玄関先の言葉置き場

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ひらめき☆マンガ教室 第5期 課題9コミティア142合同誌感想 Cチーム「全力★ヒロインアンソロジーPOWER」編 #ひらめきマンガ

 ひらめき☆マンガ教室の課題の合同誌レース企画で制作され、コミティア142で販売された合同誌の感想です。

 ABCチームの三誌ともに感想を残しているので、あわせて紹介しておきます。

ひらめき☆マンガ教室 第5期 課題9コミティア142合同誌感想 Aチーム「ぼくたち秘めてます」編 #ひらめきマンガ - 玄関先の言葉置き場
ひらめき☆マンガ教室 第5期 課題9コミティア142合同誌感想 Bチーム「DEADLINES」編 #ひらめきマンガ - 玄関先の言葉置き場
ひらめき☆マンガ教室 第5期 課題9コミティア142合同誌感想 Cチーム「全力★ヒロインアンソロジーPOWER」編 #ひらめきマンガ - 玄関先の言葉置き場

 また、配信での感想はこちらからもどうぞ。

本全体の中で印象に残ること

 実はCチームのこのコーナーは何回か書いては消してをしているのだが、自分はこのCチームの合同誌には何かにつけて感想が言いづらいらしい。
 自分でもよくはわからないが、それでも書きづらくなっているらしい理由は二つ。
 一つはこの合同誌がストイックにマンガを読ませるような作りになっていること。例えば他チームのようなコラムであるとか、あるいはマンガの間のぺージは用意されていない。これはひとそれぞれ好みがあると思うが、自分の場合は特にマンガとマンガの間に間隔がないことが窮屈に感じられてしまって、初読でマンガの内容に入りづらかった。それがマンガを読むテンポを悪くさせていることがまず一つ。
 もう一つは、実は同じことなのだが、ではそのようにストイックにマンガを読ませるつくりだと思ったのはよいとして、その中で個人的にインパクトがあるマンガがあったかというと、そうではなかったということがもう一つ。これは傑作級のマンガがなかったというだけの意味で、ほかの合同誌にだってそんなにすごい作品はないと思う。自分は普段からあまり正面から面白さに答えるような感想を避ける傾向があるのだが、こういうストイックなつくりになるとそうもいかず、もし正面から答えると”特に印象に残っている作品はない”というような感想になってしまって困っているということがもう一つ。(商業誌でも傑作だと思うようなことはそうそうないので関係者各位にはあまり気にしてもらわないでほしい。)
 といった感じでどうにも硬くなっていて本全体の感想が言いづらい状態になっているようだ。
 それを踏まえてあえて本全体で印象に残っていることを言うなら、良くも悪くも真面目で、適当な読みを許さないような作りになっているように感じたことが印象に残っていることになると思う。これはおそらく意図的に設計されたもので、ほかのチームにはない特徴だと思う。もちろん今回の合同誌企画はマンガが主体なので、その意味では正しいというか、マンガを読みたい人にとってはしっくりくるつくりになっているのではないかと思える。
 ただもしかすると真面目さについてはともかく、「適当な読みを許さない」については編集の意図としては全く逆で、本当はそのような意図はなく、むしろ反対に、読みの方向付けをしない方針だったのかもしれない。ただそうだとすると、マンガ以外に余計な説明をしないつくりになっているところが、自分のような読者にはそのように裏目に読めてしまったのかもしれない。ちょっと実際にそこにどんな意図があったかはわからないのが、ひょっとしたら”この本をこうやって読んでほしい”という方向付けをしなかったことが、かえって読み方を窮屈にさせたのかもしれない。個人的にはその編集部からのメッセージのなさ、あるいはメッセージの読み取れなさに困った印象だった。
 全体として個人的かつ苦しい感想になってしまって申し訳なく思うのだがそれはともかく。全体の中で印象に残るのはとにかくマンガを読ませに来る本だ、ということになると思う。個人的には合わないところを感じたのだが、販売部数としてはこのCチームの合同誌が一番売れたようなので、実際にその設計は成功していたということになるのだろう。

 

表紙/タイトル

 表紙のデザインはシンプルですっきりしている。ただ、表紙の女の子はマンガでは出てこないし、あまりパワー感のある女の子も本の中で登場していないので、あとから振り返って若干拍子抜け感はあった。
 奥付や関係者のコメントを見るに「全力★ヒロインアンソロジー POWER」が正式なタイトルとわかるが、それだと「かわいいについてきて。」が少し浮いて見えるような。難癖だろうか、難癖かもしれない。

 

