玄関先の言葉置き場

主にひらめき☆マンガ教室の感想用。メッセージ等はおたよりフォームへいただければ、配信でお返事します。

ひらめき☆マンガ教室 第6期 課題1ネーム感想 #ひらめきマンガ

 作品の感想を書きました。残りの作品の感想は後日公開します。全作品の感想と感想の基準を書きました。感想の順番はひらめき☆マンガ教室の名簿順です。こちらの感想配信で内容の補足説明をしていますので、感想の詳細やニュアンスが知りたい方はそちらも参考にしてください。よろしくお願いします。大塚

感想の基準

 例年そうですが、今期もひらめき☆マンガ教室第6期の課題1マンガのテーマは「自己紹介マンガ」です。自己紹介マンガというのはマンガを描く方々からすると、おそらく、普段は創作の中にのせないようにしている自我みたいなものが気になってしまう大変なお題だろうと思います。
 ただ実は、読者からするとこの「自己紹介マンガ」というお題は大変助かるお題です。というのも、読者としてもそれぞれの作者の方がどんなマンガを描く人なのかその文脈が全くわかっていないので、普通に何のテーマもない作品を一つ読まされるよりは今回の課題のように”自分を説明してみてください”というテーマへの答えとしてマンガを読ませてもらえることは助かるのです。(これから一年間特に教室や作者の方の事情を知らない読者として付き合っていくことを考えたとき、このテーマ設定は仕組みとして理にかなっているように感じます。)

 という事情もあって、今回の課題1のマンガの感想の基準としては、今回は特にはじめましてのマンガなので、何らかの意味であいさつの代わりになる内容になっているかどうか、ということを個人的には気にしながら読みました。違う言い方をすると「その人の人となりになにか一つでも触れられる」内容であるかどうか、という基準で読んだと言えると思います。
 これは”なにか一つでも”触れられる、とあるように、基準をだいぶ下げた読み方です。が、たった作品を一つ読んでなにか一つでも伝わるというのは意外と難しかろう、という気持ちも一方であります。つまり、はじめましてのマンガだからハードルを下げて読むが、しかし、はじめましてだからこそ、単体として伝わってくるものがあるのかを(ある意味厳しく)見る、というマンガの読み方になっています。
 ただ、特にこうして僕のようにわざわざ感想を送る場合、人の作った作品をマイナスに読んでも仕方がないはずで、基本の基本の態度として、作品からなにか一つでもくみ取れるかどうかが大事だと思っています。だからこそ、”なにか一つでも”というところが重要で、例えば、キャラクターがかわいかったり、内容的にこれはこの作者の考えが出ている部分だな、と思ったらそれでokという特にハードルを下げた見方をしています。これが今回の感想文を書くうえでの基本的な考え方です。

 ちなみに、「人となりに触れる」という言い回しは個人的にはちょっと抽象的だと思うのですが、これは例えば、その作品を読んで「なるほど、こういうことをマンガの中でやりたい人なんだ」とか、あるいは「そうか、この人は今までこういう人生を歩んできていて、そのことをこういう形で表現する人なんだ」と感じる、ということです。
 特に、こういう形で表現する人なんだ”というところが重要だと思っているのですが、この見方を技術的なことに言い換えると、そのマンガが内容の説明としてちゃんと機能しているかを見ているということです。
 創作というと一般的には内容の面白さを重視する風潮があると思っているのですが、実は、マンガの中に描かれている出来事があったとき、それをなにとして受け取ればいいのか説明がちゃんとある、というのが作品作りとして一番大事だと思います。これはなにもマンガに限ったことではあません。ギフトがある、とでもいうといいんでしょうか。受け取ってよかったと思えるときにその作品なり表現を通じて作った人の「人となりに触れる」と感じられるように思います。

