「おもろっ!」とはなれなかった。おそらくだが、この作品から人食的な要素を省いた産地偽装の部分のみでも、十分に楽しめる演出がされていないと、なかなか「面白い!」とか「不思議~!」といった感覚には至りずらいのだと思う。この作品を読むと作者の方が”たぶんこういうことをしたいのだろう”とまでは思うのだが”これこそがしたいことなんだ!”という部分はあまりつかめないな、と感じ、課題への応答という意味ではそこが惜しかった。丁寧に展開が用意されているだけに、惜しい作品だと思う。

 

滑川王手さん「低級霊 羽衣びわゆきの恋」

低級霊 羽衣びわゆきの恋 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は基本のギャグの調子が安定していて、安心して楽しめる作品でよかった。ただ、除霊する付近の展開がちょっと話として混乱したので、そこだけが惜しかった。簡単に言うと、びわゆきが除霊にノリノリで加担しているように見えるところ(13p上段)がその前の計画と違っていてはてな?となった。もちろんその後、びわゆきが気にしている様子は描かれているのだが、ここはもう少し前後のつなぎの部分で丁寧に説明してあげたほうがいいかなと思う。個人的にはオチ16p上段の「マジでパーティのプラン練ってたの?!」も、いやそれは普通では、とツッコミに冷静に反応してしまったので、なにか別の形だったらよいと思った。とはいえ、ちゃんとギャグマンガをしていて、ギャグに欲しくなるちょっとだけいい話にもちゃんと取り込んでおり、とても楽しく読んだ。ぜひ今後もこの方向の作品を頑張っていってほしい。

 

いとしろたかやさん「紺野君は閉じ込めたい」

紺野くんは閉じ込めたい | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品、残念ながら、ネームから引き続きなにかうまく楽しめないなと思って読んだ。こうして完成稿になって改めて読むと、4,5pで二人が同じ方向を向いた作品だとわかるところが出オチで、そこで感じ方が止まってしまうのだと思える。なので逆に言うと、部分的に9pの下段の2コマ「会社ではダメダメな僕だけど西野さんはそんな僕でも優しく笑いかけてくれた」「(ごめん全然覚えていない…)」のやりとりは、二人が真逆の方向を向いていてとてもいい。個人的にはこのやりとりの調子が作品全体で続いてくれたらうれしいと思うのだが。いかがだろう。

 

よこうたださん「MITORIYA」

MITORIYA | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 山口先生から言われたという「世界観や雰囲気に逃げず、人間同士のコミュニケーションの漫画を描いてみてください」は大変具体的なアドバイスで、そのまま実行可能なためになるものなので、基本的にはこの作品の設定のままで人間同士のコミュニケーションをただ描いていけばそれでよいと思う。アピール文には「今回の『MITORIYA』はシュールに、逃げたように見えますでしょうか?」とあるが、その部分は全く問題ないと思う。むしろこの作品が逃げているように見えるのは、バトルシーンと言っている想定の部分と、2p以降のコマの割り方だ。特にコマ割り。これではかえって、内容を乗せようにも乗せられず本人も苦しいはずだ。個人的には、逃げたいときは逃げてよいと思うが、なにせ教室には授業料は支払っているはずなので、逃げるとなるとお金がもったいない。なので、あまり苦しいようであれば逃げつつまた舞い戻るつもりでもよいと思う。いったん創作から離れてみたり人に相談してみたりと、考えを整理する機会を設けてみてはいかがだろうか。

 

吉田屋敷さん「CALL ME」

BOSS THE KJ -「CALL ME」【Official Video】 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、ネームに引き続きたいへんよかった。完成稿を読んで、イケメンが単に嫌な奴というよりは残念な奴で、ストレスがなく、ヒロインがより心の動きを持った人物に感じられるようになった。実際、ネームと完成稿を読み比べると、気が付きそうもない部分でキャラクターの向きやコマ内容の変更が加わっていることがわかり、その修正と実際の読み味の変化に感心している。個人的には11pの「この世で俺に関係ないことなんてねーんだよ」のコマがかっこよく映り、もっと大きなコマで見てみたいと思った。だが紙面の都合上、今回はこの形でよいのだろう。一読者として、気分のよい話を読ませてもらいどうもありがとう、という気持ちだ。

 

番外編‐1作品感想

 ツイッターにて、教室の課題2のネームの完成したバージョンをアップされている方がいたので感想を書いておきます。今後も教室外で発表された作品は、投稿日時が次の教室の講義までのものは、ここで感想を書こうと思います。(期限を切るのは際限がなくなってこちらもどこまでやるといいのか困ることを防ぐため。)なお配信では、感想を話す順番がごちゃごちゃしてしまうことを避けたいので、普通の感想回としてはしゃべらないこととします。ただし、もし個別に要望があってご連絡をいただけるなら、おたよりコーナーを言い訳にしてそちらでお話をするなど、個別に対応しようと思います。よろしくお願いします。

追記:上記の文では明言してなかったのですが、ネーム作品がすでに出ていて完成した作品に限って、感想を書くことにします。つまりネーム作品、あるいはネーム未提出の完成稿として出されたもので、教室サイト外に投稿されたものは除きます。よろしくお願いします。

 

葉野赤さん「ギャンブル・ライブラリ」

葉野 赤 on Twitter: "『ギャンブル・ライブラリ』(1/4)… "

 この作品は、元々教室で提出されていたネームの段階から考えると、話がまとまっていて読みやすくなっているように思う。ただ、整理されている分より強く感じてしまうが、残念ながらいい感じの話で終わってしまっている印象がある。二人の関係に興味を持つためのフックがわからず、どこかのだれかの自分とは関係ない人の話、のように読んでしまった。何か、片方がもう片方に惹かれる理由がはっきり示されていると興味が持てるはずなんだけどな、と思いながら読んだ作品だった。

 

2022/06/07 3名分感想追加
2022/06/08 7名分感想追加(全員分感想執筆)/柿谷孟さん感想加筆
2022/06/13 1名分、ツイッターでアップされたマンガの感想追加
2022/07/03 番外編追記追加