POWER!!!(標語ページ)

 いい感じの言葉の羅列だとは思ったけど、それ以上でも以下でもない感。とにかく突っ走るんだという勢いは感じる。ただこれは表紙と同じで、標語が勢い良すぎてマンガの内容とはあまりマッチしていないようには思う。

 

仁愛恋情角姫婚姻譚:吉田屋敷

 このマンガ、面白いには面白いのだけど、好いている人がそばにいるのに99回も振られるに至っている理由がイマイチわからなかったり、首が突然とんだり、あとラップが急に始まったりと、微妙についていけないところがあるマンガだった。大筋としては面白いのだけど。そういえば、鏑木さんの手料理でオチるのもなんだか急だなと思ったり。何か作りが雑なんだろうか…?いや、単に自分に合っていないだけな気がする。

 

年下幼なじみには絶対勝ちたい!:森紗はるき

 悪くない話だけど、真面目な感想をいうと、お互い照れているだけの話なのでそこがちょっと物足りなかった。適当な感想をいうなら、もっとガッといってほしいんだな、ガッと。

 

ミニチュアとベンチ:かわじろう

 短い中でよくまとまっている作品だと思うが、欲張りなことを言うと、話がストレートに落ちすぎているところが少し物足りなくなる作品だった。手助けしてくれる女の子の存在が作品にとって都合のよい存在に映ってしまったのだと思う。
 ちょっと分析的なことを書くと、この話には西山くんとの恋愛と女の子との友情との二つのストーリーが走っていると思う。話の流れとして西山くんとのエピソードにはオチがついているが、友情の部分には特にオチがない。女の子の存在を都合よく感じたのはこの二人の関係についての結末が物足りないと感じたためだと思う。

 

汚れた手であなたに触りたい:谷なすび

 もうちょっと作画に力が欲しいとは思うが、このマンガは今回の合同誌全体の中でも特によかった作品だった。この二人の関係がどっちも好きそうなのにうまくいきそうにない部分もよいが、突然お母さんと呼んだり、画面全体に不穏な感じが漂っていたり、脈絡のない展開が用意されているところが特によい。あと個人的には、ガムの描写がもうちょっと工夫があるとよかったかな。

 

プロギャンブラー・メイ:泉ころろん

 どや顔オール・インや脳天から新芽が生えるほどのほっこりなど、表情がサイコー。読んでいるわたしもほっこり。良い作品だった。(唯一気になったところをいうと「なんなんだこの最高のゲームはよぉぉ!!」の”最高”はちょっと急でわかりづらいのではないかとは思った。)

 

Story writer:葉野 赤

 よい話なのだがあまりマンガとして印象には残らないと思う話だった。理由はいろいろ説明はできるように思うが、物語後半の展開の急さを見るにやはりこのページでやるにはボリューミーすぎたということかと思う。ちなみに友人の女子が最後は泣いてしまうのだが、個人的には、この子には最終的には主人公に対してずっと怒っていてほしいなと思う。そうであった方が救いを感じられる気がする。

 

隣の女子大生にオタ活がばれてマンガを教えることになった件:つりばし わたる

 なんだか読んでいて落ち着く。線の柔らかい感じが紙で読むとまたよいなあと思う。もちろんマンガ的にもっと工夫できるということはあるはずだが、これはこれでたいへん良いものだと思う。

 

ヤンキー修行僧の大狼さん:俗人ちん

 大狼さんがかわいくてそこはとても良いのだけど、最初におっぱいで始まったお話が最後ヤンキーで回収されるので「おっぱいはどこへいったんだ!!!!」と思った。最後はせっかく身体接触してるんだし、無理やりでもいいからおっぱいに行くべきだったのではないだろうか。

 

週刊少年サンデー連載作家由田果に聞く マンガ家になる!ということ

 これ、大変良いインタビューだと思うのだが、もう少し文脈の説明や、会話の雰囲気などが読み取れるようなものだとなおよかったと思う。というのも、なんでこの由田果という人はここでインタビューを受けているんだろう、と読んでいてよくわからなかった。聞き手と話し手がどのくらい親しいのかとか親しくないのかとか、そういう一見余分な情報がもうちょっとあると、インタビューの内容にも入りやすかったのだと思う。

 

執筆者一覧

 執筆者のコメントがどれもよかった。もしかするとこの本の中で一番ほっと安心して読んだコーナーかもしれない。

 

背表紙

 表紙に引き続き背表紙もシンプルでいい。特にマンガのワンシーンが載っているところはゴチャゴチャしていなくてこれぐらいがよいと思う。