 というわけで改めて話をまとめると、上記でも書いたとおり僕の今回の感想の基準は「その人の人となりになにか一つでも触れられる」内容かどうかです。内容と説明がセットだと言いましたが、重要なのは結果としてなにかが「わかること」だと思います。技術的な話としては、わかるように説明することであるとか、説明できる内容が選ばれていることが大事だと思いますが、とはいっても、読者の側が細かく読み始めてもあまり面白くない気がする(個人的な意見ですよ)ので、僕の場合、感想の文章としては実際にはあまり細かい指摘は書いておらず、心の中でボンヤリとそう考えながら感想文を書いているという感じです。
 今回の課題は自己紹介の課題ということだったので、僕も自分が何者として作品を読んでいるのかということを、なんらかこの文章を読んでいる方にお伝えした方が良いだろうと思って今回の文章は書き加えました。「自己紹介」ということにかこつけて、人となりに触れられることを気にするとの説明をしましたが、実は、人となりに接近するようにマンガを読む、という読解の方法は、大塚の普段の読解の最も基本になっている考えだったりもします。

 

全28作品感想

形井中へいさん「風間さん」

風間さん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は風間さんのキャラクターのリアリティがあった。特に8pの「先生もわかってくれない」はこの女の子の持っている鬱屈した感情や年齢不相応の幼さ、つまり固有なものがなにか表現されているように感じる。ひょっとすると作者の方が現実で本当に言われたことのある言葉なのかもしれないとすら感じるくらい、なにか迫力を感じたセリフだった。
 というように基本的には好印象だったのだが、ただ、最後のページの話のオチの部分は主人公の言動をどう受け取ればよいのかがちょっとよくわからなかった。オチとしては情報が詰め込まれすぎている感じがある。とはいえ、トータルでいうと印象に残るのは風間さんのキャラクターそのものでこれはとても良いと思った。泣いて戸惑っている少女のキャラクターをみて”かわいい”というと問題なのかもしれないが、しかし、風間さんはかわいらしく、なんだか目が離せない。

 

明青りんごさん「Listening Test #1」

Listening Test #1 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、まず全体としてちゃんと話の流れがあって、とくにボウズの友達を脇役に置いているところが読者に対して親切なつくりだと思った。話を振り返った時にストレスになる部分があまり感じられない。そういう親切な作品が作れるということにまず好感を持つ。
 一方で、話の内容から察するに、主人公が自分の夢に気づくところに話の盛り上がるポイントを用意してる内容だと思ったのだが、その主人公が自分の夢に気が付く部分12p~15pの流れはもう少しなにか説得力が感じられるとうれしい部分だった。仮に主人公が自分で自分の夢を言葉にしてくれたりしたら、この主人公の気持ちに読み手としてもついていきやすいだろうと思う。あくまで素人の一意見なので、参考程度に思ってもらえたらうれしい。

 

アキオさん「薬が切れた」

薬が切れた | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはコマ割りとセリフに余裕があり、読んでいて雑念がない感じがあった。ところどころに出てくる率直なセリフや場面の使い方が気持ちよく、この作者の方の描く表現をもっと読んで見てみたいと思った。たとえば、5pの「小林君だ…/知らない女の人と歩いている」「空しい/自分は何を期待していたのだろう」のセリフの回し方などは、それ自体が率直でリズムの良い感じがあり、こういう表現はだれにでもできる表現ではないと思う。
 ただ、最後のオチは唐突な感じがあり、おそらく作者の方も作っていて少し困った部分ではないかと映った。なにか整理できるとよい部分だと思う。とはいえ、最初に作るネームとして悪いとは思わなかった。今後もぜひこの調子でマンガを作ってほしい。

 

赤い氷さん「彼女は妖性」

彼女は妖性 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はもうすでに完成されているというか、ぐいぐいと引き込まれるように読んだ。単に一読者として崇高なものを見てしまったという気持ち。個人的に感心したのは内容の荒唐無稽さに対してそれぞれのパーツの意味が分かるように作られている部分で、内容に対して読みづらさをあまり感じなかったことだった。この作者の方の作品はもっともっと読んでみたいと思う。
 あえて何か付け加えるとしたら、このお話しの内容が「愛を知る」内容なのだとすると、もう少し主人公が女の子とどういう関係へ至ったことになるのかは明言されているとよいのではないかと思う。単に互いに快感に目覚めるだけの内容ではないはずだと思うが、そうだとしてそれがどのあたりにあるのかはこの内容だけではあまりつかめなかった。ただこれは、単にわたしが読めていないだけなのかもしれない。

 

