玄関先の言葉置き場

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ひらめき☆マンガ教室第6期 合同誌 Aチーム「キラキラ眼鏡女子」感想 #ひらめきマンガ

「キラキラ眼鏡女子」全体の感想
本の入りにいたるまでに感じたこと

 実はこの本は購入以前から、事前情報で表紙や広報を見てなんとなくよさそうだなと思っていた。(掲載されるマンガの公開やイラストがあったことなどが印象がよかった。)実際に手に取ると、その事前情報からおおよそ期待される”とにかく眼鏡をかけた女の子のいい感じの話が載っている本なのだな”という予想が裏切られなかったので不足がなかった印象だ。裏切りがないというのはけっこう重要なことだと思う。
 特に本の作りとしては、一作目の藤原ハルさんの作品の導入がよかった。内容も表紙の女の子が主人公の話になっていて安心感があり(たまに本には表紙詐欺みたいなことがあるので作品を読むとき少し警戒するのだ)、また扉絵がうまく一呼吸をおいてくれるので読者に優しいように感じる。そういった冒頭での雰囲気のよさは、この本に掲載されているほかの作品全体に対する印象もよくしてくれているように思う。
マンガの雑感
 マンガのざっくりした印象としては、どれをとってもバランスはよいように感じるのだけど、あともうちょっと結末を描いてくれたら、とか、あともうちょっと親切に読者を引っ張ってくれたら、と惜しく思う作品が多かった。つまり、最後まで気になって読めるものの結局のところなにが言いたかったのかよくわからない、と思ってしまった作品が多かった。逆に言えば最後まで気になって読めるからこそ内容が気になるともいえるのだと思う。またその結果、この本の醍醐味である「メガネ」についても、果たしてこれは重要なモチーフだったのか、ほかに置き換えられてしまうアイテムだったのではないか、というようにも少し感じた。
よかった作品
 とはいえ、決して作品がよくなかったというわけでもなく、個人的によかった作品をあげると、掲載順にいえば藤原ハルさんの「透明な君との距離は」と藍銅ツバメさんの「目猫」は強く好感を持つ作品だった。どちらの作品も線の力強さがあり、物語としても親切でサービス精神があると思う。また自分の好みでいうと、ひむかさんの「レンズとまたたき」は鶴の恩返し的な流れのストーリーで好きだった。ただたしかに好みの作品ではあるのだが、冷静に読むとどのあたりに読みの重きを置くポイントがあるのか狙いがわかりづらいとも思う。
 …と、本とマンガのざっくりした感想というとそんなところだろうか。

マンガの感想

藤原ハル さん「透明な君との距離は」
 
このお話は、さっくりしていて読みやすいいい話と思った。アンソロジーの最初にこういった爽やかで軽い話が来ると、その後の警戒感が薄れてよいと個人的に思う。
 それと、矢野川さんみたいに距離感がバグってる女の子って、割と「そういうキャラクター」として無神経な感じのキャラで固定されてしまいがちではないかと思う。この作品みたいにそういう属性を持ったキャラがちゃんと恋愛を通じて最終的に距離感に変化を受け取る物語ってそういえばあまり記憶にないぞ、と思った。短いながら新鮮なことに取り組もうという気概がある作品ではないかと思う。

ひむか さん「レンズとまたたき」

 個人的に好き、という作品。好きのパワーで最後までめくっている節があってあまりちゃんと読めている自信がないが、途中で離れ離れになった二人が最後はくっつくところがぐっとくるポイントだと思う。(あと、家での男が髪を下ろしてやたら色っぽいのもなにかのツボを抑えている感じがする。)ハッピーエンドをしっかり演出してくれるとやはりうれしい。
 ただ実をいうと、会社で出会った二人が最後は家で再開するところは「あれ、なんでこの女、男の家がわかったんだ、こわっ」と思った。そしてメガネについても考えると「これは果たしてメガネである必要はあったのだろうか」という気も少ししてくる。うーん、しかし好きなタイプのお話で、あまり深く考えないほうが精神衛生上よろしい感じがする。

 

ぼんち。 さん「片目、凝らして、歪。」

 この作品は父親から虐待されている女の子が男の子に暴力的な関係性を迫られるという、暴力を暴力で上書きするような内容になっている。なのだが、この作品では暴力の結果が匂わせや含みで話が終わっていて、男の子から暴力を受ける結果女の子がどこへ至るのかがあまりわからないと思った。暴力の上書きの構図が持っている魅力みたいなものがもう少し具体的に伝えられるとうれしいように思う。こういう感想は過激なのかもしれないが。

 

