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ひらめき☆マンガ教室 第5期 最終課題 完成稿感想 #ひらめきマンガ

感想を書いたので公開します。掲載順は教室サイトの名簿順です。これでひらめき☆マンガ教室第5期の最後の感想になります。よろしくお願いします。大塚

最終更新:2023/03/05/16:45

全20作品感想

nonakaさん「またたき」

またたき | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はちょっと惜しいと思った。個人的には透明人間の高校生たちの設定は良いと思うのだが、実際に読み進めると意外とページをめくる感覚が重い感じがある。単に、キャラに顔がないのでだれのセリフかがわかりづらいことも大きい。全体の狙いは雰囲気としては伝わってくるのだが焦点みたいなものがわかりづらかった。ただ、マンガとして読みやすいように気合を入れて描いたことは伝わってくる。なのでやはり惜しい。

 

あさかたこれ太郎さん「さよならは夢のあとで」

さよならは夢のあとで | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は良いと思う。あえて言うと、ラストの「いつか人はひとりになるけれど、/それでもひとりではいられない。」は描写も含めて内容がよくわからない。しかし個人的には、それを含めてももやもやした感じはなく、むしろスッキリした。媒体としてサンデーを意識したという部分も、女の子のキャラが頑張る話になっているところなどに現れていて内容が普通に良いと思う。
 ほか個別にいうと「ハリボテ」や「普通」がいいという内容になっているところや、ラスト19pに唐突に風景が挿入されているところなど気分がいい。厳しく言うなら全体的にやや説明不足気味な内容だとも思うのだが、しかしこのマンガはいままでの同じ作者の作品と比べても特別に一生懸命作ってある感じがする。今回の最終課題の中で個人的な好感を持った作品の一つだ。

 

大久保どんぶりさん「MyNameIs...」

MyNameIs | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 ネームの時とあまり変わらない感想になってしまうが、これはこれで悪くないと思うのだが、個人的にはもう少し淡々とせずに抑揚があるとうれしかったと思う。特にラストの別れの演出の部分ではせっかく派手な出来事がおこっているのだがどういう感情を受け取ればいいかあまりわからなかった。内容自体は個人的にまったく悪くないと思っているのだが。

 

俗人ちんさん「思春期煩悩ボウズ」

思春期限界僧侶(仮) | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームに比べてとてもスムーズになっていて、作画的にも頑張って描いていると思ったのだが、着物の着付けだけで話が進むところは内容的にも画面的にももう少し話に展開が欲しくなった。メガネの僧侶君があまりおいしい出来事に合わない内容だが、個人的にはもう少し彼がよいめに(友情でもエロでもなんでもいいので)あってくれたらうれしかったと思う。

 

降原さん「眼差し」

眼差し | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、今回の課題の中でもっとも力作だと思った作品の一つだが、個人的にはこの内容は自分が特に不得手な分野かもしれない、とも映った作品だった。重要なことが描かれている作品だと思ったが、救いようがない状況がここまで徹底して描かれていることに対する距離の取れなさが個人的にはある。これはこの作品ではなくわたしの方の問題なのだが、ただ、その状況で的確な言葉を探すのに苦労している。
 あまり自信がないが、この作品の良いところは主人公の花岡君が空気が読めないまま変化しないところではないかと思う。三上さんの死でも彼はあまり変わらないというか動じないようにも思え、作中の出来事によって花岡君は成長するのだがそのことによって無理に性格の矯正をうけないところがこの作品のスッキリした感じを出していると思った。
 また、三上さんの死はこの作品にとって重要な出来事なのだが、とはいえこのクラスの中での二度目の死としても描かれていて、変に重要すぎるようにも描かれていない。普段こういった辛さを描く作品を読むと、何か特別な状況に付き合わされているような感じがして避けてしまうことも多い。だが、この作品はたしかにつらい話が描かれる作品ではあるのだが、しかしつらい出来事をありふれた出来事としてあっさり描いていて、そこがうまく工夫がされているように感じる。わたしにもこれはよい作品だと感じられたのはその工夫のおかげではないかと思う。

 

はねむらさん「極貧女子と見習い女神さま」

極貧女子と見習い女神さま | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは普通に面白く読んだ。特に主人公のキャラクターはこの路線をよく思いついたなと感心した。服がはじけ飛んだ展開は笑ってしまう。とはいえ、この作品はなにとして読めばいいかすこし受け取りが難しくも思っている。なんとなく、主人公と女神のキャラクターが互いの主張がうまくかみ合っていない印象がある。単に主人公に突っ込むキャラが誰か一人いてほしかった、ということなのかもしれない。

 