阿山カンフーさん「ジョウンデー」

ジョウンデー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、内容はあまりわからなかったのだが、ただ、なんとなくページはめくれてしまう不思議な読み味があった。これはこれで旅行記的な読み物として面白いと思う。あえて言えば、もう少し、ここが読んでほしいポイントなんだ、というところがわかりやすくなるとうれしいだろうと思う。とはいえ、こういう淡々とした作風にこの作者の方の持ち味があるように思うので、この調子でドンドン作品作りにのぞんでもらえるとよいように思う。

 

ばやし あきやさん「はかせの一生」

はかせの一生 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は読んでいて安心して読める作品だった。おそらく、細かい部分でのアクションリアクションが丁寧に用意されていることが安心感を生むのだと思う。(例えば10pの人物の登場が12pのフリになっているところなどは演出として単純に面白い部分。)一方、個人的には隕石の話が最後にとくに触れられないあたりは話が途中で変わってしまったように感じた箇所だった。とはいえ、話全体のリズム感がよく、読ませる工夫をするぞ、という意思を感じるネームで、読んでいてなんだかマンガ的な高揚感のようなものをすでに感じる。作品を読む限り、この作者の方は自覚的に作品を描かれている方だと思うので、今後の作品がすでに楽しみでいる。

 

深田えいひれさん「TOMORROW」

TOMORROW | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは読んでいて、画面に対するコマや文字のサイズ感がちょうどよくて読みやすかった。個人的には筆圧が高く、勢いで読まされる感じが気持ちいい。一方、内容的にはもうちょっとうまくお話としてまとまるとよいのだろうなとも思う。今回の課題のお題に苦戦したのかなと思って読んだ。ただ、個人的には自分が中高生ぐらいのときに読んでいたWebマンガ的な雰囲気を思い出しながら読んで、なんだかその当時のネットの匂いを久しぶりに思い出したマンガとして印象に残っている。

 

ぼんち。さん「お兄ちゃん、ごめんね。」

お兄ちゃん、ごめんね。 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 まず一見して、情報にストレスがなくネームとして読みやすかった。内容的にも主人公の罪悪感に話を絞っているところで一貫性が取れていて好感を持つ。ただ内容については、主人公がここまで兄に対して罪悪感を覚えている理由はよくわからなかった。母親が倒れていたら通報するのは普通だし、通報したといっても実際には特に警察沙汰になったりはしなかったならそんなに(最終的に刺されても仕方ない)とまで思えないのでは…などと思った。ただこの作品の場合は、なにか本当は説明したいことがあってそのことがうまく読めていないパターンのような気がする。わたしがわかっていないだけで本当はなにか読み方みたいなものがある内容なのかもしれない。

 

中山懇さん「満願寺さんのワンナイトハッピーアワー」

満願寺さんのワンナイトハッピーアワー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 個人的にはこの作者の方の作風が読めるだけですでに嬉しさがあって、客観的に感想を考えるのが難しいところがあるのだが、この作品を通じて描きたかったことは具体的に何だったんだろうと不思議には思う。主人公が女の子とセックスできてわーい、みたいなことなのだろうか、それともむしろ、この一夜の出来事くらいでは主人公は回復しないぞ、という話だったりするのだろうか。そのあたりがよくわかっていない。ここが理解できると、なにかもう少しこの作品に対する愛着みたいなものが生まれるように思うのだが。

 

ひむかさん「はじめの第一歩」

はじめの第一歩 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは、アスミが都合がよすぎるキャラクターになっていないところに好感を持つ内容だった。アスミがかわいいことが主人公のキャラクターを引き立たせてくれているように思える。ただ、主人公が新しいことに挑戦するこのお話しに対して、主人公が余命いくばくかであるという設定はどう必要だったのか、と不思議にも思う。一見して設定と話の内容に落差があるように感じた。ただ、これは単に私がわかっていないだけかもしれない。ひょっとするとここはなにか特別な思いなどがあったのだろうか。

 

ほりい泉さん「あなたの押し売ります」

あなたの推し売ります | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは、14pの「あなたの一番の推しはあなたなのですから」というセリフが想像以上にグッとくる内容だと思った。個人的に、普段は”推し”という言葉に対する警戒感があって自分では使わないようにしているのだが、この作品の場合の「推し」の使い方だったらなんだかノれる感じがした。その意味で発見がある内容だった。とはいえ、ちょっと話があちこちに行っているところは追うのが大変で、その意味ではもう少し要素を絞ってもらえると嬉しいとも思う。(このガチャガチャした感じがよいともおもうのだが。)面白くよませてもらった作品なので今後もこの作者の方の作品を読ませてもらいたい。