はやしなおと さん「マリとハンナの外回り」

 このお話は、メガネ周りの流れにうまくついていけなかったかな、という印象が先立っている。ドラえもんをもじった作中作が出てくるが、メガネにまつわるリアリティラインと作中作とのそれがあまりかみ合わないように感じてしまった。お話の出だしがSFで始まっているところはなかなか期待が膨らむと思ったのだが。こういう設定のかみ合いのよしあしは最初のアイデアのキレで決まってしまうところがあるので、当たり外れがはっきり出てしまうんだなと思った。

 

藍銅ツバメ さん「目猫」

 このマンガは、今回紙で読んだことで藍銅さんの線の丁寧さがよくわかり、今回Aチームの冊子の中でひょっとしたら一番読めてよかった作品かもしれない。お話の内容は、まあまあ、このくらいの長さだったらこういうお話でちょうどいいのかなと思うものの、個人的には、今までにひら☆マンのほかの課題でも読んでいるので、もう少しボリュームがほしい感じはする。逆に、自分はここ最近藍銅さんのマンガについては「ボリュームがほしいかも」と毎回言っているので、合同誌でもこういうタイプのお話を持ってきたところを見るに、もしかしてこの短さには自分が気がついていない何らかの意図があるのやも、とも思わされる。

 

高月晃太 さん 「だてめがね」

 このお話はちゃんと男女の付き合いの話を持ってきていてよかった。今までの同じ作者さんの作品の中では男女の恋愛をはっきり描いている内容は珍しいのではなかっただろうか。なのでなかなか好印象だったのだが、最後、なにかお話が終わりきっていない感じがあって、そこが少し不満足には思ってしまった。この主人公の男の子はがんばって思いを伝えているので、受け取る側の女の子がそのことにどういう反応をするのか、というところが個人的には見てみたかったポイントだと思う。とはいえ、キャラクターのリアリティに迫る部分があるお話で、これはよいものがある作品だと思う。

 

赤い氷 さん「とにかくあなたが好きです」

 この作品はちょっと自分にはよくわからなかった。いい感じの世界観で絵もよいので、気になって読んでみようとはするのだが、どこに乗っかってストーリーを追うとよいのかがイマイチつかめない。たしかに光るものはあると思うのだが。独自の世界観を突っ走りつつ、読者にもそれを開く、ということが可能な方向があるとよいと思うのだが。

 

アキオ さん「にたものどうし」

 この作品は、話の内容はあまりつかめなかったのだが、しかしこの作家さんのペン入れが見られてうれしかった、というのが感想になると思う。この少しポップな絵のタッチは、内容の重さに対してバランスが取れていると思った。唐突に話が始まったり、45度くらい予想外のところから女の子のリアクションが飛んでくるこの感じはなにかよいものだと思う。今後もマンガを続けてくれたらもっといい作品が読めるのではないかと思っている。

 

東京ニトロ さん「NEXO」

 このお話は、コメントが難しいと思ったのだが、決して悪くはないのだがでも個人的には何がおきているのかよくわからないマンガだと思った。だれがどこでなぜなにをしているのか、という基本的な要素を確認しようとマンガに目を落としても目が滑ってしまう。言い方が難しいが、作品全体にかっこよさはあるのだが、かっこよいところで読み手を捕まえようとしていて、基本的な部分での読み手の着地を避けているような印象があり、そこが印象が悪い。このお話が読み手の着地を避けるように思えるのは、はたして自分だけが感じていることなんだろうか。

その他の部分

表紙・裏表紙について

 個人的に、表紙裏表紙は3誌の中で一番気に入った。カラーリングとテーマのキャッチーさがよくかみ合っていると思う。裏表紙にカラーで作家が載っておりぱっと見て特色がわかるのも親しみやすい感じがする。全体的にコンセプトがスッキリしていて、読む側があまりがんばらなくてよいような印象を受けた。(これはとてもいいことだと思う。)

あとがき「~キラキラ眼鏡女子を振り返って~」
 わざわざネガティブに感想を残すのもどうかと思うけども、この文章はあまりよい印象を持たなかったな、うん。肝心の文章を書いた東京ニトロさんがこの本への執筆についてどうだったのかがまったく触れられていないので、だったら「振り返って」の内容ではないよね、と思う。あまり説明するのも余計だと思うのでそれだけ。

キラキラ眼鏡女子作者紹介
 この作者一覧をみて、そうか、Aチームはひらめき☆マンガ教室以外の場所でフィールドを持っている人が多かったんだ、とはたと思った。特にツイッター外の情報(と少しぼかしておくが)が載っているのがなんだか広さがあっていいと思う。

アンケートのお願い
 装丁がきれいで、きれいだと感想も送りたくなるんだな、と思った。こういうちょっとしたコーナーのデザインが用意されているのは地味だけど重要なことだと思う。ちなみにQRコードにも感想は送りました。