葉野赤さん「春に書く手紙」

春に書く手紙 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これは個人的に共感があるマンガだった。おばあさんの心を森に例える16pから19p付近の内容に感心するのだが、一方で、主人公がひとこと「でもいろいろむずかしいね。」(26p)と言葉を見つけることで着地する展開は見ていて気分がよかった。
 一方で、この話は美しさのある話だと思ったのだが、それをそのまま肯定的に受け取ってよいのだろうか、という疑問のようなものも持っている。説明が難しいが、この主人公の人生にとっておばあさんをめぐるこの出来事は今後も思い返される出来事のはずだと思うのだが、しかしその場合にここで描かれている場面とどのようにつながって思い返されるのかがイメージが持てないでいる。つまり、これ自体が美化された思い出のように読めてしまっている、ということだと思う。ただ、これはなにか作品の読みに問題が発生しているということではなく、なんとなく、この作中の出来事が美しく描かれていることの前に立ち止まる自分がいるというだけの話なのだが。

 

かわじろうさん「下戸のソウルフード

下戸のソウルフード | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、内容も描き方も良いと思う。親しい人がなくなった時の本当に一人になってしまった感じを作品の中心においているところに共感があると思った。ただ、出来が良いからなのか反面テレビCMを見ているような淡々とした感じがあり、感想の持ちづらさを少し感じている。おそらく作品のストーリーが迷いなく進んでいるように見えるところと、この内容が元々もっている肉親の死の複雑さとがうまくかみ合って見えないのだと思う。とはいえこの作品は普通に楽しめたマンガだったので、こういった感想が生まれるのは作者のかわじろうさんに対するわたしの要求する水準が高くなってしまっているなのだけかもしれない。

 

泉ころろんさん「グッドコミュニケーション」

グッドコミュニケーション | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は、もう少し早めにオチの当たりの展開が予想できれば好ましいと思ったが、くだらない内容でよかった。ただオチの展開が唐突な印象もあり、画面のメリハリや話の内容の整理など、もう少し作品全体の説得力が感じられるとより楽しめたのだと思う。

 

森紗はるきさん「試されるデート」

試されるデート | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は評価に少し困っっている作品の一つだ。基本的には、とにかくマンガ的な工夫にも女の子の描き方にも気合が入っているので、女の子の言動のよくわからない感じをそのまま受け取るとよいマンガなのだと思って好意的に読んだ。正直、そのようなパッション的に読ませるマンガだと思うので、それだけで良い作品だなと思う。
 ただ一方で、このマンガは全体によくわからない感じがある内容だと思うのだが、それはそれでわからないものを受け取らせる表現はあるので全く良いと思う。(むしろ個人的にはその方が好ましいとも思っている。)だが、そのわからなさがあることがどの程度自覚的に描かれているかが気になる。簡単にいうと、この作品の内容のどこがわからなくても大丈夫な内容かがよくわかっていない。そこが評価に困っているポイントで、なにかセリフ回しなどでわかりやすくなっていたり、逆にさらにくだらない表現でわからないものになっていたら、もっとのめり込んで読める感じがしたのではないかと思う。

 

qjinさん「天職」

天職 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 ネームの時とあまり変わらない感想になってしまうが、この作品は内容的なうけつけなさが先立ってしまってあまりうまく読めなかった。個人的にはこれをハッピーなオチとして描くのは二重の意味でグロテスクで、そこまでやる必要があるのだろうかと思う。とはいえ、今までのこの作者の方の作品の中では一番マンガを読ませてもらっているとは思った作品だった。時間や間の演出など、ピッタリとはまっていると思う。

 

滑川王手さん「さしずめあかなめ」

さしずめあかなめ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 過去の課題作のネームのときも楽しく読んだ覚えがあるが、完成稿になってもこの作品は面白かった。話の骨格や細かい心理描写がしっかりしていて安心して読める。個人的にはネームの時から気になっていた作品の一つだったので完成作が読めてうれしい。また一方で、オチがこれだけ暗い感じになったのはなぜだろうと不思議にも思った。あかなめの設定のバカバカしさに対してオチで主人公の内面にカメラが寄っていく流れは少し重すぎるようにも感じる。ただおそらくここは好みの問題だろうと思う。

 

いとしろ たかやさん「きみを想う」

きみを想う | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 このマンガは普通に楽しく読んだ。ネームから修正が入った部分、特に20pは表現があか抜けていると思う。ただ一方、颯真くんはキャラクターとしてはちょっと都合がよすぎる感じがあるとも思った。登場人物の都合がよいこと自体はそれでいいと思うのだが、しかし都合のよさが気になってしまうともったいないとおもう。どうすれば気にならなくなるのかわたしにもよくわからないが、この手の作風の場合はその都合のよさへの処理の意識は常に付きまとってくる問題になるのではないか、と読んでいて思った。

 

谷なすび「そのパンツ僕にください」

そのパンツ僕にください | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 これは突き抜けている作品だった。やっぱりエロ要素があるマンガは読み物としていいと思った。単純にゲヘヘエロいぜ、みたいな楽しみ方をしてもよい作品だとは思うが、この作品の場合、特に直接の性行為が描かれるわけでもなくその意味で平易な下品さとは距離感があると思う。普段人が忘れている異性へのピュアなトキメキのようなものを呼び起こさせる力を持っている作品だと思う。