 

chiゲ鍋さん「嘘のつき方」

嘘のつき方 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは設定の仰々しさに反して主人公が意外と抜けていて、そこが気が抜けて面白かった。例えば”学生生活で一番うれしかったこと”に”回答を用意していない”部分など、準備してたんじゃなかったのかい、とツッコんでしまった。作風的には、なんだか毒がありそうな描き方でもあり、しかし、ちょっと天然的な笑いがあるような内容でもあり、微妙なバランス感で作られているように映った。一方、オチはもう少しなにかあるとよいのかなと思う。個人的にはどういうものとして読んでほしいのかちょっとよくわからなくなったオチだった。

 

あい乙いなびこさん「図に乗る息子」

図に乗る息子 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、この作品を描いた人が普段どういう目線で物事を見ているのかが感じられる作品だった。おそらく、現実の作者の子供時代のことを当時のお母さんの目線を借りて(現実とフィクションを交えながら)描いている内容だと思うのだが、こういう客観的な距離を持って描いてある作品は、読んでよかったという気持ちになる。一方、内容はこれで全く問題ないと思うが、例えば3pと4pでの息子の顔がけっこう変化しているところなどは読みづらく、読むときに頑張って読んでしまったところなので、こういうところを丁寧にできるとよいのではないかと思った。このネームはよい内容だと思うので、ぜひ完成稿を読ませてもらいたい。

 

やながわけんじさん「土日のふーん」

土日のふーん | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これはいい作品だった。女の子とのやりとりがおもいのほか少ないところに主人公の想像力が働くつくりになっていて、間の演出がいい。一応、少し気になったところを言えば最初に「ふーん」と話しかけられるところで、自分だったらこの女の子に声をかけられただけでうれしいのでは?とは思った。なにか主人公の気がささくれていたとか、そういう事情を読ませる描写だったりするのだろうか。
 この作品はネームではわからない細かいニュアンスや小物・背景の入れ方が重要なように思う。単に作品がよさそうなので楽しみだというのもあるが、実際のペン入れが気になる作品で、今回の課題で完成したものを読んでみたい作品の一つだ。

 

桐山さん「深夜徘徊」

深夜徘徊 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 個人的に、学生時代にコロナのある生活を経験していないのでマスク生活をしている中高生の心理みたいなものが気になっていて、その意味で興味が少し近いように思えて、勝手にうれしかった作品だった。一個気になったところを言えば、個人的には12pの倉本さんの笑顔は8pからのマスクを外したシーンの続きで読みたいと思った。間にある10p11pの主人公の描写は自分が読むときは読み飛ばしてしまっていて、だったら女の子の図がポンポンとあったらうれしいなと。とはいえ個人的には好感を持った作品で、ジャンルがキャラものではっきりしているためか「自分の知ってる”マンガ”だ」と親近感をもった作品だった。

 

mangatime007さん「ひらめき☆パーティ」

ひらめき☆パーティー | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はなにがなんだかよくわからなかったのだが、ただ、作品に込められた勢いみたいなものを感じるネームだった。なにか作者の方が考えているイメージがないとなかなかこういう内容にはならないと思う。個人的には「地ぞうの舞」や、口が悪そうな主人公がヒロインに対しては丁寧口調だったりするところは面白いと思った。ただ、このネームに関しては、計画書的な意味でのネームの意図がわかりづらいところがあって、たぶんおもしろい作品だと思うのだが、あまり内容が正確に読み取れているようにも思えていない。これがどういう内容を想定したものなのかということも含めて、なにか気になるネームだと思う。

 

七井一汐(なないつ)さん「初見」

初見 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはお話しとしては今回の課題で一番しっくり来たネームだった。一見してなんでもない日常を映しただけの内容に見えるがなかなかこういうものは描けないと思う。個人的には今回の教室の課題への考え方の回答を見つけたようで影響を受けた内容だった。ただ若干わかりづらかったのはセリフとコメントが交互に出てくる部分で、どれがニコ生のコメントか現実の独りごとかや、あるいは男性と女性のどっちのセリフかがわかりづらいところがあった。セリフ周りがわかりやすくなったら本当に言うことがないマンガだと思う。ぜひ完成したものを読みたい、そして完成したものを見てまた感想を考えてみたい作品だ。

 

藍銅 ツバメ(らんどうつばめ)さん「押しの声の怪」

推しの声の怪 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガはお話しとして感心しながら読んだ。虫のようなもののけがフィクションとして表れて閉じていくことが声優の声を空しく感じさせるエンディングにうまくつながっている。この作品を読んでいるとエンディングの空しさの意味するところを感じざるをえない(たとえば、表層的な関係が何かの拍子にきつくなってしまう人間の心理がある、とか)のだが、だからといって単調な批判の形には全くなっていない(たとえば”演技なんて全部ハリボテで無意味だ”というような)。お話がなにか社会的な意味を内蔵するタイプの創作の原型を見させてもらったような作品で、個人的にとても感心している。

 

くまのぶさん「doWa

doWa | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はヒロインのdoWaちゃん(?)が人の言葉を話せないまま一生懸命がんばる様子がかわいかった。キャラクターがしゃべらないで演技する描写は個人的に好ましい描き方だと思う。一方、4pから9p辺りのコマ割りはなにがどうなっているのかちょっとわかりづらかった。お話としてもヒロインの話から風の話に内容が変わってしまっているように感じる。ただ、作風的にはすでに形になっているように思う。今後、他にもどんな世界観の作品を描くのか気になる作者の方だ。

 

 

大須健さん「小麦アレルギー男の必勝デート計画!」

小麦アレルギー男の必勝デート計画! | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はキャラクターの描き方がなんだかコミカルでそこが気に入った作品だった。デートの解決策として主人公がちゃんといちご狩りを思いつく部分もよいと思うのだが、妄想上のマイコさんと現実のマイコさんのふるまいがちゃんとそれっぽく違っているように感じられ、その書き分けが特によくできていると思った。一方、気になるところを言えば最後のページの主人公からのマイコさんへのリアクションの演技は、なにかもう少しアイデアがあるとよい部分にも映る。マイコさんの気遣いがこの男の子にとってどのくらいうれしい出来事だったのかがもう少しわかるとうれしいかもしれない。この方の描くキャラクターの演技はなにか安心するものがあるので、今後の作品も楽しみだ。

 

藤原 ハルさん「さいごの散歩」

さいごの散歩 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はよくできた作品だと思った。表現の幅が広く、犬がすでに亡くなっていることが5pの「残念でしたね」「どうしたの?」「ああ……」の間接的なやりとりであらわされているところなどは感心しながら読んだ。一方内容的には”主人公夫婦が亡くなった犬とさいごの散歩に行く”という、夫婦が重要そうな描き方のわりに特に夫婦仲になにか変化が起こる内容ではなかったので、そこは少しあれっと思ったポイントだった。個人的には夫のキャラクターがもう少し見たいとは思う。ただ、単純にわたしの経験がなくて理解が及んでいないだけのようにも思うので、これはこれでよいのだと思う。この作品は完成稿になったものが読んでまた感想を考えてみたい作品の一つだ。

 

高月晃太さん「404 Not Found

404 Not Found | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは内容が全然わからないと思ったのだが、そもそも内容を読んでもらいたいタイプの話ではないようにも思う。なんだかこういうちょっとSFチックな世界観で場面が飛び飛びに出てくるタイプのマンガは読んだことがある気がする。とはいえもう少し、なにがどうなっているのかわかる内容だと一読者としてはついていきやすいようにと思う。個人的には嫌いではないタイプの内容なのだが。どんなペン入れになるのかあまり想像ができないというものあるが、単に絵が入るとよい感じになりそうだとも思うので、一度完成したものを読んでみたいネームだ。

 

東京ニトロさん「091101」

091101 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話は、おそらく内容的には9.11を日本人としてどのように受け取ればよいのか、というようなテーマがあるお話だと思う。現実としての9.11を考えるとシリアスにならざるを得ないが、他の世界線でのフィクションとして9.11を描くことで、現実の9.11の持っていた物語的な力(たとえば貿易センタービルの映像が単に映像的な迫力があったとか、事件にまつわる市井の人々のドラマチックなドキュメンタリーが情報として大量に流れたとか)を取り出して受け取ける試みがある作品なのだろう、と思って読んだ。
 ただ、そういった試みは個人的には評価したいが、このお話しがマンガそれ自体としてまとまっているとは思えなかった。手癖のようなものが先行していて、どこに向けて描くかがあまりコントロールできていないのではないか、と個人的には思う。作画的には申し分ないと思うので、一度、お話しとしてちゃんと形になっているものを読んでみたいというのが個人的な感想だ。