 

たにかわ つかささん「シュークリームとブラックコーヒー」

ネ古民家(ねこみんか) | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はカップルが苦悩する感じをうまく描いていてそこが優れていると思ったマンガだった。しかし一方で、物語としては受け取り方に少し困った作品でもあった。個人的にいざこざがあった前後での二人の関係にどんな変化があったのかが読み取りづらかったためだと思う。また、ブラックコーヒーを飲むオチも、なにかを我慢することでカップルの問題が解決するオチに見えて少し引っかかった部分だった。
 個人的には、カップルの問題としてリアルすぎて息苦しいような感覚もある。それはそれで息苦しさを楽しむマンガもあるのでよいとおもうのだが、この作品の場合はそうではない気がする。現実のケンカはいろいろな解決方法があったりなかったりするとは思うのだが、これは創作なので、なにか現実との距離感を持って考えるようなつくりがあるとスッキリできたのではないかと思う。

 

つりばし わたるさん「デレないネコにさわりたい」

デレないネコにさわりたい | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は作品の空気感がよかった。わかりやすい内容であまり気を遣わずに読める感じあったところがよかった。ただ、マンガ的な盛り上がりであったりオチとフリの対応などはもっと工夫ができる内容だとも思う。個人的には日常マンガなので、ネコと主人公が一緒にいる空間のシーンがどこかで味わえたらうれしかったと思う。

 

千住ちはるさん「オレが娘で娘がオレで」

オレが娘で娘がオレで | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は今までの千住さんの作品の中ではっきりと一番よいと思った。お父さんと娘の関係に違和感がないだけでなく、その関係のユーモラスな部分がよく伝わってくる。特に入れ替わりがファンタジー的に描かれる部分は、子どもが自分の力では自分自身を制御できない様子が具体的に描かれていることに関心させられた。また、お父さんの描写はリアリティがあってよい。ストレスなくスッキリと読める中、子どもも大人もそれぞれに生きるのに必死なんだという感じが伝わってくるよい作品だった。

 

よこうたださん「つれづれ日暮しパスタ」

つれづれ日暮しパスタ | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はネームの時と比べると印象がよく、意外に思った作品だった。ネームから細かい修正の部分がいくつかあるのだがそこが作品の印象をよくしていると思う。隣人に料理をふるまう時のちょっとした嬉しさみたいなものが感じられた内容だった。
 ただ、4pマンガとしては料理の描写に割いているコマが多い気はする。とはいえ、料理を作る雰囲気を楽しむマンガだと思うのでこの形になったのはそうおかしなことではないとも思う。少なくとも、内容や方向性に対する違和感があるタイプの作品ではない。まだはっきりとした形になっているとは言えない内容なのかもしれないが、しかしこれはこれでよい作風だと思ったマンガだった。

 

晃てるおさん「気まぐれおやじの超能力」

気まぐれおやじの超能力 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品は作画的にも力が入っていて、また設定も良いと思ったのだが、ただこれだけの内容でなにかくみ取ることは難しいと思った作品だった。4pの短いマンガということもあって、設定に対する世界観の説明が不十分な感じがする。ただ一方、理解のある人間がほかの理解にたどり着くべき人間をどうにかして諭すような雰囲気があるところは個人的にはよい空気感だとも思う。内容は良いと思うのだが、描こうとしていることに対して整理が追い付いていないような、なにか惜しい感じのする作品だった。

 

吉田屋敷さん「荒川さん家の家族写真」

リョータとリョーコと体育祭 | 超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

 この作品はシリアスな内容と並行してそれをぶち壊しにするように気持ちのぶつかりが描かれているところが気持ちがよかった。ただ一方で、リョーコのセリフとしてもある「それを知った娘の気持ちって想像できる?」(27p)の部分での、加工写真を作る父親に対するリョーコの気持ちが具体的にどんな気持ちだったのかが、色々考えてはみたのだがうまくくみ取れなかった。ここは作品にとって重要な部分だと思うのだが、その部分の理解が難しかったのは惜しく感じる点だった。
 実は個人的には、この作品が優れていると感じたのは、このお父さんとお母さんが会わなくなってもまだお互いの親としての付き合いを考えている部分だった。つまり、夫が浮気をしてもお互いに気持ちがまだ家族の方に向いているその精神的に丈夫な部分に作品の力強さを感じた。だからこそ、リョーコが「このままでいいわけないじゃん」と思う理由にあまりピンとこなかったところがあったのだと思う。

 

更新履歴:

2023/02/27 4作品感想追加
2023/03/01 3作品感想追加
2023/03/02 4作品感想追加、1作品感想再考
2023/03/03 5作品感想追加
2023/03/04 3作品感想追加
2023/03/05 1作品感想追加