 

たにかわつかささん「委員長とテキトー円花」

委員長とテキトー円花 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは話の内容の方向性としてこれで問題がないと思う。女の子のなくしたピアスが男の子とのかかわりの中で見つかる、という結論に向かって全体の話が用意される作りになっていて、話づくりとして好感を持った。ただ、最初の3pの流れは話全体の方向付けとしては少しわかりにくいように思う。とくにピアスをなくしたことについての男の子の反応が”校則違反だ”だけではちょっと淡泊ではないかと思った。
 とはいえ、このお話しは個人的には今までのたにかわさんの作品の中でも内容の整理がうまくいっている内容だと思う。個人的に、このネームはどんな方向性の話が描きたいのかが見えるように思ったネームで、去年から見ていた読者としてうれしく思った。

 

ヤギワタルさん「忘れ物」

忘れもの | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このお話しは不思議なテンポ感があるお話しだと思った。つくりが整っていて最後までついついよんでしまった。ただ、読み終わってみて、いったい何を読まされたのかはあまりよくわからないとも思った。とはいえそういう不思議な読後感を目指して描かれたお話しのようにも思うので、これはこれでよいのだとも思う。すでに作風としては完成されているようにも思うが、個人的に、この作風でどういったことをしようとしてるのか現時点ではあまりよくわかっていない、という感じだ。

 

ねりけしさん「予想外のおしぼり」

予想外のおしぼり | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 もう、これはマンガとして完成されていて特にいうことないと思う。普通に楽しく読んだ。一男性読者的には(おそらく大半は女性が通うであろう)ヨガ教室の雰囲気を知らないので、おセレブヨガと半額ヨガとでどういった具体的なサービスの違いがあるのか普通に気になった。このマンガで書かれているように、意外と人の密度とアメニティサービスの有無くらいしか差がなかったりするのだろうか。それだったら、自分なら半額ヨガの方が入りやすそうだ、などと思う。

 

ヤマオカ兄弟さん「だれかが見ている」

誰かが見ている | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームは描き方として整っていて、話の設計思想的には理解できる内容だと思ったが、ただ個人的に話に途中でついていけなくなった内容だった。例えば、妻の統合失調的な症状と主人公のカメラの仕事をつなげるところは、作品のつくりとして問題があるとは思わないのだが、どうしてこの流れになったのか急にわからなくなった部分だった。
 と、個人的に毒があるに感じたこの作品はちょっと苦手なタイプで、実を言えばあまりちゃんと読めている自信がない。毒がある内容は個人的には苦手だが、このタイプの作品が好きという人にはこのままで十分楽しめる内容ではないかと思う。

 

四日街さん「ざっくりマンガ講座」

ざっくりマンガ講座 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このネームはもうしわけないのだが、全体的にこのマンガを描いた意図を深読みしてしまってうまくよめなかった。「ざっくりマンガ講座」が、これが具体的な何かを差して揶揄しようとしているのか(もしかしたら内容的にひら☆マンの指導と被るところがあるので、その揶揄にもなっているのかと考えたり)、逆に、講座内容を作者の方が内容的には正しいと思っているからこそ具体的な内容を置いているのかなど混乱が起こってしまった。(個人的には別にひら☆マンなりなんなりを揶揄する内容でもいいのだが、内容的にはっきりしていないのでよくわからなかったということ。)
 ただ、個人的には、10,11pの女の子の立ち絵を見て、これだけイラストが描ける方ならどういうマンガを描くのか読んでみたいと思った。このネームは今回の課題に少し困って出てきた内容ではないかと思って読んだのだが、一度、のびのびとネームを描いて見せてもらえたらうれしいと思う。

 

更新記録

2023年4月6日 7作品感想追加
2023年4月12日 7作品感想追加
2023年4月15日 5作品感想追加
2023年4月22日 5作品感想追加
2023年4月28日 4作品感想追加
2023年4月29日 感想の基準追加